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「頑張ってはいたよね」って言う上司、実はソ連の思想検査より非効率です

日本の人事評価制度は、査定ではなく辻褄合わせ選手権だった。目標設定シート、360度評価、期末面談。疲れた47歳課長と、時給9円の昇給に絶望する23歳新人が観測した、70年続く儀式の全貌


疲れ果てた47歳の課長・田村は、今日も部下に「低めに書け」と目標設定を指導する。23歳の新入社員・鈴木は、昇給1,500円の査定通知を見て、時給9円に換算して絶望した。二人が観測する「同じ人事評価」の茶番。その正体は、70年前にドラッカーが夢見た制度の、完全な変質だった。

プロローグ:1955年、ピーター・ドラッカーが仕掛けた地雷

1955年、経営学の父ピーター・ドラッカーが『マネジメントの実践』の中で提唱した概念がある。
「目標による管理(MBO)」というやつだ。
本人の意図はシンプルで美しかった。

組織の目標と個人の目標をすり合わせ、自律的に働ける環境を作ろう、というものだった。

70年後の令和日本で、このアイデアが辿った末路をご覧いただきたい。

・期初に、達成可能な目標を出させる。
・年度末に、その達成度を自己申告させる。
・上司が主観で評価する。
 つまり、好き嫌いも査定要素である。
・辻褄合わせが始まる。
 昇格人数や降格人数や原資などの数字は、
 事前に決まっている。
・面談で、「頑張ってはいたよね」と言われて終わる。

ドラッカー先生が墓の中で回転しているのが見える。回転数、毎分3,000rpmくらい。
もう発電できる。日本の人事評価制度は、いよいよ再生可能エネルギーの一種になりつつある。

(注0)MBO(エム・ビー・オー)とは
Management by Objectivesの略。日本語では目標管理制度。
ピーター・ドラッカーが1955年に提唱した経営手法で、本来は「個人が自律的に目標を設定し、組織目標と連動させる」という理想的なコンセプト。
日本企業に輸入されて70年、原型は消失し、査定の言い訳装置として第二の人生を送っている。

ドラッカーが墓の中で回転して発電している風刺画

第1章:期初4月、目標設定シートという名の予言書

課長・田村(47歳)の視点

今年もこの季節が来た。
期初の目標設定シートを書く季節だ。
俺はもう15回目だ。慣れたもんだ。

目標設定シートには「達成可能で、かつチャレンジングな目標」を書けと書いてある。
日本語として矛盾している。
可能でチャレンジって何だよ。
ぬるくて熱いラーメンを注文しろって言っているのと同じだ。

でも、書き方のコツはある。
低めに書く。
低めに書いて、期末に「頑張って達成しました」って言う。これが正解だ。
高めに書くと、達成できなくて査定が下がる。
組織って、正直者が損する構造になってる。

俺は今年も、去年の実績プラス3パーセントを目標に書いた。
3パーセント。
この数字、俺の魂の防衛ラインだ。

新入社員・鈴木(23歳)の視点

初めての目標設定シートを書きました。
新卒研修で教わった通り、SMART(スマート)の法則(注1)に則って、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限付き)の全項目を満たす完璧な目標を設定しました。

提出したら、課長さんに呼ばれました。

「鈴木さん、目標、ちょっと高すぎない?」

え? 達成可能な範囲で最大限に設定したんですが?

「いや、達成可能なのはわかるんだけど、達成しちゃうと来年もっと上げなきゃいけないから、今年は低めにしとこう」

はい?

日本企業では、SMART目標のAchievable(達成可能)の解釈が独自進化を遂げているようです。
「達成可能」ではなく、「絶対達成する上に、来年のハードルを上げないよう程よく手を抜ける」という意味らしいです。
英語辞典5冊確認しましたが、そんな意味は載っていませんでした。
オックスフォード英語辞典、間違ってます。訂正してください。

(注1)SMARTの法則とは

目標設定のフレームワーク。Specific(具体的)/Measurable(測定可能)/Achievable(達成可能)/Relevant(関連性)/Time-bound(期限付き)の頭文字。
1981年に経営コンサルタントのジョージ・ドランが提唱。日本企業では「AchievableのAを、Absolutely-guaranteed-to-be-lower-than-last-year(絶対に去年より低いことが保証されている)のAに読み替える」という高度な翻訳技術が発達している。


