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あの日、掃除場所が隣だった君と 前編【短編恋愛小説】

新しく作成した無料マガジンです。
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のぶの短編恋愛小説集です。
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新企画『💓あなたの恋愛談を教えてください💓思い出の恋愛を短編恋愛小説にさせていただきます』に応募してくださったPOMさんの恋愛談をもとに作成した小説です。
今回は前編後編の小説になります。
読んで頂けたら嬉しいです。
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POM__3児ワーママ🌼

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原案:POM
制作・構成:のぶ
補助:ちゃぴお


あの日、掃除場所が隣だった君と 前編

 
 中学一年生の入学式。

 春の風が吹く校庭で、真新しい制服に身を包んだ私は、少し緊張しながら体育館へ向かっていた。

 知らない顔が半数近くいる中学校。

 新しい友達できるかな。

 ちゃんとやっていけるだろうか。

 そんな不安を抱えながら歩いていると、遠くから楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「おい、翔太! 先生に見つかるって!」

「大丈夫だって!」

 数人の男子がふざけ合いながら走り回っている。

 その中心にいたのが、山上翔太だった。

 少しやんちゃそうで、とにかく目立つ男の子。

 私はその姿を見ながら、心の中でそっと思った。

 ああいう人とは、きっと関わることないんだろうな。

 それが、私――前川保奈美、通称「ぽーちゃん」が翔太に対して抱いた最初の印象だった。

 実際、その通りだった。

 クラスも違ったし、話す機会もなかった。

 廊下ですれ違うことがあっても、「同じ学年の男の子」という程度の存在だった。

 だから私は知らなかった。

 一年半後、その男の子が私にとって誰よりも大切な存在になるなんて。

     



 中学二年生の秋。

 季節は少しずつ涼しくなり、校庭の木々も色づき始めていた。

「前川さん、今日から掃除場所ここね」

 先生に言われて向かった先で、私は思わず足を止めた。

「あ……」

 そこには、ほうきを持った山上翔太がいた。

「あれ? 前川さん?」

 翔太も少し驚いた顔をしていた。

「今日からここなの?」

「うん」

「そっか。よろしく」

 その「よろしく」の一言が、私たちの始まりだった。

 最初は、ほんの少し話すだけだった。

「ちゃんと掃除してるんだ」

「何それ。俺、意外と真面目だよ」

 そんな他愛のない会話。

 でも、不思議だった。

 翔太と話していると、自然と笑ってしまう。

 やんちゃなイメージがあったのに、実際に話してみると優しくて、面白くて、一緒にいる時間が心地よかった。

 気がつけば、掃除の時間が楽しみになっていた。

 そして、ある日。

「ぽーちゃんって呼んでいい?」

「え?」

「みんなそう呼んでるじゃん」

「……まあ、いいけど」

 少し照れながら答えると、翔太は笑った。

「じゃあ、これからぽーちゃんね。俺のことは翔太で」

 その日から、私は翔太にとって「前川さん」ではなく、「ぽーちゃん」になった。

     



 ある日の帰り道。

「そうだ。メールする?」

 翔太が何気なく言った。

 今では簡単に連絡先を交換できる時代だけれど、当時のメールアドレス交換は少し特別だった。

「うん」

 そうして私たちは、連絡を取り合うようになった。

『今、何してる?』

『宿題』

『真面目だな(笑)』

『翔太は?』

『テレビ見てる』

 そんな短いやり取りが嬉しかった。

 夜になると電話をすることも増えた。

 学校で話して、家に帰ってからも話す。

 たわいもない話なのに、時間はあっという間に過ぎていく。

 でも、その頃の私は知っていた。

 翔太には好きな子がいる。

 女子の間では有名な話だった。

「山上くんって、○○ちゃんのこと好きらしいよ」

 友達の言葉を聞いたとき、胸が少しだけ痛んだ。

 どうしてだろう。

 私は、翔太のことを好きになり始めていたのかもしれない。

 でも、その気持ちは胸の奥にしまった。

 だって、翔太には好きな人がいるのだから。

     



 冬が近づいていた。

 吐く息が白くなり始めたある日、翔太から電話がかかってきた。

「今、話せる?」

「うん」

 少しだけ緊張した声だった。

「俺さ……」

 一瞬、沈黙が流れる。

 そして翔太は、少し照れたように言った。

「ぽーちゃんのこと、好きなんだ」

 心臓が、大きく鳴った。

 何を言えばいいのか分からなかった。

 ただ、嬉しかった。

「……私も」

 それが、私たちの始まりだった。

 初めて彼氏ができた冬。

 初めて一緒に迎えるクリスマス。

 初めてプレゼントを交換した日。

 そして、初めて手をつないだ帰り道。

 翔太の手は少し冷たくて、でもとても温かかった。

 ただ隣を歩いているだけなのに、世界が少し違って見えた。

 好きな人がいる毎日は、こんなにも幸せなんだ。

 私は、そう思っていた。

 だけど、その頃の私たちはまだ知らなかった。

 恋がずっと同じ形で続くわけではないことを。

 そして、一度離れても、また巡り会う恋があることを――。

(後編へ続く)




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