『IMMACULATE 聖なる胎動』トンデモ宗教ホラー
最近ホラー映画に増えがちなものがあってそれは辛気臭い宗教系ホラー。
まあ文字通り辛気臭い宗教系のホラーの事を指すのだが、大体キリスト教をテーマにして主人公(大抵女性)が苦しむ姿を延々と描き続けるみたいなホラーである。演出も画面も全てがしみったれていて、死体なんか全然出てこない。面白い殺しなんて夢のまた夢。そんな映画が最近やたらと多いのである。
この『IMMACULATE 聖なる胎動』もそんな一本だろうと思っていた(じゃあいくなよ)……のだが!
実際観てみたらこれがなかなかのトンデモ映画で良かったのだ!いやー映画は観るまで分からないね!観るまで分からないから期待度が低い映画も行かなければ気が済まない……本当に助けて!

アメリカからイタリアの修道院にやってきた修道女のセシリア。ある日彼女は処女であるにも関わらず妊娠してしまう。
その結果セシリアは周囲から崇められるようになるが、次第に違和感を覚え始め脱出を試みるようになる……
冒頭、とある女性が修道院から逃げようとする。女は鍵を盗み、霧が立ち込める中門に近づく、しかし後ろを振り返ると霧の中にターミネーターみたいな尼さんが4人くらいいた……
と最後に急に俗っぽくなる文章を披露させてもらったが、この冒頭だけで(これ、もしかして信頼出来るやつ?)と思ったものである。
何が良いってケレン味を恐れないところだ。ターミネーターみたいな〜はまあ誇張してる部分はあるが、別に4人くらいいなくても良い場面であるし、黒くて顔を見せないというのもホラー的存在として撮ってあるし、霧というのがリアリズムや雰囲気だけではなくケレン味作りとしての現象として機能させている。
ホラーなんだからケレン味に振るべきなんだよ。そこを最近のホラーは分かってないと思わされる事が多い。
これ以降もケレン味を感じさせる部分が多い映画だ。
上述の所と絡む部分もあるが、この映画は撮影が良い。『教皇選挙』とかよりずっと良いのである。
僕は『教皇選挙』の撮影は全く良いと思わなかった。人の感想にどうこう言うのは良くない行為だとは思うが、宗教画のようだと言われてるのが特に分からなかったのである。なにせあの映画には影がない。つまり光もない。黒さや光のない宗教画などあり得るだろうか!?なんて最近上野の美術館に行ってみただけの人間が言うが、ともかく印象に残る黒さのない退屈な画面が僕には面白くなかったのである。
ということで今作はその黒さが感じられた。具体的に言えば光がちゃんとしていたのである。故に影があった。
その影もジャンル映画に多いパキッとした影というより自然光を用いた感じの質感が強く出るタイプの影だ。
ということで撮影は良いのだが演出的には少し惜しいところもあった。明らかにここ物語的に必要です!という場面になると逆構図の切り返しが増えるのである。なんか気になるなぁ…と思ったら後々の伏線だったりしたのである。
とは言えこの場面も被写界深度が浅いなりにボヤけた背景もしっかりと人が動いているように作られていて、そこら辺の画面構築は良かったと言えるだろう。
他にも一点このようなボヤけた背景を用いた良い場面があったがネタバレなので具体的には言わない。実際に観て確認してくれ!
あと気になったのが三流のジャンプスケアが多い所。この映画とにかくジャンプスケアが分かりやすすぎるのである。露骨に少し静かで、かつ長めにカットを割らないアップの間があったら次の瞬間にドン!と来る。それはもう的中率99%である。来ると思った瞬間に耳を塞げば完璧に防げるのである。まるでゲームのボスのパターンを見極めてパリイ決めるみたいな感じだ。この安直ささえなければとは思ってしまう。
しかしそれでも今作が良作なのはその死体の多さ故である。前半からなかなかエグいのだが後半になるにつれてどんどん殺人が増えていく。それも具体的には明かさないが一つ一つがパンチのあるもので、特に顔面破壊など最高だ。
ホラーというのはショックであるという事を忘れないその姿勢が良い。
あと印象的なのが終盤に明かされるある真実だ。正直それがかなり予想外で笑ってしまった。
なんというかSF感すらある真実である。
これまで様々な宗教ホラーが作られてきた。今作もそれらの映画の強い影響下にあることは間違いなく、実際様々なオマージュも感じる。そんな中でこのオチというのはそれらの反転であるようにも思う。そういう点も面白かった。
そんな真実からのラストのエゲツなさは凄まじかった。今年の映画の中でも特に何見せられてんだこれ度が高かった気がする!
テーマ的には女性の身体を支配されるキリスト教の恐怖を描いているのだろう。様々なショックシーンでもそれらを感じさせる宗教的なモチーフをうまく入れ込んでいる。しかし大事なのはショックがショックとしてちゃんとショッキングでなおかつその量も多いことである。
ホラーであることを忘れない事が今作の美点である。
総じてド派手な見せ場が楽しい良いホラーだったと言えるだろう。面白かったぜ!
