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愛を試す女は、まだ愛を待っている――貢がせることでしか自分を守れなかった、美しくも悲しいメデューサのような貴女へ


1. 美しい女は、男が崩れていく姿を知っている

ある美しい女がいる。

男に困らない。
食事に誘われ、ホテルに誘われ、贈り物をされる。
若さも、美貌も、会話の華やかさも持っている。

彼女は、自分が男にどう見られているかをよく知っている。

そして、男が自分の前でどう変わっていくのかも知っている。

近づけば近づくほど、男は少しずつ石になっていく。
それはまるで、現代のメデューサのようだった。

男たちは最初、余裕のある顔で近づいてくる。
紳士のふりをする。
理解者のふりをする。
自分だけは他の男とは違うという顔をする。

「君のことをちゃんと見ている」
「身体だけじゃない」
「俺は君を大切にしたい」

そういう言葉を、彼女は何度も聞いてきた。

だから、もう簡単には信じない。

彼女は微笑む。
少し甘える。
少し距離を取る。
少し期待させる。

そして、男がどう変わっていくかを見る。

最初は余裕だった男が、少しずつ返信を待つようになる。
予定を合わせるようになる。
贈り物を考えるようになる。
彼女の機嫌ひとつで、嬉しくなったり、不安になったりするようになる。

男はまだ冷静なつもりでいる。

だが、彼女から見れば違う。

もう自分に抗えなくなっている。
主導権はこちらに移っている。

そして私もまた、こういう女に惹かれてしまう男の一人だった。

2. 貢がせることは、承認であり防衛である

その姿を見ると、彼女の中の承認欲求が満たされる。

「ああ、やっぱり私は価値がある」
「この男も、結局は私を欲しがる」
「この男も、私を失いたくないと思っている」

それは悪意だけではない。
もっと複雑なものだ。

女として求められる快感。
美貌が通用する手応え。
男の理性を崩していく優越感。
自分の存在が、男の生活や感情を支配していく感覚。

そして、そこには現実的な利益もある。

食事

バッグ
美容代
ラグジュアリーホテル
高価なアクセサリー
自分では買うのをためらうもの

男の欲望は、彼女にとって実利に変わる。

承認欲求と実利。
この二つが同時に満たされると、人はその関係から簡単には降りられなくなる。

男に貢がせることは、単なる金銭獲得ではない。
それは、

自分の女としての価値を確認する儀式であり、
男が自分から離れないようにする拘束具であり、
過去に傷つけられた自分を守る防衛本能でもある。

3. 愛した男に選ばれなかった過去

彼女には、過去がある。

若いころ、彼女はある男に本気で愛を注いだ。
相手の男には家庭があった。
それでも彼女は、その男を信じた。

だが、最後に男は彼女を選ばなかった。

男は妻のもとへ戻った。
彼女ではなく、元の場所へ帰った。

愛した結果、失った。
信じた結果、傷ついた。
尽くした結果、社会的にも罰を受けた。

これは、女の中に深い傷を残す。

「男の愛は信用できない」
「言葉は裏切る」
「身体を求める男は、最後には逃げる」
「男は都合が悪くなると、自分の安全な場所へ戻る」

だったら、先に代償を払わせればいい。
だったら、先に取っておけばいい。
だったら、心を渡す前に、男の本気を試せばいい。

そうして彼女は、男に貢がせる女になる。

4. 金を出した男ほど、逃げられなくなる

男は金を出すと、その女の価値を高く見積もる。

「これだけ使ったのだから、彼女には価値があるはずだ」
「ここで引いたら、今までの金が無駄になる」
「もう少し出せば、もっと近づけるかもしれない」

つまり、貢がせる女は、男の執着を金で固定する。

男は女を買っているつもりかもしれない。
しかし実際には、自分の執着を買い増している。

金を出すたびに、女への執着が深くなる。
時間を使うたびに、損切りできなくなる。
期待を持つたびに、現実を直視できなくなる。

女からすれば、それは都合がいい。

金を出さない男は、すぐ逃げる。
口だけの男は、すぐ消える。
軽い気持ちの男は、少し不機嫌にすれば離れていく。

だが、金を出した男は残る。

損をしているから残る。
回収したいから残る。
自分だけは特別だと思いたいから残る。

彼女はそれを知っている。

だから、男に貢がせることは、彼女にとって男を縛る方法でもある。

5. それでも彼女は、ただの悪女ではない

しかし、ここで重要なのは、彼女が単なる悪女ではないということだ。

彼女は、かつて愛した女である。
本気で信じたことがある女である。
そして、本気で傷ついた女である。

だからこそ、厄介なのだ。

最初から金だけの女なら、物語としては浅い。
最初から男を騙すだけの女なら、ただの悪役で終わる。

だが、彼女は違う。

愛を信じた結果、愛を試す女になった。
傷ついた結果、男を傷つける側に回った。
捨てられた結果、捨てる権利を握ろうとした。
選ばれなかった結果、今度は男に選ばせ続ける女になった。