第2章:9月、中間面談という自己評価水増し合戦

課長・田村の視点

9月の中間面談。俺は部下5人と、それぞれ30分ずつ面談する係だ。

「田村さん、私、今期の目標、150パーセント達成の見込みです!」

若手Aが自信満々に言う。ちなみにこいつの目標、俺が「低めに書いとけ」と指導したやつだ。150パーセント達成、当たり前だろ。

「田村さん、私は課題を抱えておりまして」

若手Bが暗い顔で言う。こいつは正直に高い目標を書いたやつだ。俺は心の中で拝む。ごめん、俺の指導不足だ。来年は君も、姑息な生存戦略を身につけてくれ。

面談後、俺は部長に呼ばれる。中間の部内評価の報告だ。

「田村くん、君の部下、全員150パーセント達成って書いてあるけど、これ本当?」

嘘です。全員が全員、期初にわざと低く設定しました。でも、そんなこと言えるわけがない。

「はい、皆、優秀ですので」

俺は真顔で嘘をつく。俺の顔の筋肉、この15年で「嘘をつくときに動かない技術」を完全にマスターした。もはや能面。人間国宝、俺で2人目だ(1人目は第1話の相槌で認定済み)。

新入社員・鈴木の視点

中間面談を受けました。

課長さんに「今期の進捗どう?」と聞かれたので、正直に「目標の40パーセントくらいです」と答えたら、課長さんは頭を抱えて、こう言いました。

「鈴木さん、それ、シートには80パーセントって書いといて」

はい?

「40パーセントって書くと、期末に急に90パーセントに上がったとき、絶対サボってたって思われる。80パーセントから100パーセントなら、順調に進捗した扱いになる。40からの90は不自然すぎる」

日本企業の人事評価、査定ではなく辻褄合わせ選手権だったんですね。私、参加種目を間違えました。

私は経済学の授業で「情報の非対称性」を習いましたが、これは違います。
情報の非対称性は「相手が知らないことを利用する」ですが、これは「お互い嘘だと知りながら、嘘のやり取りをする」。
定義から作り直す必要があります。
教科書の書き直しが必要です。

(あとで気づいたのですが、80パーセントって書いても、期末に100パーセントいかない可能性があります。そのときはどうするんですか、と課長さんに聞いたら、「そのときはまた辻褄を合わせる」と遠い目で言われました。エンドレスです。無限に続く辻褄地獄です)

第3章:11月、360度評価という告げ口装置

課長・田村の視点

11月、360度評価の季節が来た。

上司・同僚・部下から匿名で評価をもらう制度だ。導入した人事部は「多面的なフィードバックで成長を促進」とか言っていた。

現場では、単なる告げ口大会として運用されている。

俺のところにも、匿名の同僚評価が来る。
「田村さんは部下に甘い」、「田村さんは飲み会で説教が長い」、「田村さんは資料の作り方が古い」。

匿名なのに、誰が書いたか3秒でわかる。
人間の文体、指紋みたいなもんだ。
「甘い」って書いたのは佐藤だ。あいつ、去年俺が査定で甘くつけてやったのに、この裏切り。
「説教が長い」は山田だ。1回だけ、1回だけだ、去年の忘年会で説教したの。それを永遠に持ち出す気か。
「資料が古い」は、たぶん、若手全員だ。ごめん、それは俺が悪い。

360度評価、俺の心には365日刺さっている。日数、上回っている。

でも、考えてみると、俺も同じ穴の狢だ。

面談の成績をつけるとき、俺の脳内にはちゃんと「好き嫌い計算機」が内蔵されている。
飲み会で俺の話に笑ってくれる若手は、無意識に0.5段階甘くなる。
逆に、俺の説教の最中に時計を見たやつは、0.5段階辛くなる。
シートの評価項目にはどこにも「愛嬌」って項目はないのに、俺の手は勝手に愛嬌分を加減している。

人事評価の「主観」ってやつは、こういう微量の好き嫌いの堆積でできている。
誰も悪気はない。悪気がないから、誰も止められない。

新入社員・鈴木の視点

360度評価を私も書きました。

匿名だと聞いたので、正直に書いていいのかと思って、部長について「話が長い」、「昔話が多い」、「決断力がない」、「部下の話を聞かない」と書きました。事実ベースです。

1週間後、部長に呼ばれました。

「鈴木さん、君、俺の悪口書いたでしょ」

なぜバレたんですか、匿名のはずでは。

「うち、新人が1人しかいないから。新人が書いた項目は全部君だってわかる」

設計ミスでは?

