ニャン公様とヘタ 俺たちに明日は無い
夜が更けると盛りのついた恋猫が「アオオオン、アオオオン」「ウオオオンァァ」と盛り声をあげる。
もうダメニャ。そう言うと、ヘタは満月に向かって駆け出していた。
どれくらい走っただろうか、街灯の明かりに照らされて、見慣れない野良猫が一匹ミーコに言い寄っていた。
「ミーコ、ええやろ、もう、そろそろ観念してーニャ。おまえには、けっこう貢いできたニャー」
「わしの子猫を産んでーニャ」
ミーコが首を縦に振る様子はない。その時、関西弁の野良猫がしびれをきらせてミーコの首めがけて噛みつく。
ミーコが横向きになって抵抗するも、力ではかなわない。
野良猫がミーコにまたがり、あわやという瞬間だった。黒い影が関西弁の野良猫に突進していた。
「ヘタッ」ミーコが影の方を向いて叫ぶ。
「よう、ミーコ」それだけのことだが、なんだか、ミーコにはえらくカッコいいセリフに聞こえた。
「猫の恋路を邪魔しくさって、どこの糞猫ニャ」と、全身の毛を逆立てて怒りをあらわにする関西弁の猫。
「わしがこいつにどれだけ貢いだと思とんニャー」関西弁の野良猫が涙目で叫ぶ。
「知らねえな」今夜のセリフはなぜだかぜんぶカッコいいヘタ。
深夜の町で睨み合う二匹の野良猫。すると関西弁の野良猫が「餌か、餌なら欲しいだけやるニャ」と交渉を始める。
ブニャー
ヘタの猫パンチが、関西弁の野良猫の顔面をとらえていた。関西弁の野良猫はあえなく敗走した。
「ヘタッ」。
ミーコの方を振り向き「よけいなことをしたかニャ」今夜のセリフはなぜだかぜんぶカッコいいヘタ。
「ヘタッ」。ミーコの目が潤む。ヘタの鼻がヒクヒクする。
匂いがする方に行くと、ビニール袋いっぱいのチュールが置き去りにされていた。
「ヘタッ」。ミーコが駆け寄ろうと一歩踏み出した瞬間、ヘタが目の前のビニール袋を咥えて暗闇の中へと全力疾走する。
「ヘタのバカーそれ全部わたしのニャー」
......「うまかったニャ」......「おいしかったニャ」......。
