【後編】 スポーツ目白押しの2026年だが、やはり最強の日本代表は「りくりゅう」か。
W杯
6月から7月にかけて開催されたのがサッカーのFIFAワールドカップ。
4年に一度、4の倍数でない偶数年に行われるため、冬季オリンピックと同年開催だ。
1992年までは夏季五輪と冬季五輪が同じ年に開かれていたが色々と運営が難しかったのだろう、1994年の冬季リレハンメル大会から分散したことで現在の形に。
そしてW杯が夏に開催されることから季節も重ならないようになっているのだが、筆者のような「サッカーは冬のスポーツ」という固定観念の持ち主にとってはそこだけが気になるところ。
日本代表は1998年のフランス大会に初出場して以来毎回参加しているが、これは十分立派な歴史だろう。
昨今では「予選は突破して当然」といった雰囲気すらあり、サッカー界全体のレベルが着実に上がっているのことは明白だ。

1993年にJリーグが開幕して以降、プロ野球を手本・反面教師にしたことでプロスポーツ興業として発展。
一時は野球を抜くのではとの声もあったが、プロ野球も2004年に再編問題という世紀のドタバタ劇を経て経営の立て直しに成功。
まだサッカーが首位の座を奪うには至っていないが、裾野(チーム数)に勝るJリーグの国内人気が向上すれば野球とてうかうかしてはいられないだろう。
日本代表が強くなった要因は海外でプレーする選手の増加・・・これに尽きることは疑いようがない。
ひと昔前は中田英寿がイタリアのセリエAに移籍が決まっただけで大騒ぎしていたが、今ではJ1のみならず J2からでも若手の有望株が当たり前のように海を渡る。言葉の壁なんてものともせずに。
そして世界中の様々な国から来た選手たちと常に切磋琢磨するのだから、上手くならない筈がない。
野球ではポスティングがどうとか、プレー年数の制約など不毛なハードルがまだまだ存在しているが、こと海外移籍に関してはサッカーを見習うべきだと感じる。
世界を視野に入れたシステムの中で育成・競争を促す・・・この点においては全スポーツの中でサッカーの右に出る競技はないだろう。
今回も破れなかった決勝トーナメントの壁
さて今大会だが、まず開催国が米国・カナダ・メキシコの3ヶ国という異常な広域ぶり。
次回の2030年大会もスペイン・ポルトガル・モロッコと決まっているようなので、今後は複数国開催が基準となるのだろうが、負担や経済効果を考慮してのことなのだろう。
日本で画面越しに観戦している我々にはさほど影響のない話かと思う。
参加国数が大幅に増え、日本代表も早々に出場権を獲得したが、欧州ではイタリアがまたも予選敗退するなど優勝経験国が相当な凋落ぶりだ。
同グループがオランダ・チュニジア・スウェーデンと簡単ではない組に入ったものの、日本の前評判は"史上最強"とかなり高かったのでファンの期待も開幕が近づくにつれて日に日に膨らんでいった感がある。
結果はグループを2位で通過し、そして決勝トーナメント初戦(ベスト32)でブラジルに逆転負け。
今回も決勝トーナメントで勝ち星を上げられなかった。

敗因については各方面で色々と語られているが、そこまでサッカーに詳しくない一般のスポーツファンである筆者からすると、やはり怪我人が多すぎたのではなかろうか?
開幕前に南野拓実・三笘薫・主将の遠藤航が、開幕後も初戦のオランダ戦で久保建英が負傷。
南野と久保は最後まで帯同したものの、スタメン級を4人、特に南野・三笘・久保といった攻撃の"核"が不在となれば戦力ダウンは必至。
ブラジル戦では先制しつつも後半は防戦一方となり、カウンターの機会もほとんど得られなかったのはこのような経緯で重心が後ろに傾いたことも原因のひとつだろう。
本気で優勝を狙うのならこういったアクシデントをも跳ね除ける必要があるが、2002年の日韓大会で指揮を執ったフィリップ・トルシエ氏が「(トップ国に比べて日本の)選手層が薄い」と評していた。
国内では「史上最強」との呼び声もあり、昔に比べれば日本のレベルが上がったのは間違いない。
ただ世界を知る関係者からすれば「まだまだ」ということだろう。
自分の生きているうちに日本の主将がW杯を天に掲げる姿を目撃したいものだ。
大会を制したのはスペイン。2010年の南アフリカ大会以来2回目の優勝となった。
グループリーグ初戦のカーボベルデ戦に引き分けて世界中が「おや?」と思ったことだろうが、実は南ア大会の時も初戦でスイスに敗れながらその後全勝して優勝。
頂点を見据えるチームは1ヶ月以上に亘る大会でのペース配分も考慮するようだ。

内容は相変わらずのパスサッカーで、そのボール回しは芸術的。
保持率を極限まで高めて常に相手の守備陣を崩そうとプレッシャーをかけることは、同時に相手の攻撃機会を奪うことにもなる。
まさに「攻撃は最大の防御」を体現しているわけだが、これはアンチスペインのサッカーファンにとっては如何なものだろう?
