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Marathonは日本で定着するか?Arc Raidersが映す「攻略先行」文化──そして理不尽の意味付けがゲーム寿命を決める

はじめに:Marathonのサーバースラムと、日本とsteamでのArc Raiders人気を見て思ったこと

 Marathonのサーバースラムが昨日から開始されています。Twitchでは開幕ダッシュのような多くの配信者による配信が行われ、Marathonのプレイフィールを確かめています。
 一方、競合タイトルであり大きな成功をしたArc Raidersですが、未だにsteam同時接続者数上位に君臨しています。しかし日本ではArc Raiders人気は下火となっており、少なくとも大手配信者によるゲーム実況ブームは終えたようにみえます。
  Arc RaidersやMarathonのような、探索・緊張・判断が核になり得るゲームを見ると、日本のプレイヤーとして少し考えてしまうことがあります。
それは「日本では最適攻略が早く固まると、熱が早く冷めやすいのではないか?」という感覚です。

 Arc Raidersは(少なくとも私の観測範囲では)海外では長く遊ばれ続けている一方、日本では人気が早めに落ち着いたように見えました。それはArc Raiderが「最適ルート」「最適装備」「最適ムーブ」が固まり、全タスク完了やレベル75到達、クイーン撃破を終え「攻略完了」の認識が広まったのではないかと考えています。
 そしてMarathonももしリリース後に「最適ルート」「最適装備」「最適ムーブ」が短期間で収束してしまうなら、日本でのプレイ寿命は短くなるかもしれません。

この考えを整理するために、ゲームの受け取られ方をひとつの観点でまとめてみたいと思います。



1. 「攻略先行」と「インタラクティブ先行」

私は以前のnoteで日英のプレイヤーの傾向を、次の2つに分けて考えています(もちろん絶対法則ではなく、混ざります)。

  • 攻略先行:最適解を探し、手順の完成(攻略完了)に価値を置きやすい

  • インタラクティブ先行:世界の中でどう振る舞うか、状況の中でどう遊ぶかに価値を置きやすい

日本では攻略情報の共有が非常に速く、精度も高いと感じています。これは悪いことではありません。むしろ「上達の文化」「共同研究の文化」だと思います。
ただ、その強さゆえにゲームによっては「解けたら終わる」が早く起きてしまうことがある、と私は考えています。

(攻略先行・インタラクティブ先行の詳細についてはこちら)


2. 攻略先行で寿命が短くなるゲーム、長くなるゲーム

攻略先行が強い環境で、寿命が短くなりやすい典型パターンがあります。

  • 最適解(ルート・装備・勝ち筋)が早期に固定化する

  • 攻略情報が「プレイスタイル」ではなく「答え(=万能解)」になっていく

  • すると「もう解けた」「やることがない」になりやすい

前述した通り、Arc Raidersは「もう解けた」「もうやることがない」の段階になり、日本では世界の人気と比べ短命といえるゲームであることがいえるとおもいます。
ただし、攻略先行=短命とは限りません。
攻略先行でも長寿命になるゲームがあります。代表例として挙げたいのが『Escape from Tarkov』です。


3. タルコフは「攻略先行でも長寿命」を成立させている

タルコフは日本でも人気のエクストラクションシューターですが、ゲームプレイや配信・動画視聴していると「攻略完了」が遠いゲームです。

  • マップやタスクマーカーなど、情報が親切に提示されません

  • PvPvEゆえに不確実性が非常に大きいです

  • Kappa取得やライトキーパー関連など、到達に膨大な時間と労力がかかる目標が用意されています

  • さらに最近ではプレステージ的に周回できる仕組みも入っています

また、マッチングの長さ、最適化不足、チーター問題、理不尽な死など、ストレス要因が多いことも事実です。
それでも長く遊ぶ人がいるのはなぜでしょうか。

タルコフの核心を、こう捉えています。

タルコフは「最適解が存在しても、それは勝利の保証ではなく、生存確率を少し上げるためのプレイスタイルに留まる」
だから攻略情報が増えてもゲームが終わらない。

ここが、攻略情報が「答え」になってゲームが早く終わるタイプの作品と大きく違う点です。


4. フロム作品(ダークソウル/エルデンリング)とタルコフが似て見える理由

ジャンルは全く違うのに、タルコフとフロム・ソフトウェア作品(いわゆるソウル系の家元)には共通点があるように感じています。
それは「不親切さ」や「不確実性」を、プレイヤーが納得しやすい形で受け取れるように設計(あるいは結果的に成立)している点です。

