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05|AI時代、営業の仕事はこう変わる|a16zとHBRが示す“残る人・消える人”


はじめに

「営業の役割は、これから1〜2年で大きく変わる」
 
もし今、
「自分の営業スタイルは、5年後も通用するだろうか」
そんな不安を少しでも感じているなら、この記事はあなたのためのものです。
 
以前、a16zの記事をもとに投稿した内容が、
想像以上の反響をいただきました。


LinkedInでの投稿


今回はその内容を整理しつつ、他の調査記事も踏まえて、
「これから営業はどう変わるのか」を改めて言語化します
 
最初に私のスタンスを示しておくと、
営業という職種そのものが不要になるとは考えていません。
ただし、これまでと同じやり方の営業が通用し続けるとも思っていません。
 
ここで紹介していない情報なども含めて色々調査していたら、
記事のボリュームがだいぶ大きくなってしまいました。

TL;DRだけでもお読みいただくか、
一旦、「保存」していただいて少しずつ読んでいただければ幸いです。

TL;DR(超要約)


-    営業はなくならないが、「売り方」は1〜2年で大きく変わる
-    製品説明型の営業はAIに置き換わり、技術理解と実装視点が重要になる
-    差別化の軸はプロダクトではなく「顧客を成功させられるか」へ移行
-    複雑なB2Bでは、曖昧な課題を整理し意思決定を前に進めるAEは引き続き必要
-    AI時代の営業は「売る人」から「顧客の成功を設計する人」へ進化する
 

(1)a16zが語る「営業の変化」


a16zが公開した、
「Need for Speed in AI Sales」という記事は、かなり踏み込んだ内容でした。
 
この記事では、

  • Account Executive(AE)は縮小する可能性がある

  • Sales Engineer(SE / Pre-sales)の重要性が増す

  • 状況によってはAEとSEが統合されていく

と述べられています。

具体的には以下の文章が該当します。(nani.now で翻訳、一部修正)

まず、営業職はより技術的なものへと変化します。
アカウントエグゼクティブ(AE)は、ソフトウェアを利用する人々を理解するだけでなく、エージェントが実際に人間の仕事をどのように行うのか、その技術的な詳細を理解する必要があります
時には、より技術的な担当者を雇うことが求められ、また別のケースでは、顧客体験を向上させるためにAEとソリューションエンジニアの役割を統合することが必要になります。

a16z Enterprise|Need for Speed in AI Sales



背景にあるのは、顧客側でのAI活用の急速な浸透です。
 
顧客は、
表面的な製品知識や比較情報であれば、
すでにLLMとの対話で事足りてしまいます。
 
「ただ製品を紹介するだけの営業」は、
真っ先にLLMに置き換えられる領域になっています。
 
一方で、
PoC設計や実装を見据えた技術的な対話ができる人材、
つまりSales Engineerの重要性は、確実に高まっています

 
これはAIプロダクトに限った話ではありません。
技術者向けプロダクトや、業務向けSaaSでも同じです。
 
今後の差別化ポイントは、
単なる機能理解ではなく、
「製品が対象とする技術領域もしくは業務ドメイン
をどこまで深く理解しているか」、です。
 

(2)差別化は「プロダクト」から「顧客の成功」へ

a16zは別の記事で、
Forward Deployed Engineer(FDE)という役割の重要性にも触れています。
 
FDEは、単なる導入支援ではありません。
顧客の現場に深く入り込み、
「どう使えば成果が出るか」まで一緒に設計するエンジニアです。
 
SaaS全盛期は、
「良いプロダクトを作れば、自然に広がる」
と言われてきました。※いわゆるProduct-led Growth
 
しかし今は、
開発スピードが上がり、機能差はすぐに埋まります。
 
結果として、
プロダクト単体での差別化は難しくなっています。
 
だからこそ、
競争優位の源泉は「顧客を成功に導けるか」に移っています
 
 
そのために、営業チームとして、
Pre-salesやSEは、
単なる技術説明者ではなく、
導入後の成功を設計する存在として、
これまで以上に重要になっていきます。

(3)それでもAccount Executiveは必要か?
 