スペインを応援している者にとっては安心極まりない戦術だが、ずーっとボールを持たせてもらえず守りっぱなしの試合は相手サポーターにすれば「退屈」「卑怯」「大人気ない」とも捉えられる。
これは南ア大会の時も然りで、決勝トーナメントは4試合全て1-0というスコアだった。
無論、スペインとてこの戦術で毎回優勝している訳ではなく、過去3大会はいずれも敗退。
ゆえにその時々の選手の能力によって結果が左右されているのもまた事実なのだろうが、もう少し騎士道精神のある撃ち合いを望んでいるのは筆者以外にもいるのではないだろうか?
甲子園
国際大会ではないが、最後に夏の全国高校野球も振り返りたい。
大正4年からというとんでもない歴史を誇るこの大会。
開催されなかったのは米騒動・戦争・コロナの時だけというまさに国民的行事だが、時代の変化に応じて昨今は改革に迫られている(後述)。
第108回目となった今大会、智弁和歌山が優勝の栄冠に輝いた。
春のセンバツでは姉妹校の智弁学園が準優勝していたので春夏連続で智弁勢が決勝に進出。
やはり甲子園大会にあの赤いユニフォームはなくてはならないだろう。
智弁和歌山は5年ぶり4度目の日本一。
5年前はコロナで開催中止となった2020年の翌年だったが、あの時は2回戦から登場のクジを引いた上、相手校の宮崎商にコロナ感染者が出て不戦勝。
決勝も含めて4試合と短かったことや、ほぼ無観客での開催だったために名物の全校応援もなく、異例の状況下での優勝だった。
それと比して今回は"本来の"形での頂点だけに、ファンや学校関係者の喜びも一入だろう。
激戦区・兵庫代表の社を初戦で倒して以降は敦賀気比・仙台育英・横浜・健大高崎と、全て甲子園で優勝経験のある相手。
紛れもなく価値のある勝ち上がりだったが、一方で今回も5年前同様に2回戦からの登場。
実は4度の優勝中、猛打で勝った2000年大会以外はいずれも2回戦を抽選で引いているのだ。
昔から高校野球ファンの間では囁かれていたことだが、やはり日程・疲労面での有利はあるのかもしれない(ただし最後の登場で、開幕戦=1回戦の勝利チームと当たる49校目は除く)。
だがそれを差し引いても立派な全国制覇であり、昨年秋の県大会で敗れ、近畿大会にすら進めずに今センバツを逃したチームとは思えない力強い戦いぶりだった。

突出した能力の投手はいないものの、複数で負担を分散しながら勝ち上がるスタイルは近年のトレンドながら円滑に機能していた感があり、これは捕手のリードも好影響していただろう。
また守備も堅く、特に二塁手・三塁手・遊撃手の打球反応とスローイングの正確さは接戦となった初戦・3回戦で何度もチームのピンチを救った。
以前の智弁和歌山は守備練習に多くの時間を割きながらも、甲子園では肝心な局面でエラーを犯している印象があった。
これを強打で挽回するハラハラ展開が全国的な人気にも繋がったのだろうが、現監督の中谷仁氏が指揮を執るようになって以降、より実戦的かつ「動作の流れ」を意識したプレーが叩き込まれている印象。
技術の向上は特定のチームのみならず高校球界全体で進行していることだが、それにしても今大会の智弁和歌山の内野守備はハイレベルだった。
無論、伝統の強打も健在で、特に準々決勝の仙台育英戦・準決勝の横浜戦では強豪相手に圧倒。
試合途中からTVを点けて観戦した夏休みの学生や、仕事の昼休憩中に端末で結果を知ったサラリーマンはスコアに驚いたのではないだろうか。
強烈だったのは準決勝の横浜戦の3回裏。
1点を追う場面で攻撃開始から怒涛の4連打でアウトをひとつも与えることなく一挙4得点で逆転。
5番打者の楠本龍生選手が横浜の大会No.1右腕・織田翔希投手の152km/h直球をライトスタンドへ突き刺した一撃は、そのスイングの豪快さや打った直後の打者のリアクションから、間違いなく今大会のベストシーンと言えよう。
ただ筆者の考える勝敗の分かれ目はこの攻撃の前、3回表の横浜の攻撃にあった。
智弁和歌山は1アウト3塁の好機を作られ、打順は横浜の4,5番に回る。
