【小説】『おかんという生き物』第2話 チキンラーメン事件
第2話 チキンラーメン事件
おかんという生き物は、人ではないかもしれない。人の顔した違う別の種族。
矛盾、理不尽、屁理屈などの全てを引き受けた種族。その慣れの果てがおかんという生き物だ。
忘れられない、愛媛の片田舎の記憶。
幼稚園から帰ってきた日のことだったと思う。
何で一人で帰ってきたのか、何時頃だったのか、詳しいことは覚えていない。
ただ、「ただいまー」と言ったあとの光景だけが、やけに鮮明だ。
私には6つ離れた妹がいた。
その妹がギャンギャン泣いていた。
そのとき、母も一緒になって泣いていた。
「どしたん、お母さん?」
「サチがえらいことになってるんよ」
見れば、赤く腫れ上がったお尻。
それをさすりながら泣いている母がいた。
「何で、こんなことになったん?」
「チキンラーメン作って、椅子の上に置いてたらそこにサチが座ったんよ」
「あー、どうしよー」
と、泣きながら、怒りながら私に言った。
子供用の椅子。座ったら音のなるケロッピとかのキャラクターが書かれた椅子。
そこにラーメン置いておく。
あっつあつの……
完全に母のミス。
ミスはさらに痛恨のミスを起こす。
「あー。やぶれたー。どうしよー」
母が冷ますために、さすっていたお尻の皮がやぶれてしまったのだ。
そして、母はさらに泣いた。
泣いた母を見て、私も泣いてしまった。
おかんという生き物の愚かさ。浅はかさを目の当たりにした。さらに泣く、サチと母。どうその場が収まったかわからない。
収まるべくして収まったのだろうが、記憶の中の断片だけが私のどこかに収まっていた。
母とサチの泣き顔は、地獄絵図のように鮮明に浮かぶ。それは私の思い出ランキング上位にランクインすることになった。
