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ファンタジーのお約束設定の解説 part4『魔法使いについて』

 そして、そんな魔法を使う「魔法使い」達の中も魔法文学と同様に長い歴史を持ちますが、それがお助けや悪役といったサブキャラではなく冒険の勇者的な主人公としての役割も果たすようになったのは1968年から2001年まで続いた『ゲド戦記』が最初とされ、ここでは魔法使いがどう魔法を習得したかに焦点を当てて描いています。

https://assets.st-note.com/img/1735544102-kSerGvh48O7YbPnNBwtZli61.png 『ゲド戦記』の作者ルグウィン

 また、魔法使いは作品によってマジシャン、メイジ、メイガス、エンチャンター(エンチャントレス)、ソーサラー(ソーサレス)、ウォーロック、ウィッチ、ウィザードなど非常に多くの名前で呼ばれ、それぞれの作品でその用語の指す範囲や立場も大きく異なっているようですね。

 しかし、呼び方には何となくの大まかな使い分けもあり、「エンチャンター」はものの性能を高めたり低くしたり、形を変えたり、幻覚を見せたり、操ったりといった一時的か無制限に続く魔法を使うもので、昔の民話からよく見られる人を魅了するタイプの魔法使いもこのタイプであるといえ、「ソーサラー」は現実を変えられる魔法の実践者のことを意味し、具体的には超自然的なものを呼び足したりするもので多くの場合は悪役とされており、特に先述した「剣と魔法」と言う魔法世界で英雄が活躍する物語において最も主要な悪役となっているタイプです。

魔女を描いたマリー・スパルタリ・スティルマンの「メッサー・アンサルドの魅惑の庭(The Enchanted Garden of Messer Ansaldo)」
ラファエル前派のイーヴリン・ド・モーガンの「The Love Potion」

 一方で「ウィッチ(男性の場合はウォーロック)」は占い師、薬草師、毒殺者、誘惑者、超自然的存在の信者などの持つ古英語のwiccaと言う単語という言葉から派生した言葉で、wickedと同語源だったりなど悪い印象が強かったが現代では『ハリー・ポッター』などのようにそれ自体が善悪ではない存在として描かれる場合が多いですが、『オズの魔法使い』の頃にはまで悪い魔女にウィッチ、良い魔女には巫女のようなニュアンスのカナソーサレスと言う用語を使用するなどしていて、悪いイメージを避けています。

https://assets.st-note.com/img/1735544307-rY0kmGpIAJ4yZPMzC1hoaewd.png 映画『オズの魔法使い』の良い魔女

https://assets.st-note.com/img/1735544331-a65AlDpPrLt7gbXqKMJfu9oF.png 映画『『オズの魔法使い』の悪い魔女

 そして「ウィザード」は中世の騎士道ロマンスにおいて『ブリタニア列王記』の魔術師マーリンのような老人の賢い指導者・教育者的な存在として登場し、これは『指輪物語』のガンダルフや『ハリー・ポッター』のダンブルドアなどにも受け継がれたイメージで、中世ヨーロッパのストックキャラクターである「ぼんやり博士(Absent-minded professor)」のようにポンコツ的な側面も持っている場合もありますが、そのような喜劇的なウィザードが偉業を成し遂げるような結末もあります。

13世紀フランスの写本に描かれたマーリン

https://assets.st-note.com/img/1735544220-hIwyzdYB8Rt3jbC9f1KSmluQ.png 映画のアルバス・ダンブルドア

https://assets.st-note.com/img/1735544708-fC60bUohmHpdNt3uM1XewxvD.png 映画のガンダルフ

 また、RPGではその魔法使いがゲームプレイヤーにどんなルールが適応されるか、つまりどんな性質を持つかによって表すために神話や他の作品などに由来する名称を付ける場合が多く、ゲイリー・ガイギャックスとデイヴ・アーネソンによって作られた世界で最初のRPGで、その後の剣と魔法系のゲームやそれをもとにした小説などの始祖となった『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では魔法使いの名称は当初全てひっくるめて「マジック・ユーザー」であったが、後に「メイジ」となりさらに「ウィザード」に変更されます。

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 その後のD&Dではマーリンやガンダルフから影響を受けた学問的に魔法を学んだ「ウィザード/メイジ」と呼ばれる魔法使いの他にも魔法の才能を生まれながらに持っている魔法の祖先を持つものを「ソーサラー」、何らかの存在と契約して魔法を獲得したものを「ウォーロック」と呼び分けました。

 さらに、他にもD&Dではアンデッドに対して大きな効果を持つ神聖な魔法と戦闘を行える「クレリック(キリスト教の聖職者)と「パラディン(中世の高位の騎士)」、そして神聖ではないが自然由来の魔法を使う「ドルイド(古代西欧の聖職者)」、隠者・職人で戦闘とドルイド的な魔法を使う「レンジャー(指輪物語の野伏がモデル)」、魔法を学問から生み出すが芸術的なものと結びついている「バード(中世の吟遊詩人)」など魔法を使うことのできる職業が作られており、これらは実際の魔法使いや聖職者、文学などファンタジーの魔法使いの伝統の集大成の一つのように思えます。

聖職者
騎士
ドルイド
ベンジャミン・ウエストの描いた吟遊詩人

 また、魔法使いには白髪で長い髪や長い髭を持つ威厳ある老人という見た目のステレオタイプが存在し、これはマーリンなど伝承の魔法使いから受け継がれている特徴で、特に尖った帽子、ローブやコートを着ている場合が多いが、現代風の世界観では舞台のマジシャンと似たシルクハットに燕尾服、そしてケープなどを着ている場合も多いですよね。

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 ちなみに、特に尖った帽子は考古学上でも青銅器時代ヨーロッパにあった墳墓文化や骨壺墓地文化で「ゴールデン・ハット(https://en.wikipedia.org/wiki/Golden_hat)」と呼ばれる薄い金で作られた尖り帽子風のものが存在し、そこには暦に関する天文学的な装飾が施されていて、それこそ魔法使いのような古代の聖職者のものだった可能性が指摘されています。

Berlin Gold Hat (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cappello_d%27oro_di_berlino,_1000_ac_ca._01.jpg)
Nebra Sky Disc (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nebra_1a.jpg)

 魔法使いたちは多くの場合、透視や未来予知のための「水晶玉」や「ガラス玉」、そして「Wand」と呼ばれる魔法の杖を持っており、この杖はエジプトで厄除けに使われたBirth tuskのような豊穣の儀式で使われた古代の杖に由来し、ファンタジーにおける最古の例はホメロスの『オデュッセイア』で膨大な薬学の知識を持つアイオリア島のニンフ(仙女)のキルケが主人公のオデュッセウスを動物に変える状態変化魔法で使用した杖であり、多くの御伽噺が生み出された中世イタリアの民話では強力な妖精が杖を使っていたとか何とか。

イタリアの民話の話の出典(https://web-archive-org.translate.goog/web/20131016212139/http://www.endicott-studio.com/rdrm/rrItalianF.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=wapp)

ラファエル前派のジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「The Magic Circle」
ウォーターハウスの「オデュッセウスに杯を差し出すキルケ」

 そして、ご存知の通り現代のファンタジーでは当たり前に杖が使用され、『ハリー・ポッター』の物語の中では兄弟杖など物語のキーとなっていて、『指輪物語』ではガンダルフがサルマンの杖を奪って力を奪う場面があり、その二つでは魔法の制御のためには杖が不可欠でそれがないと操るのが非常に難しいという風な設定になっていますね。


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