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にんじんのグラッセの魔法

私は鍋に火をかけた。
作っているのは、
にんじんのグラッセ。

明日のお弁当のための
付け合わせに作っている。

私はにんじんのグラッセが
あまり好きではなかった。

にんじん自体も甘いのに
さらに砂糖で
甘くしている理由が
よく分からないし、あえて好き好んで食べるものではないかなと。

そして、ただの付け合わせで
あってもなくてもどうでも
よい存在だった。

けれど、夫はにんじんが
好きな人だった。
にんじんが好きな人って
私からするとちょっと珍しい人に思えた。

さらにハンバーグも好きなので
私が初めてにんじんのグラッセを
作ってみようと思ったのは
夫がきっかけだった。

明日は夫が焼いてくれる
予定のハンバーグと
にんじんのグラッセを
お弁当に入れて持って行くことにした。

だから、よいしょと
腰を上げてにんじんの
皮を剥いている。

かといって、しょっちゅう作っている訳でもないので
毎回にんじんのグラッセのレシピを見てから作っている。

鍋にお水とにんじんとバターと砂糖と少しの塩と
少しのコンソメを入れて
コトコト煮ていく。

その間、洗濯物を畳みながら
たまに、鍋を見に行っては
また洗濯物を畳んで。

洗濯物がそれぞれの場所に
置き終わってから、私は鍋の中を
のぞいてみた。

にんじんがガスレンジの上の
ライトに照らされて
オレンジ色が
より鮮やかに映えている。

ぷくぷくとにんじん達が
お風呂に入って赤く火照って
いるよう。

そんなにんじん達を見ていたら、
この煮ている時間が
気づいたら愛しい湯気に
包まれていた。

だんだん、お鍋の水分が少なくなってきて私は木のスプーンで
にんじんをかき混ぜた。

そうしたら、あっという間に
にんじんがキラキラと
輝きだした。

あれ!魔法みたい。

私は、今日初めて
にんじんのグラッセを
ただの付け合わせと
思えなくなった。

ハンバーグの隣にいる
にんじんのグラッセは
見る人から見れば
ただの付け合わせかも知れない。

でも魔法がかかった、
その愛らしい光で
ハンバーグを
そっと引き立てている。

そんな、
にんじんのグラッセのような人になりたいと思わせてくれた。

そして、グラッセのような
物を私は作り出したいの
ではないかと思った。

夫と私が一緒に作った
明日のお弁当箱が、楽しみだ。






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