解説『教皇選挙』教皇の座を巡って錯綜するそれぞれの思惑とは

🎬あらすじ
ローマ教皇は死去した。その知らせを受けた教皇庁の主席枢機卿であるローレンス枢機卿は、次なるローマ教皇を選出する教皇選挙の準備を進めていく。外界と遮断するための工事は進み、世界中からバチカン市国に100人を超える枢機卿が集結した。
教皇選挙を前に、それぞれの派閥で有力となる候補の話し合いが水面下で進められる中でリストに存在しない1人の枢機卿が現れる。そのメキシコ出身のベニテス枢機卿は秘密裏ではあったが正式な手続きによって選出された枢機卿だった。ローレンス枢機卿は彼を迎え入れたことで、ここに全員が集結した。
翌日、それぞれの思惑が交錯した選挙の第1日目が始まろうとしていた…

🤔解説
1日目の選挙を終えたローレンス枢機卿が部屋で目を覚ましたときに口論らしき声を耳にする。それは隣室のアデイエミ枢機卿とナイジェリアから派遣されてきた修道女シャヌーミの口論だった。
翌日の2日目、食事中にアデイエミが騒ぎを起こしたのはその延長戦が勃発してしまったからだ。ローレンスは管理責任者であるシスター・アグネスの妨害を受けながらもシャヌーミから話を聞き、30年前の不貞の末に子供を孕(みごも)った事実を突き止める。
そのことをアデイエミに問い詰めて事実であることを確認をする。口外することはなかったが、すでに噂は他の枢機卿らが耳に入り彼は候補の座から外れることとなる。

階段の踊り場で伝統的な規範や価値観に縛られることなく、個人の自由で多様な生き方を認めるリベラル派の候補であったベリーニ枢機卿はローレンスたちに候補を諦めると漏らす。その票はトランブレ枢機卿に向けるよう説明したとき階下でそれを盗み聞きしていたシスター・アグネスは走り去っていく。
その後ローレンスはシャヌーミをバチカンに呼び寄せる指示をした人物を探るべくシスター・アグネスに掛け合うも、彼女は強固な姿勢でそれを拒む。
古い価値観に縛られることなく柔軟性や多様性を重んじてきた教皇はシスター・アグネスからの信頼も厚かった。だがその方針ゆえに真逆の思想を持つ保守派のテデスコ枢機卿の妨害も受けていた。
シスター・アグネスはずっと側にいたことで、死期の迫った教皇が特定の人物を次期教皇に選出されるよう画策していることは知っていた。しかしそれが誰かは分からなかったから彼女はずっとスパイのように探りを入れてきた。敬愛する亡き教皇の画策を後押しするために。

ベリーニやローレンスたち一派の票がトランブレに流れるのを階段で盗み聞きしたシスター・アグネスにとって、ローレンスに手を貸すことはトランブレに手を貸すことと同じだった。それは亡き教皇が望むことではなかったから彼女は協力を拒んだ。
それに対してローレンスはかつて自分が主席枢機卿という立場を降りようと教皇に進言したときに引き止められたこと、それには意味があったのだと気付きはじめたことを彼女に説明する。
このときシスター・アグネスは、じっと考えを巡らせるような表情をする。彼女は何故、教皇が彼を引き止めたのか…その理由を考えていた。そしてその理由に気づくと一転してローレンスに協力する。そして彼女が開いたパソコンの画面を見てシャヌーミを手配した人物がトランブレであることを突き止める。

ローレンスはトランブレを問い詰めるが教皇に頼まれたからだと弁明して去っていく。もしそうであれば何かしら証明する手掛かりがあるはずと考えたローレンスは教皇の部屋の封印を解いて中へと侵入する。
このとき、通りかかったシスター・アグネスが解かれた封印と、消えた電気でまだ何者かがいることに気づく。ドアノブに手を掛けた瞬間に誰がいるのかを察する。この状況下で封印を解いてまで何か手掛かりを求める人物は1人しかいないことを。教皇の意図を察してローレンスに協力する方向へと舵を切った彼女は邪魔しないようにその場を後にする。
彼女が去ったあと、ローレンスはベッドに隠された報告書を発見しそれをベリーニに見せる。そこに書かれたのは1年前からトランブレが票の買収を行っていたことだった。教皇が死の前日に、彼を全ての任から降ろしたのはそれが理由だった。
その事実を無かったことにしようとしたベリーニの態度は、ローレンスに彼自身の買収をも気づかせることとなる。