ここで多くの人が感じる疑問は、
「では、AEは本当に必要なのか?」という点だと思います。
 
私の見立てでは、
複雑なB2B商材を扱う限り”、AEの役割は今後も重要です。
 
理由はシンプルです。
製品や導入プロセスが複雑になるほど、
顧客側の「曖昧さ」も大きくなるからです。
 
顧客は、
・何が本当の課題なのか
・どの選択肢が正解なのか
・どんなリスクが潜んでいるのか
を、最初から明確にできているわけではありません。
 
この曖昧さを整理し、
意思決定を前に進める。
ここは、まだデジタルツールだけでは十分に代替できない領域です。
 
言語化されていない
潜在な課題を掘り起こすのが、
Account Executiveに求めれるスキルになりつつあるでしょう。

(4)Account Executive向けのAIツールはどこまで来ているのか?

 では、AEの仕事はどこまでAIに任せられるのでしょうか。
 
現時点では、
AIがAccount Executiveの代わりに、
自律的に営業活動を進める段階には至っていません。
AE業務を丸ごと担えるAI Agentの実用例も、まだ限定的です。
 
一方で、
業務効率化という観点では、AIの活用は着実に進んでいます。
 
例えば、
購買者インサイトを活用することで、
アップセルやクロスセルの機会が増え、
アカウント成長率が向上するというデータも出ています。
 
具体的に、AIが支援できる領域は次のようなものです。
 
●アカウントプランの支援
 CRMに蓄積された情報をもとに、
 組織図の作成、ホワイトスペースの可視化、
 中期経営計画や決算資料、最近のメディア情報を踏まえた
 顧客の立ち位置整理をAIが補助します。
 
●商談管理の自動化
 面談内容の文字起こし、
 タスクの自動登録、
 次に取るべきアクションの提示。
 見積書や契約書の下書き、
 フォーキャストレポート作成なども自動化が進みます。
 
●提案資料作成の支援
 ヒアリング内容をもとに、
 顧客の現状整理や取るべきアクション案をAIが構造化します。
 ただし、技術的な図解や最終的なストーリー設計は、
 Pre-salesと人間が担うケースがほとんどです。
 
ただし、ここで忘れてはいけない前提があります。
インプットするのは、結局人間だということです。
 
CRMに情報が入っていなければ、
AIは何も返してくれません。
AIは万能ではなく、
人間の思考を加速するための道具にすぎません。
 

(5)AEが持ち続ける「秘伝のタレ」

もう一つ、AIには決定的に扱えない領域があります。
 
それは、
Account Executiveが長年の経験の中で積み上げてきた、
顧客組織の論理や政治、そして人と人とのリレーションシップです。
 
例えば、
・本当の決裁者は誰なのか
・表では賛成しているが、裏で慎重な人物は誰か
・過去の失敗案件が、今の判断にどう影響しているか
・この担当者の「前向き」は、どの温度感なのか
 
こうした情報は、
資料にも議事録にも、CRMにも、ほとんど残りません。
 
しかし実際の意思決定では、
こうした「表に出てこない文脈」が、
結果を大きく左右することが多々あります。
 
AEは、
複数の商談、失注、雑談、時には修羅場を経験する中で、
この顧客組織の暗黙知を身体感覚として蓄積していきます。
 
言語化しきれず、共有もしづらい。
だからこそ、この知見は
秘伝のタレのようにAE個人に紐づいていきます。
 
AIは過去データを整理することはできます。
しかし、
「この会社では、誰を立てないと話が進まない」
「この部署は、表向きの課題と本音が違う」
といった感覚値を、同じ精度で持つことはまだできません。
 
この顧客組織の暗黙知こそが、
Account Executiveが今後も価値を持ち続ける理由の一つだと感じています。
 

(6)これからの営業に求められるもの

ここまでを踏まえると、
これから営業に求められるのは、次のような力です。
 
・技術を理解したうえでの文脈理解
・顧客の言語化できていない課題を引き出す力
・価値実現までの道筋を描く力
・複雑な意思決定におけるリスク低減と合意形成
 
 

おわりに

私自身、テック系サービスに長く関わってきました。
 
その中で何度も見てきたのは、
技術が分からないことで、
営業がボトルネックになってしまう場面です。
 
これから営業を名乗るには、
単に売る人ではなく、
顧客の成功を設計する人になる必要があります。
 
AI時代の営業とは、
顧客の成功は何かを引き出し、
解決策を提示するような、
よりコンサルティングに近い存在へと進化していく。
私はそう考えています。
 

参考情報


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