もし夜に「ごめんね」と言っているなら、あなたはちゃんと愛してる
毎晩、寝る前に
心の中で「ごめんなさい」と言う。
オハナさんに。
今日もまた、言葉が強くなった。
同じ質問。
同じ確認。
さっき説明したばかりのこと。
わかってる。
認知症の症状だってことも。
わからなくて不安から来ていることも。
私はケアマネだ。
この仕事を20年やってきた。
でも。
母の前では、プロじゃいられない。
「さっき言ったでしょ」
その一言が、思ったより鋭く出てしまう。
母は一瞬、黙る。
その沈黙が、夜になると刺さる。
寝る前、私はこっそり母の部屋をのぞく。
小さくなった背中。
ゆっくり上下する胸。
気配で目を覚ました母が言う。
「早く寝なさいよ」
どうしてそんなに優しいの。
私は今日、あなたに
優しくできなかったのに。
泣きそうになりながら、
「おやすみ」とだけ言う。
縁側でおんぶしてくれた背中。
おはじきを並べた畳の匂い。
熱を出した夜、
リンゴをすりおろしてくれた手。
全部、覚えてる。
こんな娘で、ごめんね。
本当は、ちゃんと目を見て言わなきゃいけない。
「産んでくれてありがとう」
でも、怖い。
言ったら
何かが終わってしまいそうで。
だから今日も、心の中で謝る。
そして思う。
ケアマネでも、
親の介護はむずかしい。
もしあなたも、
夜に「ごめんね」と言っているなら。
きっと同じだと思う。
優しくできなかった日。
強い言葉を言ってしまった日。
あとから胸が苦しくなる夜。
でも。
それは、
ちゃんと愛しているから。
もし今、同じ気持ちでいる人がいたら。
あなただけじゃない。
私も、毎晩
心の中で「ごめんなさい」と言っています。