360度評価、匿名性が担保されるためには、最低でも各カテゴリ4人以上の評価者が必要というのが統計学の基本ですが、この会社では「新人=鈴木1人」で運用されています。統計学の教授、今すぐ来てください。修士論文のテーマが目の前にあります。

(余談:部長は「悪気はないんだよね?」と念押ししてきました。悪気しかありませんでした。でも「もちろん建設的なフィードバックのつもりです」と天使スマイルで返しておきました。人事評価は演技力の総合格闘技です)

(注2)360度評価とは

上司だけでなく、同僚・部下・関係部署からも匿名で評価を集める人事制度。
1990年代にアメリカから輸入された。本来は多面的で公平な評価を目的としたが、日本企業では「匿名を装った告げ口箱」として運用されがち。
書いた本人が特定される確率は、企業規模が小さいほど100パーセントに近づく。

第4章:3月、期末面談で「頑張ってはいたよね」

課長・田村の視点

3月、期末面談。俺と部長の一対一だ。

会議室で向かい合う。部長は評価シートを手に持っている。

「田村くん、今期、頑張ってはいたよね」

出た。「頑張ってはいたよね」。人事評価界の五大呪文の1つだ。他の4つは「期待していたんだけど」、「もう一歩踏み込めたら」、「来期に期待している」、「総合的に判断すると」。この5つで、日本の全査定面談の8割は完成する。

「はい、ありがとうございます」

俺は頭を下げる。「頑張ってはいたよね」は、褒めているようで、実は「頑張ってたけど結果は出てないよね」の婉曲表現だ。日本語のプロトコル、複雑すぎる。外国人にこの機微を説明できる日本人、100人に1人だと思う。

「ただね、田村くん」

「ただね」。来た。この「ただね」の後に、査定の本音が続く。

「今期、部の売上目標に対して、田村くんの課は3パーセントプラスだったよね。悪くない、悪くないんだけど、他の課が5パーセントプラスだったから、相対評価で言うと、うーん」

相対評価。俺、絶対評価で3パーセント達成したのに、他の課がそれ以上やったから、俺の評価は下がるらしい。

これ、資本主義じゃなくて格付けゲームだ。俺の頑張りは、他人の頑張り次第で減価する。仮想通貨か。

そして、俺は知っている。部長の頭の中身を。

部長の評価シートには、俺たち課長の名前が縦に並んでいて、横にSからDまでの評価欄がある。でも、あの表が作られる前に、部長の心の中にはもう答えがある。「気に入ってる順」だ。

隣の課の高橋課長は、部長とゴルフ仲間だ。高橋の課の5パーセントは「さすが高橋」になる。俺の課の3パーセントは「うーん」になる。同じ数字でも、行き先が違う。

部長に悪気はない。人間、好きな人間の失敗は「惜しかったね」に変換され、嫌いな人間の成功は「たまたまだろ」に変換される。
脳の標準装備だ。人事制度は、その標準装備に全権を委任している。

新入社員・鈴木の視点

初めての期末面談を受けました。

課長さんに「鈴木さん、今期、頑張ってはいたよね」と言われた瞬間、私は察しました。あ、これ、褒められていない。

日本語ネイティブとして23年生きてきた勘が告げています。「頑張ってはいた」の「」は、限定の助詞です。「頑張ってはいた」は「頑張ってはいたけれど(成果はなかった)」の省略形です。国語文法の教科書、41ページ。ちゃんと勉強しておいてよかったです。

続いて課長さんが言いました。「ただね、鈴木さん」

来ました、「ただね」の刑です。日本の期末面談、フォーマットが全国統一されています。文部科学省、いつの間に指導要領に組み込んだのですか。

「鈴木さんは目標達成率100パーセントだったんだけど、他の新人と比べると、うーん、ちょっと積極性がね」

私、この会社に新人1人しかいませんが?

