Firefox 155でAI関連を11項目すべてブロックしても、テレメトリは14回POSTしていました。広告用の通信も止まっていません
ブラウザの設定でAI機能を全部オフにして、それで安心していませんか。自分はChromeで似たことをやって、あとから「オフにしたのは表に見えている機能だけだった」と気づいたことがあります。
Firefox 155で、同じことを実際のパケットで確認した検証記事が公開されました。結論から書きます。AI機能のブロックは効いていましたが、テレメトリと広告用の通信は止まっていませんでした。
この記事では、その検証で何が止まって何が止まらなかったのかを整理して、自分のFirefoxで同じ状態になっていないかを確かめる場所を書きます。
この記事でわかること
Firefox 155のAIコントロールで実際にブロックされる範囲
ブロック済みプロファイルでも流れ続けていた通信先
Firefox 148のときから何が変わって、何が変わらなかったか
自分のFirefoxで確認する3か所(Wiresharkは要りません)
検証のやり方
検証者はFirefox 155.0のまっさらなプロファイルを2つ用意して、片方だけAI関連の設定を全部「blocked」にしています。通信の中身はWireshark 4.2.2でキャプチャして、`SSLKEYLOGFILE` 環境変数を使ってTLSを復号しています。つまり「どこに繋がったか」だけでなく「何を送ったか」まで開けている状態です。
ブロック側で設定されたのは、以下の11項目です。
browser.ai.control.default = "blocked"
browser.ai.control.linkPreviewKeyPoints = "blocked"
browser.ai.control.pdfjsAltText = "blocked"
browser.ai.control.sidebarChatbot = "blocked"
browser.ai.control.smartTabGroups = "blocked"
browser.ai.control.smartWindow = "blocked"
browser.ai.control.translations = "blocked"
extensions.ml.enabled = false
browser.ml.chat.enabled = false
browser.ml.chat.page = false
browser.ml.linkPreview.enabled = false設定画面のAIコントロールにあるマスタースイッチを入れると、だいたいこのあたりがまとめて切り替わります。個別に見たい人はabout:configで `browser.ai` と打つと並びます。
止まらなかったもの
ここが本題です。アイドル状態、つまりこちらが何も操作していない時間帯でも、ブロック済みのプロファイルから以下が出ていました。
`incoming.telemetry.mozilla.org` へのPOSTが14回
`ads.mozilla.org` のプリフライト
`ads-img.mozilla.org` へのTLSハンドシェイクが6回
`temuaffiliateprogram.pxf.io`(アフィリエイト系のトラッカー)
MerinoのAPIエンドポイント
再起動直後も、120秒以内に9回POSTが飛んでいます。復号して中身を再構成できたPOSTのペイロードは37件。
そのテレメトリのpingの中身に、こういう値が入っていました。
pocket.sponsored_stories_enabled = true
topsites.sponsored_enabled = trueAIを全部ブロックしたプロファイルが、「スポンサー記事は有効です」と報告し続けているわけです。ブロックしたつもりの側から見ると、ここはかなり気持ち悪いところだと思います。
148から155で変わったこと、変わらなかったこと
この検証者は同じことをFirefox 148でもやっていて、そのときの記事がMozilla社内で「hit piece(叩き記事)」と評されたそうです。それを受けての半年後の再テストという経緯があります。
変わったのは、まずブロックの対象範囲です。148のときは9項目でしたが、155ではSmart Windowと `extensions.ml` が加わって11項目になっています。範囲は素直に広がっています。
起動直後の通信も減りました。3月の時点ではまっさらな起動で25のTLSホストと76件のDNSクエリが出ていたのが、155では14ホスト・70クエリになっています。
変わらなかったのがテレメトリの挙動です。**AIコントロールは「blocked」という状態を理解していません。**というより、AIコントロールとテレメトリはそもそも別の系統で、片方を止めてももう片方には何の影響もない、というのが実態です。
もうひとつ引っかかるのは、初回のオンボーディングの文言です。「クリックを覗き見する企業からあなたを守る」という趣旨の説明が出ますが、そのフローの中にAI関連のコントロールの話は一切出てきません。設定はあるのに、案内はされない。だから存在に気づかない人がほとんどです。
ちなみにこの検証記事によると、AI機能を全部無効にしているユーザーは1%、個別に無効化しているのが3%だそうです。残りの96%は、そもそもこのスイッチに触っていません。
自分のFirefoxで確認する3か所
パケットキャプチャまでやる必要はありません。3か所開けば、自分がどっち側にいるかはわかります。
1. about:config
アドレスバーに `about:config` と入力して、警告画面で続行を選びます。検索欄に `browser.ai` と入れると、上に挙げたプリファレンスが並びます。値が `blocked` になっていなければ、その機能は生きています。
`extensions.ml` と `browser.ml` も同じように検索して確認しておくといいです。ここが `true` のままだと、モデルの読み込み側は動く余地が残ります。
2. about:telemetry
同じくアドレスバーに `about:telemetry` を入れます。ここで「送信済みping(Archived ping data)」を開くと、自分のブラウザが実際に何を送ったかが読めます。
見るべきは `sponsored` を含むキーです。AIをブロックしていても、ここが `true` で報告されているなら、それはAIの設定とは無関係に有効になっているということです。
3. about:preferences#privacy
プライバシーとセキュリティの設定画面を開いて、スポンサー付きのおすすめ(新しいタブのスポンサーコンテンツ、スポンサー付きショートカット)と、テレメトリの送信に関するチェックを外します。**AIコントロールをいくら切ってもここは切れません。**逆に言うと、ここを切らないと通信は止まりません。
何を勘違いしていたか
自分が今回いちばん納得したのは、「AIをオフにする」と「データを送らない」が別々のスイッチだった、というだけの話だという点です。
Firefox側は嘘をついていません。AIコントロールは生成AI機能をブロックする機能で、そう説明されています。ただ、ユーザー側は「プライバシーのためにAIを切る」という動機で触るので、切った瞬間に全部止まったつもりになります。このズレが全部です。
Chromeが4GBのAIモデルを勝手に置いていた件のときも、構図は同じでした。何かをオフにしたときは、オフにしたのが機能なのか通信なのかを分けて見る。これだけ覚えておけば、次に同じ形の記事が出てきたときに慌てなくて済みます。
まとめ
Firefox 155のAIコントロールは11項目に拡大していて、生成AI機能のブロック自体は効いている
ただしブロック済みプロファイルでも、アイドル中に `incoming.telemetry.mozilla.org` へ14回POSTし、広告系ホストへの通信も続いていた
テレメトリのpingは `pocket.sponsored_stories_enabled = true` を報告していた
起動時の通信は148の25ホストから155で14ホストに減ったが、テレメトリの挙動は変わっていない
AIのオフとテレメトリのオフは別のスイッチ。about:config・about:telemetry・about:preferences#privacyの3か所を見る
次のアクションは、Firefoxを入れている人はabout:configで `browser.ai` を検索して、値が `blocked` かどうかを数えるところからです。11個揃っていない人のほうが多いはずです。
止めたつもりのものが止まっていない、という形の事故は、ブラウザよりもエージェント側のほうが被害が大きくなります。雑なプロンプト経由で実際に14社が侵入された事例と、Claude Code側で先に入れておく防衛設定をまとめています。
