絵 「1987年、表参道 恩恵の街」 空中回廊アート館 GreenPost No.5
Webマガジン GreenPost の誌面を飾るに相応しいアートとは? どこに探しに行けばいいのか? そこで、10の問いに答えると、あら不思議、絵や詩や言葉が、あの空中回廊アート館に現れたのです。
2026/06/21 空中回廊アート館 GreenPost
一枚の絵「1987年、表参道 恩恵の街 / The City of Grace」

1987年。
東京、表参道。
1987年12月。
東京・表参道。
世界は揺れていた。
ブラックマンデーの衝撃はまだ消えていない。
しかし、この街には不思議な活気が残っていた。
ストーリー
「恩恵の街」
1987年の冬。
表参道の街路樹には光が灯り、
ショーウインドウには未来が並んでいた。
世界は不安の中にあった。
市場は揺れ、
国々は迷い、
冷戦は終わりへ向かっていた。
だが東京は違った。
まるで別の時間が流れているようだった。
若いアメリカ人の女性が、
ショーウインドウの前で立ち止まる。
彼女は驚いていた。
なぜこの街は、
こんなにも明るいのだろう。
なぜ人々は、
こんなにも未来を信じているのだろう。
少し離れて、
アジアから来た夫婦が歩いている。
彼らはまだ知らない。
これからアジアが大きく変わることを。
そして、
日本もまた変わることを。
実は、この時の東京を知らない。
だからこの街を知らない。
だが今になって、
見てみたいと思う。
この時代の人々は、
何を見ていたのだろう。
何を信じていたのだろう。
人は富を築く。
都市をつくる。
看板を掲げる。
道路を伸ばす。
しかし日本には、
それとは別の何かが流れている。
保守的であり、
伝統的であり、
革新的でもある。
雑然としているようで、
どこか調和している。
世界の多くの都市は、
人間とともに老いる。
人が去れば、
街も荒廃する。
だが日本では違う。
街は待機する。
空き家も、
空き店舗も、
次の誰かを待っている。
人口が減っても、
経済が停滞しても、
安全と清潔さは残る。
まるで都市そのものが、
人間とは別の生命を持っているかのように。
東京は、
いつかまた大地震に襲われるかもしれない。
失われるものもあるだろう。
だが日本人は知っている。
失われることと、
恩恵が失われることは違う。
山は残る。
水は流れる。
風は吹く。
人はまた戻ってくる。
そして街は、
再び息を始める。
「恩恵の街」
灯りは輝いていた。
やがて消えることを知らぬまま。
ショーウインドウは煌めいていた。
やがて空になることを知らぬまま。
それでも、
それは美しかった。
若い旅人が、
夢を映すガラスの前に立つ。
なぜこの街は微笑んでいるのだろう。
なぜ世界が揺れているのに、
これほど静かな自信を持っているのだろう。
街路は答えない。
ただ呼吸している。
富の呼吸ではない。
権力の呼吸でもない。
もっと古いもの。
木の忍耐。
水の記憶。
季節のやさしさ。
人は都市をつくる。
時はそれを奪う。
それでもここでは、
都市は待っている。
荒廃ではなく。
放棄でもなく。
待機として。
畑が春を待つように。
雪の下で種が待つように。
山が雲を待つように。
いつの日か、
再び大地は揺れるかもしれない。
塔は倒れ、
看板は消えるかもしれない。
それでも残るものがある。
目には見えず。
買うこともできず。
壊すこともできない。
空気と水と、
ここに生きる人々の心に織り込まれた、
恩恵という名の何かが。
(英詩の和訳)
“The City of Grace”
The lights shone
before they knew
they would fade.
The windows glittered
before they knew
they would empty.
And still,
they were beautiful.
A young traveler
stood before a glass of dreams.
She wondered
why this city smiled.
Why it carried
such quiet confidence
while the world trembled.
The streets did not answer.
They only breathed.
Not the breath
of wealth.
Not the breath
of power.
But something older.
The patience of wood.
The memory of water.
The kindness of seasons.
Men build cities.
Time takes them away.
Yet here,
the city waits.
Not ruined.
Not abandoned.
Waiting.
As fields wait for spring.
As seeds wait beneath snow.
As mountains wait
for clouds to return.
One day,
the earth may shake again.
The towers may fall.
The signs may vanish.
Yet something remains.
Invisible.
Unpurchased.
Undestroyed.
A grace
woven into air,
water,
and the hearts
of those who stay.
(Joe Vahi)
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■ コメント-
1987年東京、表参道。当時のその街の姿、まったくの想像の産物。一枚の絵と詩「The City of Grace」。GreenPost空中回廊アート館第五作目。
人は、世界をつくっているようで、
その中にすでにあるものを、
なぞっているのかもしれない。
この回廊は、まだ続きます。 (2t)