「他社の新人と比べて」

他社の新人と比べる相対評価。もはや社内査定の枠を超えています。日本経済の縮図みたいな面談です。

(あと、面談の後で気づいたのですが、課長さんは私の資料作りのミスを3回見逃してくれていました。一方で、隣の係の新人Aさんは、同じミスで部長に呼び出されていました。Aさんは入社式の自己紹介で、部長の出身大学の悪口を言った人です。たぶん関係あります。人事評価の主観とは、つまりそういうことです。好き嫌いが、給与の一部になります)

(正直、私の目標は課長さんに「低めに書け」と指示されて設定したものです。それを100パーセント達成して「積極性がない」と言われる。この構造、罠すぎませんか? 罠にハマった上に、罠を仕掛けた本人から罠にハマったことを咎められる。上っても上っても元の場所に戻ってくる、無限階段の中で査定されているような気分です。)

第5章:4月、査定結果通知という名の茶番

課長・田村の視点

4月、査定結果が通知された。

俺の昇給、月額2,000円。ボーナス、昨年比マイナス0.2ヶ月。

2,000円。豚こま生姜焼き4回分。

いや、生姜焼きの原価で言えば、豚こま100g150円、生姜1片50円、玉ねぎ半分50円、調味料50円、計300円。2,000円で6.6回分。1週間ちょっと、生姜焼きが増える。

いい。それでいい。生姜焼きが週1回増えるだけで、俺の人生は少し豊かになる。俺は査定を、食卓の生姜焼き回数に換算することで、精神の平衡を保っている。

会社全体の業績は前年比5パーセント増だった。役員報酬は据え置き。俺の昇給、月額2,000円。組織における富の再分配、完全に破綻している。

でも、まぁ、いいんだ。俺には家族がいる。子どもが中学校に入学したばかりだ。制服代8万円。査定分の昇給、40ヶ月分。3年3ヶ月かけて回収予定だ。制服が制服の役割を終える頃、回収完了。

新入社員・鈴木の視点

初めての査定結果が来ました。

昇給、月額1,500円。

時給に換算すると9円です。

私、去年から転職サイトに登録していますが、今週改めて確認したら、私と同じ経験年数・スキルの人材の市場価値は、うちの会社の年収プラス80万円でした。80万円。ボーナス、査定関係なく上乗せ。

査定面談って何だったんですか?

3月に「頑張ってはいたよね、ただね、積極性が」と言われた30分間、あれは何の時間だったんですか? 私の労働市場価値は、あの30分の外側で決まっていました。
あの面談は、私の給与を決めていたのではなく、私を1年間ここに縛り付けるための儀式でした。

課長さんも、たぶん、私と同じ気持ちなんだと思います。査定通知の日、課長さんは午後、席を外していました。あとで聞いたら、「豚こまの特売、確認しに行っていた」と言われました。

私は転職サイトの求人詳細を、丁寧に確認しました。「豚こまの特売」と「転職サイト」、同じ「現実逃避」の別バージョンです。私たちは、それぞれのやり方で、査定通知の絶望を消化していました。

(注3)相対評価と絶対評価の違い

絶対評価は「目標に対する達成度」で評価する方式。絶対評価は個人の努力が直接反映される。
相対評価は「他者との比較」で評価する方式。
全員が目標を達成しても、必ず一定割合が低評価になる。日本企業の多くは表向き絶対評価と謳いながら、実際は相対評価で最終調整するハイブリッド運用(つまり査定される側にとっては何をどう頑張っても運ゲー)。

第6章:シンプル・サボタージュ、答え合わせ 第2弾

第1話で、1944年のCIA妨害マニュアルと令和の会議室の完全一致を確認した。

第2話でも、答え合わせを行う。今回は人事評価編だ。

CIAの妨害指示(1944年)と、令和の日本企業の人事評価(2026年)の対応表がこちらである。

・従業員のモチベーションを、細かい規則と煩雑な手続きで削ぎ落とせ → 目標設定シート20項目、SMART準拠、上長承認3段階

・優秀な従業員を昇進させず、無能を昇進させよ → 評論家気質の役員陣、批評だけで報酬発生

・従業員同士に不信感を植え付けよ → 360度評価、書いた本人特定率100パーセント

・優秀な仕事を「もっと良くなる余地がある」と評価せよ → 「頑張ってはいたよね、ただね」

・成果と報酬を切り離せ → 5パーセント業績アップに対して昇給2,000円

・成果ではなく指揮官への忠誠心で人事を決めよ → 好き嫌いも査定要素。ゴルフ仲間はS評価


答え合わせは、完璧である。

第1話と同じ結論に達する。CIAは1944年に、80年後の日本企業のマニュアルを予言していた。
ノストラダムスより的中率が高い。人事コンサルの皆様、そろそろOSSに顧問料を払ったほうがいい。

