信長、秀吉、家康が我が家の買い物カゴを見たら
スーパーの入口で、私は立ち止まった。
「本日、ポイント5倍デー」
この文字を見ると、なぜか心がざわつく。
別に、今日は特別な買い物の日ではないし、買うものは決めていた。
卵、牛乳、野菜、鶏もも肉。
以上
完璧な計画だった。……店に入るまでは
「5倍」という数字を見た瞬間、昨日まで普通だった商品が、急に魅力的に見えてくる。
「これもどうせ使うし、今買った方がお得だし」
そして私は、買い物リストにはなかった商品をカゴに入れる。
この瞬間、私の中で小さな戦いが始まっていた。
もし、あの三人が私の買い物カゴを見たら、何と言うだろう。
これは私の脳内妄想会議だ。
織田信長は、きっと眉をひそめる。
「必要のないものまで買うとは、心が弱い」
ごもっともである。
豊臣秀吉なら、
「人が欲しくなる仕組みを作った店側の勝ちですな」と笑うだろう。
悔しいが、これも正しい。
徳川家康は、黙ってカゴを見る。
そして一言。
「その5倍の誘惑こそが罠である。真の機(10倍デー)を待て」
……一番痛いところを突いてくる。
考えてみれば、今、私の中には三人いる。
信長のように「無駄は嫌だ」と思う自分。
秀吉のように「楽しそうならいいじゃない」と思う自分。
家康のように「少し考えよう」と思う自分。
そして、レジ前で最後に勝つのは誰か?
だいたい決まっている。
秀吉だ。
なぜなら、私は合理性だけでは生きていないから…
ちなみに今日、予定外に買ったもの。
いつもより、少しだけパッケージが金色だった高級な味噌。
家にはまだ普通の味噌がある。
でも……
ポイント5倍だった。
自分の中の秀吉を止めることの方が、天下統一より難しいと悟った日だった…。
※本作は歴史上の人物をモチーフにした創作です。会話や設定はフィクションであり、史実とは異なります。
