【裁判・判決短信】「一年で一番忙しい日」に事故 運転中にハンズフリー通話で業務打ち合わせに夢中…赤信号見落とし/東京地裁
【事件概要】男性被告(46)は2025年12月23日夜、東京都内で普通貨物車を運転中、交差点で赤信号を見落として時速約30キロで進行し、横断歩道を歩いていた女性(57)をはねて、被害者に左手の橈骨(とうこつ)遠位端骨折による全治3カ月の重傷を負わせた。(過失運転致傷罪)
《判決》拘禁刑1年4月、執行猶予3年
東京地裁で開かれた初公判で全面的に起訴内容を認め、丁寧な口調で謝罪した被告。「一年で一番忙しい日でした」と当時を振り返った。
スーツ姿で出廷し、終始沈んだ表情。受け答えなども折り目正しく、真摯に反省している様子が感じ取れる。洋菓子の製造販売会社代表を務め、都内でケーキ店を複数店舗営む。業界では著名なオーナーシェフでもある。
事故を起こしたのは12月23日。クリスマスイブの前日だ。翌24日のイブに向けての仕込みで、ケーキ店が「一年で一番忙しい日」であることは想像に難くない。
当時は経営する店舗から別の店舗に向けて、仕上がったケーキを運ぶためにシェフ自らが冷蔵冷凍車を運転していた。そして携帯電話をハンズフリーにして部下と業務関係の通話をしていたという。
「仕事の追い込みの時間で、通話に夢中になってしまい信号を見落としました。私の体力、精神的に疲労がたまっていて、注意散漫になっていたところもあると思います」
前夜の睡眠時間は4時間ほど。「12月20日から25日くらいの期間は睡眠や昼休みを削って、気力で仕事していた。ドーパミンのような興奮物質が出ていたような感覚」だったと明かす。「ヨメさんからは、ボクが疲れているので『いつかこういうことが起こるのではと思っていた』と言われました」とうつむいた。
今後の対策としては「私自身が会社業務で運転しないでもいいような態勢を早く作っていきたい」。商品運搬を担当するドライバーが1人辞めたタイミングで、被告自身が運転する割合が増加していた背景もあるようで、人材確保に苦労する昨今ではあるが専属ドライバーの募集をかけているという。
もっとも、こうした業務過多の状況も「ただの言い訳でしかない」と率直に認めた被告。裁判官は、前科がなく真摯に反省し再発防止に努めている姿勢を評価しつつも、「被害者の負傷は重く、赤信号の見落としという基本的な注意義務違反は一方的なものだった」として「罰金刑では足りない」と判断。執行猶予付きの有期拘禁刑を言い渡した。