第7章:じゃあ、どうすんの問題 第2弾

課長・田村の視点

第1話で、俺は「小さな抵抗運動」を掲げた。第2話でも、その旗は降ろさない。

俺が課長として、部下の評価面談でできることは、以下だ。

・部下に「低めに書け」と言わない。正直に書かせる。
・360度評価で、俺が匿名の悪口を書かれたら、「誰が書いた」を推理して個別攻撃しない。
「頑張ってはいたよね」を使わない。褒めるときは褒める、指摘するときは指摘する。
・俺の「好き嫌い計算機」の存在を自覚する。飲み会で笑ってくれる若手の評価をつけるとき、意識的に0.5段階引く。
・査定が納得いかない部下がいたら、部長に食ってかかる。

できているか、って? できていないよ。
今日も鈴木さんに「80パーセントって書いとけ」って言ったし、360度評価で佐藤の悪口見て、あいつを飲み会に誘わない報復をした。人間の器、小さい。

でも、努力はしている。正確に言うと、努力を始めたのは今年の3月だ。鈴木さんの期末面談で、俺は無意識に「頑張ってはいたよね」と口にしていた。
言った直後に気づいた。あ、言ってしまっている、俺。帰りの電車で、窓に映る自分の顔が、部長と完全に一致して見えた。
あの夜から、俺は1回も言っていない。封印期間、まだ半年。卵から孵ったばかりの抵抗運動だ。それでも、孵化しないよりはマシだ。

来年は通年0回を目指す。……目標、低めに設定したな、俺。

新入社員・鈴木の視点

第2話の私の結論も、シンプルです。

転職活動を、加速させます。

具体的には、今週末までに履歴書を完成させ、来週から3社に応募します。目標は、6ヶ月以内に転職。今の会社の年収プラス80万円が最低ラインです。

でも、辞めるまでの間に、田村課長からもう1つ学びました。

「頑張ってはいたよね」を使わない上司は、絶滅危惧種の中の絶滅危惧種です。私が転職先で誰かの上司になったとき、絶対に使いません。「ただね」もセットで封印します。日本語から永久追放。

私が10年後、誰かの目標設定面談を担当したら、こう言います。「あなたの目標、達成できたら達成、できなかったら次に活かす。それだけです。低めに書く必要ないし、辻褄合わせも要りません」。

これが、令和の茶番劇への、私からのカーテンコール拒否・第2弾です。

(そして今週末に履歴書を更新します。写真は撮り直します。前回の写真は、笑顔が営業スマイルすぎて、面接官に警戒されそうな気がしたので)

エピローグ:豚こまと、転職と、来期の目標設定

金曜日、査定通知の翌日。田村課長は帰り道、スーパーに寄った。

豚こま、100g98円の特売。昇給2,000円分で、20回分の生姜焼きが確保できた。田村は少し笑った。査定は残念だったけど、豚こまの特売は裏切らない。豚こまは、俺の味方だ。

同じ時刻、鈴木は自宅で履歴書を開いていた。前職欄、志望動機欄、自己PR欄。書きながら思う。自己PRって、査定シートより正直に書ける。転職市場では、辻褄合わせがいらない。だって、嘘つくと後でバレるから。日本企業の査定と正反対だ。

田村は、明日から始まる来期のために、また目標設定シートを開くだろう。低めに書く。3パーセントプラス。魂の防衛ライン。

鈴木は、来週から3社に応募するだろう。今の年収プラス80万円。市場価値の防衛ライン。

2人は、同じ会社の、同じ査定制度の中で、それぞれの防衛ラインを守っている。

制度を殺すのは、悪意ある人事部ではない。それを70年間、律儀に運用し続ける、真面目な私たちである。

とはいえ、明日は土曜だ。田村は生姜焼きを焼き、鈴木は履歴書を仕上げる。それぞれのやり方で、令和の人事評価制度に、静かに異議を申し立てながら。


(第2話 了)


〜 開運シェルパ / 運命デザインラボ 〜

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関連リンク

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