【小説】『おかんという生き物』第4話 ニュータイプへの覚醒
第4話 ニュータイプへの覚醒
おかんという生き物は、人ではないかもしれない。人の顔した違う別の種族。
矛盾、理不尽、屁理屈などの全てを引き受けた種族。その慣れの果てがおかんという生き物だ。
母は、いつも全力だった。私を産んだのが二十歳のときだから、結構いつも「若い若い」と言われ、喜んでいた。
小学校に上がる前に、私は大阪へ引っ越し、ボロ屋でくらすようになった。そこは昔ながらの木造で、団地に引っ越すまでの仮住まい的なところだった。もともとは祖父母の家。
その当時の私は、よく母にぶたれていた記憶がある。あまりにも泣きすぎて、近所の人が心配して見にくることもあった。皆一様に立ち止まってこちらを見る。そして、眉毛をへの字にして気の毒そうに私を見ていた。
母が一番嫌うことは「うそ」であった。
当時私は紛れもなく嘘つきであった。
どうでもいいうそ。
「冷蔵庫のプリン食べた?」
「食べてない」
そんな程度の嘘だ。
その嘘が我が家では許されなかった。
嘘は徹底的に叩かれた。
いや、叩きのめされた。
流石にグーはなかったが、パーでフルスイング。叩いたあとで、「いったー」と母が手を押さえて言うこともあった。
あるとき、とんでもないことを言うことがあった。いつものように叩かれた後、
「叩かれる方より、叩く方がいたいんやでー」と、言うセリフだ。もしかしたら、心の痛みも含めての話だろうか?
もう叩かれ慣れて、軌道が読めるようになり、ある日から完全によけれるようになった。
ガンダムの世界でいう「ニュータイプ」への覚醒であった。「閃く」という状態になった。
しかし、母も覚醒した。もともとパワフルな母ではあるが、あるときからママさんバレーを始めた。長身を生かし見事にアタッカーへと成長を遂げていた。
もちろん私を成敗するためではないと、思いたい。何かしてないと、気が済まない性格故に、そうなったのだと思う。
さらに、母は新しい武器を手に入れていた。私が、1発目をよけたら違う軌道で戻ってくる。そうだ、いわゆる"ファンネル"もとい"往復ビンタ"である。それを食らうことになった。
あんな可愛い、少年に……。
でも、不思議と今は感謝してる。
ビンタにではない。
母が私の性根を治したことに。
私もうそを嫌うようになったから。
今でも、嘘をついた人間の顔は大嫌い。
そんな大人になれたことを誇りに思うから。
