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新関公子著「東京美術学校物語ー国粋と国際のはざまに揺れて」

新関公子さんって長岡の方なのね。長岡の文化レベルってなんで高いんだろう?

こういった歴史の本で、著者ご自身の私的な経験談が入ってくるのが新鮮でした。
ですので、著者による解釈された歴史の書という感じが強いです。
もちろん、すべての「歴史」がそういったものなんですけどね。

興味をひいたのは、まず、東京美術学校の前身である「工部美術学校」で六名の女子学生が入学したエピソード。
美術学校への女子入学は、もしかしたら世界初かもと書かれていました。
その生徒とは、
大島雛(16歳)、
山下りん(20歳)、

神中糸子(17歳)、

秋尾園(14歳)、

そして、山室政子(19歳)、川路花子(27歳)です。
著者は工部美術学校長兼工部大学長であり、大島雛の父である大島圭介の判断ではないか、大島雛のわがままを聞き入れたのではないかと妄想(?)を膨らませるのですが、これが面白い。
少女漫画か、朝ドラになりそうな物語です。
いや、是非ドラマ化してください!
主題歌は米津玄師。

それと、ラグーザと清原玉についても書かれてましたが、これもドラマになりますよ。
小泉セツと小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の物語「ばけばけ」とか、ニッカウヰスキーの「マッサン」とかのように。
1900年代イギリスが舞台の「プリズム輪舞曲」とか、「パリに咲くエトワール」とか、海外留学ものアニメも流行ってるのでアニメでもいけそうですよ。
その時は、畑正吉が語り部として出てほしいな。

東京美術学校に関しては、特に戦時下の昭和19年に行われた人事改革に以前から興味をもっていました。
この人事改革により、彫刻科では朝倉文夫や北村西望らが退任し、平櫛田中、石井鶴三や笹原草家人らが新しい教授として就任します。

これはなぜ起きたのか?
「東京美術学校物語」では、和田英作校長の辞任、藤島武二の死去による美学校の弱体化、そのうえで横山大観が「海山十題」の収益寄贈等により軍部や政府に影響力をもった結果、彼の積年の望みであった岡倉天心の志しのもとへ東京美術学校を取り戻したのだと書かれています。
こうして、日本美術院系の彫刻家が教授として就任となったわけです。

本書では、横山大観の国粋的「彩管報国」思想とその権力が、戦後の芸大を良い方に向けたと読めるのですが、いかがでしょう。
これは戦時の軍国主義を肯定するけっこうあぶない意見なんですが、微妙な書き方で回避してます。
大観の権力主義の結果にもかかわらず、官展系作家が排除されたことを『権力に寄り添う芸術は魅力がない。芸術には野生が必要である』と書いてしまう感覚は、どうかと思うのです。
権力や権威が、別の権力や権威に変わっただけではないでしょうか?

油画科の人事を『梅原と安井の教授就任はヒットだったと思う。いずれにしても青ざめた美術学校のからだに新しい血が注がれ、敗戦後の復活の基礎となったのである。』ともありますが、こと彫刻科の人事はどうだったでしょう。
新しい彫刻が目覚ましく生まれてきていているその時代において、平櫛田中、石井鶴三や笹原草家人ってどうなのよ。 
これが、新しい血なんでしょうか?
けれど、彼らのイニシエの岡倉天心イズムが、戦後の学生の反発を生んだことは逆説的に意味があったのかもしれません。



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