フロム作品は、意図された緻密な計算のもとで難しさが設計されています。さらにナラティブ(断片的な物語、世界観)まで含まれているので、攻略先行だけでなくインタラクティブ先行の文化圏にも強く刺さったのだと思います。『エルデンリング』が世界で評価されたのは、そのバランスの良さが大きいのではないでしょうか。

一方、タルコフは長いベータ期間のトライ&エラーで進化してきた側面があり、フロム作品のように最初から完成品とリリースされた作品とは異なると思います。
それでも、結果として出てくるゲーム体験には似たものがある。ここが興味深い共通点であると私は考えています。

では、共通して何が起きているのでしょう、一言で表現するならば。

「理不尽の意味付け」に成功しているゲームは、攻略先行にもインタラクティブ先行にも刺さり、長寿命になりやすい。


5. 「理不尽の意味付け」ー長寿命を生む3条件

多くのゲームにおいて、次の条件が満たされるほど長く遊ばれやすいと私は考えています(もちろんどのゲームにもおける絶対法則ではありません)。

条件1:不親切/不確実性が「その世界の法」として納得できる

フロム作品では、観察と反復が世界観と結びつき「こういう世界なのだ」と受け取れます。
タルコフでは、戦場やサバイバルの文脈に回収され「情報不足は当然だ」と受け取れます。

単なるUIの不便さではなく、世界のルールに見えることが重要です。

条件2:改善可能性を感じる(学習が資産化する)

死や失敗が「ただの罰」にならず、次の工夫につながる。
この手応えがあると人は「このゲームは低評価」とならずにプレイを続けられます。

条件3:攻略が「答え」ではなく「作法」に留まる

最適解が一つに収束して万能化すると、攻略先行型では燃え尽きやすく飽きやすいです。
逆に攻略が局所解の集合として存在するなら、学習も遊びも尽きません。


6. この理論でArc RaidersとMarathonを見ると、何が見えてくるか

Arc Raidersが短命であったこと、Marathonが日本で長寿命になるかは、結局ここにかかっていると考えています。

  • 不親切・不確実性が世界の法として納得できるか

  • 改善可能性(学習の手応え)があるか

  • 攻略が万能解にならず、プレイスタイルのまま留まるか

もし「最適ムーブを覚えれば勝てる」という方向に強く寄るなら、日本では「解けたら終わる」が早く起きるかもしれません。
逆に「判断のゲーム」であり続けるなら、タルコフやフロム作品のように日本の攻略文化はむしろ追い風になり得ます。


おわりに:Marathonがどんな理不尽を、どんな意味に変えるのか

 Bungieの社名を懸けたMarathonには期待しています。
 このゲームがもし「攻略先行」の人にとっては学習資産が積み上がり、「インタラクティブ先行」の人にとっては状況から物語が生まれるような設計になっているなら、文化圏を越えて長く遊ばれるタイトルになれると思います。(先行トレーラーではナラティブが強調される動画の印象が非常に強いです)

未来のゲームやゲーマー文化が、次の方向に進むと面白いと感じています。

  • 「最適解を最速で知る」だけではなく、「自分のプレイスタイルを磨く」ことが価値になる

  • 「勝ち」だけではなく、「判断の美しさ」や「生還の物語」が共有される

  • 攻略情報が答えではなく、そのゲーム世界に住むための知恵として機能する

 理不尽そのものが価値なのではありません。それは多くのエクストラクションシューターやソウル系ゲームで繰り返し失敗してきました。
 理不尽が、学習と納得に変換されるとき、ゲームは長く続き、文化を作っていくのだと思います。

Marathonがこの先どんな形でそのバランスを取っていくのか。
そしてゲーマーがその世界でどんな「プレイ文化」を育てていくのか。
しばらくはそれを観測するのが楽しみです。
(サーバースラムは日本時間で3月3日午前3時まで!)


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