打者は2年生ながら名門の4番に座り、中学時代から全国的な逸材だった川上慧選手。続く5番も今大会絶好調で、「振ればヒット」状態の江坂佳史選手。
3塁走者も俊足の2番打者で、どんな方法でも得点が可能なケースとなってしまい、追加点でリードを広げられるのは避けられないかと思われた・・・が、智弁和歌山バッテリーは見事な配球でピンチを脱する。
4番川上には外角のストライクでカウントを整えた後、最後は内角膝元の直球(あるいはカットボール)で空振り三振。
第1打席で外から真ん中に入る変化球をタイムリーヒットされたことを踏まえて組み立てをアップデートさせてきた。
5番江坂には一転しての外角攻め。
打ち気満々の打者の心理を完全に読んでいたのか、初球の変化球から2球目と3球目は渾身の直球を全て外角低めギリギリに投げ込む。
最後は打者の江坂が体勢を崩して地面に膝を突いての空振り三振だったが、この連続三振で流れが変わったことは間違いなく、NHKで解説を務めた"Mr.アマチュア野球"杉浦正則氏も思わず「厳しい攻めですね〜」と感嘆するほどだった。
最早高校野球とは思えないほどのハイレベルな攻防だったが、智弁和歌山の中谷監督は捕手としてプロ野球で15年間プレーしており、しかも阪神と楽天で2度、あの名将・野村克也監督の下で学んでいる。
優勝候補筆頭との大一番で試合の流れを手繰り寄せたあの局面、指揮官のプロでの経験が活かされていないと考える方が無理のあることだろう。
豪快な打撃がクローズアップされがちな"赤い軍団"だが、スコアブックには載らない「細部」にこそ強豪の強豪たる所以が秘められている。
もし前日の対策ミーティングを傍聴できるものなら10万円払ってでも応募したい・・・筆者はそんな妄想に駆られた次第だ。
反対多数の7イニング制
さて、そうやって幕を閉じた大会だが、運営について感じたことをちらほら。
まず客入りについては上々だったようで、特に好カードが組まれた日などはチケットが完売することも多々。
相変わらずの高校野球人気の高さを物語っているが、古参のファンにとっては4年前の2022年に販売方法が大きく転換されたのが歴史の変わり目として知られている。
それまでは当日券の販売が主で、甲子園球場のチケット売り場には連日長蛇の列が早朝から並んでいた。
熱狂的な高校野球ファンは野宿も辞さず、これが夏の風物詩となっている感も漂っていたが、一方でチケット入手は地理的に関西圏が有利となっていたことも事実。
非関西圏から観戦するには野宿も含めて前夜に球場周辺で宿泊する必要があったが、2022年からインターネットでの完全前売り制に移行。
これによって全国のファンが生であの熱狂を目撃できるようになったのだが、ここで思わぬ事態が発生。
導入初年や、翌2023年はかなり空席が目立ったのだ。
筆者のように涼しい屋内でTV観戦する者にとっては満員に膨れ上がった甲子園が大歓声で揺れている様子を観るのが夏の楽しみだったのだが、ガラガラの外野席など、目にしたくない光景も初期にはチラホラ散見された。
あれがコロナ禍の影響が尾を引いたものなのか、あるいは転売目的の買い占めが水面下で行われていたからなのかは分からないが、去年あたりからそれも解消され、今年などはトーナメントが進むにつれて連日満員の盛況ぶり。
おそらくは高野連が何らかの対策を講じ、それが功を奏した結果だろう。
ゆえにこれに関しては評価したい・・・が、一方でそれよりも大きな難題がいま高校野球の世界で発生中。
そう、7イニング制問題だ。
まず先に断言しておこうと思うが、筆者は7イニング制に大反対、猛反対、激烈反対である。
理由は多過ぎて書ききれない・・・ゆえに書かないが、最大のものは「9回まで行うのが野球だから」だ。
高野連が何を根拠にこの話を切り出したのか理解に苦しむが、プロ野球OBをはじめ多くの関係者が「何故イニングを短くすることが暑さ対策になるのか」という疑問を口にしており、全くもって同感だ。
7回まで問題なくプレー出来ていた球児が、8回になって急にバタバタと倒れ出すというデータでもあるのか?