ここに、人物の厚みがある。

彼女は、男が自分のために予定を変える姿を見る。
金を使う姿を見る。
返信を待つ姿を見る。
見捨てられないように振る舞う姿を見る。

そのたびに、心の奥で思う。

「ああ、この男も私に落ちた」

それは甘い勝利である。
だが、その勝利は長く続かない。

6. 「ああ、この男もか」という哀しみ

男が本当に壊れていくとき。
金銭的に苦しくなり、精神的に追い詰められ、最後には
怒るか、
泣くか、
逃げるしかなくなったとき。

彼女は少しだけ冷めた目で見る。

「ああ、この男もか」

また同じだった。

最初は大きなことを言っていた。
自分だけは違うと言っていた。
君を大切にすると言っていた。

けれど、最後には壊れた。

近づけば近づくほど、男は石になり、やがて内側から崩れていく。
彼女はまるで、現代のメデューサだった。

ある男は、金が尽きて逃げた。
ある男は、怒りながら去った。
ある男は、彼女を悪女だと罵った。
ある男は、最後に「これだけしてやったのに」と言った。

勝ったはずなのに、満たされない。
支配したはずなのに、救われない。
欲しいものを手に入れたはずなのに、また孤独になる。

なぜなら、彼女が本当に見たかったのは、男が壊れる姿ではなかったからだ。

本当は、壊れずに残る男を見たかった。
金を出しても、身体を欲しがっても、それでも最後には人間として自分を見てくれる男を見たかった。
過去の男たちとは違うと、証明してくれる男を見たかった。

だが、現実には多くの男が途中で壊れる。

そのたびに彼女は思う。

「ほら、やっぱり男は同じ」

それは男への侮蔑であり、同時に自分自身への慰めでもある。

信じなくてよかった。
心を渡さなくてよかった。
先に取っておいてよかった。
本気にならなくてよかった。

そうやって彼女は、自分の冷たさを正当化する。

7. 金で試された愛は、やがて取引になる

貢がせる女の本質は、金だけではない。

金は、男の本気を測る道具であり、男を縛る鎖であり、自分の価値を確認する鏡である。

彼女は本当は、金が欲しいだけではない。

逃げない証拠が欲しい。
選ばれる証拠が欲しい。
自分には価値があると確認したい。
かつて選ばれなかった自分を、別の男に補償させたい。

だが、これは救いにはならない。

なぜなら、金で試された男は、いつか回収を考え始めるからだ。

「これだけ出したのに」
「なぜ俺を選ばない」
「なぜ俺だけを見ない」

この言葉が出た瞬間、愛は終わる。

それはもう愛ではない。
投資回収であり、損益計算であり、支配欲である。

彼女はそれを見て、また心を閉じる。

「やっぱり」

だが、それは半分だけ正しい。
もう半分は、彼女自身の問題でもある。

彼女は、男に愛を証明させようとする。
しかし、証明の方法が金になる。
金になった瞬間、男は投資家になる。
投資家になった男は、いつか回収を考える。

つまり、彼女自身が、愛を取引に変えてしまっている。

ここが、この関係の悲劇である。

8. 私もまた、石になりかけた男だった

私もまた、こういう女に惹かれてしまう男の一人なのだと思う。

美しさに抗えない。
気まぐれに揺れる。
突き放されても、どこかで彼女の奥にある傷を見ようとしてしまう。

男の身勝手な救済願望かもしれない。
ただの未練かもしれない。
あるいは、自分だけは他の男とは違うと信じたい、愚かな自尊心だったのかもしれない。

私は彼女を見ていたつもりだった。
だが本当は、自分の欲望を見ていた。

彼女を救いたいと思いながら、どこかで彼女に選ばれたかった。
彼女の傷を理解したいと思いながら、どこかで自分の価値を証明したかった。
彼女を悪女として切り捨てられないと言いながら、実は自分が彼女から離れられなかっただけなのかもしれない。

だからこそ、今なら少しだけ分かる。

女を救うことと、女に搾取されることは違う。
愛を注ぐことと、金で自分の価値を証明し続けることも違う。
彼女の傷を理解することと、過去の男たちの代わりに罰を受けることも違う。

本当に彼女を見る男なら、こう言えなければならない。

「君の傷は分かる。
でも、俺は過去の男の代わりに罰を受けるつもりはない。
金で君を買う気もない。
金で俺の愛を証明し続ける気もない。
それでも向き合うなら、ひとりの人間として向き合う」

この言葉を、彼女が受け入れられるかどうか。

そこに、彼女が救われる可能性がある。
そして、男が壊れずに済む境界線がある。

9. 本当に欲しいのは、壊れずに残る誰か

本当に欲しいのは、金を出し続ける男ではない。
傷を見抜きながら、それでも壊れずに残る誰かである。

彼女は悪女かもしれない。
だが、それだけでは足りない。

彼女は、愛に敗れた女である。
そして、愛に敗れたまま、愛を試し続けている女である。

だから私は、彼女を単なる悪女として切り捨てることができない。

男を試し、男を壊し、また乾いていく彼女の奥に、かつて本気で誰かを愛した女の姿が見えるからだ。

もし、そんな彼女がいつか立ち止まる日が来るなら。

私は何かを説くつもりはない。
彼女の過去を責めるつもりもない。
男を試してきた弱さを裁くつもりもない。

ただ、ひとりの女として。
ひとりの人間として。

傷つき、乾き、それでもなお誰かを求めてしまう彼女を、静かに見つめたい。


ギリシャ神話では、メデューサが倒れたとき、その血からペガサスが生まれたという。

男を石にするほどの美と畏怖。
その奥には、空へ向かう白い翼が眠っていたのかもしれない。

彼女は、永遠にメデューサである必要はない。

誰かを石にすることでしか自分を守れなかった女が、いつか自分自身の呪いから解かれ、ペガサスのように空へ向かう日が来るかもしれない。

そこからしか、飛べない空がある。

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