ストーカーへの強烈なビート
ストーカー問題は、人間の複雑な心理を相手にするため、対応が難しい。細心の注意をもって対応しなければならない。
と、思っていたのだが、過去、ストーカー撃退の大技を見たことがある。繰り出したのはわたしの奥さん(当時は彼女)。
そもそもストーカーの心理状態とはどういうものなのだろうか。奥さんのストーカーX氏が送った長文メールからおおよそのことは想像できた(一度見ただけなので、おおよその印象です)。
メールは、相手の妄想が書き綴られた恐怖の手記でしかなかった。相手の頭の中に一方的なストーリーな構築されてしまっている。
工事中ではなくて、工事は完成してしまっているのだ。
文中に「ぼくの子供を産んでください」と書いてあったのを覚えている。すごい台詞だ。相手を恐怖のどん底に突き落とすのに十分な破壊力。
わたしはそういう台詞を言う場面があまりイメージできないのだけど、仮に言うにしても、プロポーズのときとかではないだろうか。
つまり、ゴール直前。ここから壮絶なギャップが見えてくる。
A子さんの中では関係がはじまってもいない。というか、拒んでいる。彼氏がいるのでお付き合いできませんと伝えてある。
それなのに、ストーカーX氏の中ではゴールイン直前の状態にある。距離が、ありすぎる……。
ストーカーX氏とは、思考回路が崩壊してしまった狂人なのだろうか?
違う。ストーカーの上級者は思考回路が崩壊しているわけではない。むしろ、ストーリーを作り上げる天才。彼らは点と点を無理やりつなぐ。
いや、ストーカー体質の人はマジで小説家に向いていると思うよ! そのエネルギーを文学に使うんだ。
A子さんは隙を与えてしまっていたのだ。ストーカーX氏はA子さんの顧客であったため、会話はX氏を持ち上げがちになる。
「(ビジネスとして)Xさんとずっと△△しますよ」
※ △△は職業に関する用語が入ります。
A子さんでなくても、つい思わせぶりな台詞を言ってしまうことはあるのではないかと思う。
ストーカーはそこを逃さない。メールでもその失言が、論理の組み立ての核(コア)になっている。
ストーカーX氏に言わせれば、このような建付けになるだろう。「ぼくはあなたが△△してくれると言ったからこんなに真剣になっているんです」
相手に原因があることを匂わせつつ、長々と論理構築をする。
お付き合いできませんと言われていることを無効にし、そこからゴールイン直前にまでたどり着く、超長距離走の論理構築。
だから、ストーカーのメールは長くなる。
もうひとつ、ストーカーの特徴を上げるなら、実は相手のことをあまり見ていない。見ているのは自分の妄想。だから、彼らは相手をころころ変える。
「あなただから、ぼくはストーカーになってしまったんだ!」なんてことはほとんどなくて、いろいろな人をストーキングしたうえで、現在のターゲットにたどり着いている。
そして、それを相手から見透かされている。ストーカーの人が残念なのはそういうところだ。
ほんの少しでいいから相手のことを見てあげれば、うまく行くことだってあると思うのに。
ちなみに、恋愛の百戦錬磨の人とはこういういひと。ものすごく相手を見ている。
さて、ストーカーX氏は完全に仕上がってしまっている。この状態を崩すのは、至難の業に思われた。
わたしは、こういう心理分析はできても、ストーカー対策の専門家ではない。「今は、とにかく刺激しないほうがいいじゃないかな……」としか言えなかった。
逆上した相手に刺されてしまうような最悪なケースだけは避けなくてはならない。A子さんは「わかった」と言った。
全然わかっていなかった。
A子さんが相手に返したメールはわたしの想像を遥かに超えるものだった。見たときの体感でいうと、X氏のメールよりも3倍怖い!
「二度と連絡しないでください!」「絶対に嫌です!」「△△は他の人にしてもらってください!」きつい言葉のオンパレード。
X氏の論理構築のコアも、理(ことわり)を無視して破壊してしまった。
このときばかりは、X氏に同情した。もし、わたしがこんなメールを受け取ってしまったら立ち直れないだろう。
ストーカーを打ち破る方法。それは、相手の妄想に再生の余地を与えないくらい、強烈なビートで破壊し尽くすことなのかもしれない。
【余談】この強烈なビートは、ちょいちょい、わたしにも向かってくるということなんだけどね(ああ、サムネ画像が奥さんに見えてきた……)


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