「暑さから子供たちを守る」という綺麗文句を盾に、何か別の目的があるような気すらする。
現場も反対多数と報じられており、大阪桐蔭の西谷浩一監督などは高野連が開いた意見交換会で「断固反対」「進め方に不信感を持っている」とピシャリ。
高野連とすれば"オープンで建設的な議論"をアピールしたかったのだろうが、却って問題が紛糾することとなった。
高野連が実施した全国アンケートの結果も火に油を注ぐ形に。
公表された結果は賛成30%に対し、反対70%と、現場が根強く反対している実情が明らかに。
ただ筆者などは発表されたこの数字自体、あまり信用していない。
実態はもっと反対票が多く、賛成はひと桁ポイントだったのではと疑っている。
先日こちら(↑)の動画にて仙台育英の須江航監督が高野連とは別に自ら実施したアンケートの結果を紹介しており、1万3000人のうち反対は93〜94%に上ったとのこと。
採取方法や母数は大きく異なるだろうが、須江氏の方が現場の声を正確に捉えているような気がしてならない。
プロ野球界でも現役選手やOBから多くの声が上がっており、やはり大半が反対意見を表明している。
デイリースポーツが阪神の主力選手に賛否を問うインタビューを実施したところ、村上頌樹・大山悠輔・坂本誠志郎・森下翔太・中野拓夢・才木浩人ら多数が反対。
森下選手に至っては「(イニングを短くするのは)論点が違う」と厳しく指摘。大山選手も「9イニングは大前提」と述べている。
主砲の佐藤輝明は暑さ対策としてドーム開催案を提唱。
筆者のような保守派の高校野球ファンからすれば聖地・甲子園以外での開催は論外なのだが、佐藤選手の場合は出身地が兵庫県西宮市、つまり甲子園に"近過ぎる"がゆえ、聖地への憧れが他の人間よりも薄くなったと信じたい。
OB界も落合博満氏・イチロー氏をはじめ反対多数。
松井秀喜氏などは「甲子園で9回までやるのが当たり前」と、議論が起こっていること自体にピンときていない様子。筆者も大いに同感だ。
こうなると賛成意見を見つけるのが困難なほどだが、筆者が把握しているところでは新庄剛志現日本ハム監督・高木豊氏・斎藤佑樹氏などが賛成とのこと。
新庄監督は高校野球どころかプロ野球にも7イニング制を導入すべきだという持論があるようで、案の定周囲から猛反対を受けていたが、斎藤氏の賛成にはショックを禁じ得なかった。
2006年の夏、早稲田実業のエースとして田中将大擁する駒大苫小牧との伝説の決勝再試合を演じたあの英雄が、よもや・・・
2試合で計24イニングを投げ抜いた熱投に感動した世代からすると、失望以外の何物でもない賛成票だ。

話が熱を帯びてしまったが、兎にも角にも高野連には早く"目を覚まして"もらい、現場の球児や指導者、そして日本中の高校野球ファンが望む形でこれからも歴史を紡いで頂くことを願う。
さもなくば2004年のプロ野球再編問題以来の擾乱が勃発し、高校球界の分裂という悲劇をも招きかねない。
それ程この問題は「パンドラの箱」であると感じている。
感動はつづく
高校野球の話題に大きく逸れてしまったが、こうやって振り返ってみると改めてスポーツの面白さを味わえる場面が今年は多かった。
勝負の厳しさを教えてくれたWBC、サッカーW杯。
選手だけでなく関わる皆の者を感動の渦へと誘う"青春讃歌"甲子園大会。
4年間の全てを"この一瞬"に捧げる五輪。
その中でも実力で最強を証明したフィギュアスケートのりくりゅうペアは2026年における日本のスポーツシーンのMVP候補と言えよう。
あれだけの感動を超える瞬間はそうそう訪れるものではない・・・そう感じているのは筆者だけではない筈だ。
