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【第2部:婚活の出口で感じる苦しみ】第7章:婚活が牙を剥くとき ——ダメな自分を愛せよ―3. 婚活うつ・婚活依存症

私は30歳から37歳までの7年間、婚活という戦場に身を置いていた。しかし、その活動は「婚活をすれば結婚できる」という期待とは裏腹に、徐々に心へ重くのしかかる重荷へと変わっていった。

たくさんの異性と出会いながらも「好きになれそうな人がひとりもいない」という現実に直面し、その原因が自分の性格や欠陥にあるのではないかと自問自答を繰り返していた。結婚していない自分を「誰からも選ばれない惨めな人間」と思い込み、一刻も早く結婚することでやっと「普通の人」になれると本気で信じていたのだ。

活動を続けるほど、年齢への恐怖は増大していった。
「ここでやめたら、二度とチャンスは訪れない」
「今が一番若いのだから、婚活を休んではいけない」
そう自分を追い込むうちに、婚活というループから抜け出せなくなっていった。

生活のほとんどが婚活に侵食され、仕事以外の時間はすべて婚活のために費やした。自分を磨き、何百人と会い、メッセージのやり取りを丁寧にこなした。しかし「成婚」という結果は自分だけの努力ではどうにもできない。

何年もその状態を続けた結果、婚活を始める前の自分が、自由な時間に何を楽しんでいたのかさえ思い出せなくなっていた。
そして気づけば、「結婚できないまま婚活をやめてしまったら、自分には何も残らないのではないか」という恐怖が、私を支配していた。

当時の私は、客観的に見れば「婚活うつ」や「婚活依存症」と呼べる状態に陥っていたと思う。

婚活うつ:
婚活という活動そのものに疲れ果て、心身に支障をきたす状態。
「頑張っても報われない」という無力感が繰り返されることで、脳がダメージを受け、意欲やエネルギーが枯渇してしまう。

婚活依存症:
婚活をやめることが「自分の存在価値を失うこと」と直結し、強迫観念から活動を止められなくなる状態。 結婚そのものが目的ではなく、婚活という「活動」や「誰かとマッチングすること」によって一時的な承認欲求に依存し、心を満たそうとする。好きでもない相手とのデートでスケジュールを埋め尽くすため、婚活以外の趣味や人間関係が消失する。

婚活うつは「もう動けない」というエネルギー切れ状態であり、
婚活依存は「止まったら死ぬ」という恐怖による暴走状態である。

どちらも根底にあるのは「ありのままの自分では価値がない」という自己肯定感の低下だ。この2つは独立しているわけではなく、依存状態の果てにうつを発症するなど、地続きになっていることも多い。

真面目な人ほど壊れていく理由

婚活に疲れ切ってしまう人には、いくつか共通した傾向があるように感じる。

・明確なゴールが見えないまま惰性で活動を続けてしまう
・人に弱さを見せるのが苦手で、ひとりで抱え込んでしまう
・相手に期待しすぎて気持ちが空回りしてしまう
・自分の休息や楽しみを後回しにする

これらは欠点ではなく、むしろ真面目で責任感が強い人ほど陥りやすい状態だ。「もっと頑張れば報われる」という信念が、皮肉にも自分を追い詰めてしまうのである。

「婚活」が目的化する依存の構造

そもそも大前提として、『婚活=結婚が確約される活動ではない』。
だが婚活を始める時、私たちは「努力すれば結婚できる」という期待を抱きがちだ。
しかし現実はそう単純ではない。
どれだけ努力しても「相手の意思」という自分ではコントロールできない要素が存在する以上、結果は保証されないからだ。

理想の条件を満たしている人を選んでも、一緒に居たいと思えない。
家庭を築くのに向いてそうな人だとしても、好きになれそうにない。
この人だ、と思う人に出会って、誠実に向き合っても報われない。
活動量を増やしても、運命の人に出会う確率が上がるとは限らない。

私たちは「努力が足りないのではないか」と自分を責め始め、婚活のために動けば動くほど成果に近づいているという錯覚をし始める。
「婚活をやめる」という選択肢は、挫折や敗北のように感じられてしまい、婚活をしていることで、「結婚できる」という僅かな可能性を残そうとする。

その結果、結婚そのものよりも、「活動し続けている自分」を維持することが優先され始める。
本来のゴールは結婚であるはずなのに、いつの間にか「婚活を続けること」「活動し続けること」自体が目的化してしまうのだ。

私自身も、まさにその状態に陥っていた。成果が出ない焦りから、「もっと、もっと」と活動量を増やし、休むことを自分に許さなかった。
しかし、どれだけ動いても結果は出ず、気づけば婚活以外の時間が削られ、趣味や友人との時間は後回しになっていった。
そんなある日、ふとこんな疑問が頭をよぎった。

「私は、何のために婚活をしているのだろうか」

結婚していない自分には価値がないと思い込み、せめて「婚活をしている自分」に価値を見出そうとしていた。そして逆に、婚活していない自分には価値がないと感じるようになってしまっていたのだ。

「もしこの活動を終えたら、私は何をして生きるのだろうか」
「結婚したら本当に安心や幸せが手に入るのだろうか」

こうした問いを持ち、自分と向き合うことで、「婚活をしている自分」ではなく「本来の自分自身」を少しずつ取り戻すことができるようになった。

「自分の幸せのために時間を使う」という選択肢

私は結婚したい気持ちを完全に捨てたわけではない。
でも、私にとって婚活は「幸せを感じにくい活動」だった。
だからこそ、自分の人生の中で「幸せを感じられる時間」を優先し、無理な婚活はしないと決めた。

婚活の時間を減らすことも、休むことも、決して逃げではない。
自分を守るための戦略であり、頑張った自分を労うための選択だ。

疲れを感じたらアプリを開くのをやめる。
信頼できる人と話す。
条件ではなく、「一緒にいて心地よいか」を基準にする。
そして婚活以外にも、自分を満たす「幸せの軸」を持つ。
趣味、仕事、友人関係、日常の楽しみなど、人生を支える基盤を複数持っておく。

こうして活動量と期待値を調整することで、
婚活は「義務」から「自分の選択」へと変わっていく。

私の場合は、料理、旅行、友人との時間、文章を書くことがその役割を果たしていた。婚活の時間を減らし、他に夢中になれるものを持つようになると、自然と「結婚しなくても、私は十分に幸せを感じられる」という感覚にたどり着いた。

これは、「結婚だけが人生の正解ではない」「結婚しなければ幸せになれない」という思い込みから、自分を解放する余地があるということだ。

「結婚できなければ自分はダメだ」と考えるのではなく、
「もし結婚しなかったら、私はどう生きるだろうか」と考えること。

それもまた、自分の幸せのために時間を使っているということなのだ。


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