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「毎日 毎日」に、嫌気がさしたとき。

たいやきくんが教えてくれる、人間のクセ。

まいにち まいにち ぼくらは てっぱんの うえで やかれて いやになっちゃうよ

(作詞:高田ひろお/歌:子門真人)


子どものころ、この歌が好きだった。

なぜ好きだったのか、当時はうまく言えなかった。

リズムが軽くて、たいやきというキャラクターが面白くて。それで終わりだと思っていた。

大人になって、もう一度聴いた。

……あれ。

これは、笑っていい歌なのだろうか。


たいやきくんが、鉄板を嫌いになった。

毎日、同じ場所で焼かれる。

毎日、同じ作業が続く。

毎日、誰かに食べられる。

それが嫌になって、たいやきくんは海へ飛び込む。

歌の冒頭を聴くと、多くの人が「ああ、わかる」と感じる。

不思議なことだと思う。

私たちは、たいやきではない。

鉄板の上で焼かれているわけでもない。

それなのに、「わかる」と感じる。

その「わかる」の中には、何があるのだろう。

少し立ち止まって、考えてみた。

「嫌」という感情は、いつ生まれるのか。

たいやきくんは、最初から鉄板を嫌っていたわけではないと思う。

歌の中では、「毎日 毎日」という言葉が繰り返される。

この繰り返しが、ひとつの鍵なのかもしれない。

人間には、慣れるというクセがある。

はじめての給料日は嬉しかった。

はじめての一人暮らしは新鮮だった。

はじめての仕事は、少し緊張した。

それが、毎日になる。

やがて、当たり前になる。

当たり前になったものは、いつしか、そのありがたさを感じにくくなる。

そして、変化のない日常が、別の姿に見えてくる。

「安定している」ではなく、「閉じ込められている」。

「続いている」ではなく、「終わらない」。

たいやきくんにとって、鉄板の上で過ごす毎日は、もしかすると、そんなふうに見え始めたのではないだろうか。

最初から嫌だったのではない。

毎日が積み重なるうちに、嫌になっていった。

そう考えると、たいやきくんの氣持ちが、少し近くなる。

なぜ、リスクを考えなかったのか。

海に飛び込んだたいやきくんは、しばらく自由を楽しむ。

しかし、お腹が空く。

餌に飛びつく。

そして、釣られてしまう。

ここで、少し考えてみたくなる。

たいやきくんは、なぜ海の危険を考えなかったのだろう。

もちろん、たいやきくんに、海で生きていくための知識があったとは思えない。

しかし、それだけではない氣もする。

海に飛び込んだ直後の「自由に泳ぐ氣持ちよさ」は、今この瞬間にある。

泳げる。

動ける。

鉄板の上から離れられた。

その喜びは、確かなものだった。

一方で、「いつか危険に遭うかもしれない」という想像は、まだ遠い。

起きるかどうかもわからない。

遠くにある不確かなリスクより、目の前にある確かな喜びのほうが、大きく感じられる。

人間にも、そういうところがある。

衝動買いをするとき。

ダイエット中に、ケーキを食べてしまうとき。

「あとで勉強しよう」と言い続けるとき。

その瞬間の氣持ちよさや楽さが、先のことを見えにくくする。

たいやきくんは、深く考えずに海へ飛び込んだ。

でも、それは、私たちが日々繰り返している選択と、どこか似ているのかもしれない。

最後に彼が言った言葉。

釣り上げられたたいやきくんは、食べられる直前にこう言う。

「やっぱり ぼくは タイヤキさ」

この一言が、ずっと引っかかっていた。

これは、諦めの言葉なのだろうか。

それとも、何かを受け入れた言葉なのだろうか。

たいやきくんは、自由を夢見た。

鉄板を飛び出し、海を泳いだ。

けれど最後には、たいやきとして食べられる現実に戻ってくる。

「自由を夢見た自分」と、「たいやきとして食べられるという現実」。

その二つは、簡単には重ならない。

人間も、矛盾を抱えることがある。

「ここから離れたい」と思いながら、離れた先で、元の場所を懐かしく思う。

「こんな自分は嫌だ」と思いながら、その自分を手放すこともできない。

そんなとき、私たちは、自分の中で何かの意味を変えようとする。

「そもそも、自分はこういうものだったんだ」

「あの選択も、無駄じゃなかった」

「これで良かったんだ」

それは、現実を無理に肯定することではない。

痛みや矛盾を抱えたまま、自分を保とうとする心の働きなのかもしれない。

たいやきくんの最後の一言は、失敗の物語ではない。

自由を求めたことも、海へ飛び込んだことも、最後に自分がたいやきであると語ったことも。

そのすべてを抱えたまま、自分を見失わないための一言。

私には、そんなふうに聞こえる。

もう一度、日常へ戻る。

この歌を聴いて「わかる」と感じるのは、私たちの中にも、たいやきくんと似た動きがあるからかもしれない。

毎日が当たり前になる。

今の苦しさから逃げ出したくなる。

先のリスクより、今の氣持ちよさを選ぶ。

矛盾を前にして、どこかで折り合いをつける。

たいやきくんは、鉄板を飛び出した。

海を泳いだ。

そして、自分の選択の先で、最後の言葉を残した。

これは、弱さの話ではないと思う。

逃げ出したくなることもある。

先のことを考えられないこともある。

自分の矛盾に、あとから氣づくこともある。

それでも、そのときの自分なりに選び、動き、経験する。

その先で、自分が何者なのかを、もう一度考える。

私たちも、同じように、どこかで自分の外へ飛び出してみる。

そして、外へ出たからこそ、自分の内側にあるものを知るのかもしれない。

今日の小さな実験。

もし今、あなたの中に、

「まいにち まいにち いやになっちゃうよ」

という感覚があるなら、少しだけ立ち止まってみる。

その「嫌」は、いつから始まったのか。

最初は、どんな氣持ちで始めたのか。

いつの間にか、当たり前になっていたものはないか。

すぐに答えを出さなくてもいい。

正解を探さなくていい。

ただ、観察してみる。

読者のみなさんへの問い。

あなたの「やっぱり ぼくは 〇〇さ」は、どんな言葉になりますか?



※歌詞は作詞:高田ひろお、歌:子門真人「およげ!たいやきくん」から一部のみ引用。引用は必要最小限にとどめています。


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