青ブラ文学部 雨の日には
雨の日にはカエルが鳴く。鳴くのはオスで、メスを求めて大合唱だ。
「来た来た!」
近づいてくる一匹に飛びかかり、捕まえた。
「おいおい! オスなんだけどオレ」
「あっ!ごめん。間違えちゃった」
田んぼのあちこちで、こんな両生類の争奪戦が繰り広げられている。
都会から妻の郷里に I ターンして、田舎暮らしを始めた一家がいた。
ある雨の夜、地響きのような共鳴音に若い父親が驚いて110番。
「カエルの鳴き声くらいで110番しないでください」
「カエル・?・知りませんでした。すみません」
田舎者には子守歌代わりのカエルの鳴き声が、都会人にとっては騒音この上ない。外国人にとってのコオロギと同じで、サウンドではなくノイズ。
子供たちにのびのびとした田舎暮らしを味あわせたいと意気込んだ父親だったが、梅雨が来て、うるさい!と毎晩眠れず、サウンドにならない父親だけひとり、また元の都会にUターンしてしまった。
父、カエルで帰る。田舎には戻らない。妻から離婚届が送られてきた。慰謝料も養育費もいらないと言う。
「カエルに感謝かも?」
傍らの真新しい彼女が言った。彼はまだ知らない。彼女が本当はオスだということを。何をどこで間違えたのか。いや案外、カエルほど間違えていないのかもしれない。
(撤収~)
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