3日目、食事の席でシスター・アグネスが手伝って人数分コピーされた文書が枢機卿全員に配布された。加えて彼女はシャヌーミを呼び寄せた張本人もトランブレであることを告げる。
トランブレは手配した事実は認めたが、それは教皇に指示されたからだと釈明した。“神に誓って”という彼の言葉に偽りはなかった…教皇が指示したのは事実だったからだ。
修道女シャヌーミを呼び寄せるようにトランブレに指示することによって、アデイエミもトランブレも失脚させることができる。買収の件も付け加えることで決定打となる。
シスター・アグネスが協力的になったのは、教皇がローレンスを留まらせた思惑に気づいたからだ。チェスでも8手先まで読む教皇はローレンスがここまで動くことも読んでいたのだ。だから彼を引き留める必要があった。
選挙を前にベリーニと話したローレンスは自分が選出されることを望むようになっていく。そして選挙時、迷った挙句に自分の名前を記入して投票してしまう。それは自己推薦や個人的な野心を排除し、聖霊の導きによる選挙においてそれは禁じられた行為でもあった。

その瞬間、イスラム原理主義者の自爆テロが発生して閉ざされていた窓周辺の壁の一部が崩落する。避難した先でテデスコは原点に立ち返り戦うべきだと主張する。しかし永きに渡り戦場に身を置いてきたベニテスは戦うべきは自分自身であると説く。保身に走る者達を否定し、今こそ教会を前進させるべきだと主張する。その言葉は枢機卿たちに響きベニテスは教皇へと選出されることとなる。
その後、オマリーから手術の件を聞かされたローレンスはベニテスを問い詰め彼の身体の秘密を知る。彼の染色体の面から女性(XX染色体)という言葉から以下が推測される。
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ホルモン異常による影響
胎児期に異常なホルモン環境(例:アンドロゲンの過剰分泌)があれば、XX染色体で子宮や卵巣が発達したまま、外部性器や二次性徴が男性化する可能性があります。たとえば、先天性副腎過形成(CAH)では、副腎が過剰なアンドロゲンを産生し、XX染色体の胎児が男性型の外見を発達させることがあります。ただし、CAHの場合、子宮や卵巣が存在することが一般的です。 (引用)
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静けさを取り戻したシスティーナ礼拝堂でローレンスは迷い込んだ1匹の亀を見つける。そっと拾い上げるとそのまま飼われていた庭園に戻す。
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西洋の錬金術や神秘主義では、は「完全な存在」や「両性の統合」を象徴することがあります。錬金術では両性具有(Hermaphrodite) はしばしば「完全なる人間」や「哲学者の石」のメタファーとして登場します。亀の甲羅は、自己完結的で完全な宇宙を表し、男女のエネルギーの融合を象徴します。 (引用)
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バチカンでは新教皇インノケンティウスの選出を祝い群衆が歓声を上げていた。

ある者は不貞を犯し、ある者は買収を試み、またそれに従う者、そして選挙の禁を犯す者…。候補の枢機卿たちが野心や保身を画策する中で唯一ベニテスだけは教義に則った行動を貫いてきた。亡き教皇が相応しいと判断した人物は後任となり、結果的に彼の読み通りとなった。
しかしその教皇を以ってしても及ばなかった不確定な出来事が2つあった。ひとつは自爆テロ…それはローレンスが自分を投票しようとしたとき、まるで天罰かのようなタイミングで起こった。そしてその出来事があったことでベニテスの説教は説得力を持ち、選ばれる決定打となった。
もうひとつ、ベニテスは教皇と話し合って手術を決めたというが、教皇は次期教皇に据えるためには手術が必要だと考えていた。費用の全てが教皇の口座から捻出されていたのはそのためだった。しかし直前になってキャンセルされた。ベニテスの決断は“神との対話”によって導き出された答えに従ったからだ…


