なぜラストにライブがないのか ──映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』を観て
ボブ・マーリー:ONE LOVE
BOB MARLEY: ONE LOVE
2024年 アメリカ
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
出演:キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチ、ジェームズ・ノートン
思い出のジャマイカ
実は結婚式をジャマイカで挙げたんです。イギリスのテレビ局にも取材されました。とにかく明るくて美しく、そして治安の悪い国、という印象が強く残っています。レストラン、バー、バスの中でも、とにかくボブ・マーリーの音楽が流れていました。
バスで口ずさんでいたら、バスの運転手が喜んで(!?)CD屋に連れていってくれたこともあります。
『クール・ランニング』や『カクテル』を観てジャマイカに行ったので、レゲエも明るく楽しい音楽だと思っていました。
この映画を見る前に
もしまだ本作を観ていないのであれば、以下の言葉の意味を押さえておくことをおすすめします。
ラスタ(ラスタファリ運動)
ハイレ・セラシエ一世(エチオピア皇帝)を神(ジャー)として崇拝する運動・生き方。アフリカ回帰、平和、自然との共生を求めている。イエスは認めるが、キリスト教における白人支配からの脱却を目指している。エチオピアは天国とされる。
ちなみにラスタカラーは、赤(血)、黄(太陽)、緑(草木)、黒(黒人)を表す。大麻
神聖なハーブとされ、神との対話に必要なもの。ジャマイカの宗教
60%以上がキリスト教プロテスタント。ラスタはごく少数派。ジャマイカの人種
90%以上がアフリカ系。先住民(タイノ族)はほぼ絶滅している。ジャマイカの政治
親ソのマンリー政権と親米のシアガ勢力が激しく対立していた。ボブ・マーリー
ラスタであり、アフリカ系と白人のミックス。政治的には中立的立場を取っていたため、少数派の存在だった。ライオンの指輪
ハイレ・セラシエ一世の皇太子から贈られたとされる。メッセンジャー
神(ジャー)の声や意志を人々に届ける存在。聖書ではヨハネに重ねられる。エクソダス
『出エジプト記』。
ーーーここからネタバレーーー
ミュージックビデオとしての映画
ボブ・マーリーの名曲が全編に散りばめられた、まさにミュージックビデオのような映画だ。
『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒット以降、ミュージシャンを描き、映画館をライブ会場に変える手法が定番になった。
ただし、レゲエを明るく楽しい音楽だと思っていたノンポリ(死語?)の私としては、最後、肝心のライブがないじゃないの!と感じてしまった。
『ボヘミアン・ラプソディ』との比較
作品としての構成は酷似している。
ミュージシャンとしてのスター街道と挫折、出生にまつわるトラウマ。フレディ・マーキュリーのエイズに対し、ボブ・マーリーは癌。ライブ・エイドとワン・ラブ・ピース・コンサートという歴史的ライブ。
しかし、そのライブの描かれ方が決定的に違う。
当時のライブ・エイドの映像を完コピした『ボヘミアン・ラプソディ』。私は思わず走って家に帰り、DVDで確認したほどだった。その結果、映画館では大合唱が起きた。
一方、『ONE LOVE』は、ボブがワン・ラブ・ピース・コンサートのステージに立ち、「さあ、これからだ」というところで終わる。
ミュージックビデオとして、この二つの映画はまったく異なる。
ボブ・マーリーの生き様
ボブ・マーリーは音楽の才能を、ラスタのメッセンジャーとしての使命として与えられた。そして、その使命を生きた。
彼のメッセージは「ONE LOVE」。これが、この映画の主題である。
レゲエ音楽は、メッセージを伝えるための手段であり、道具だったのだ。
彼の音楽を通して、「ONE LOVE」を学び、実践していくのだ。
ボブ・マーリーのメッセージ
"The people who were trying to make this world worse are not taking a day off. How can I, when I'm trying to make it better?"
"None but ourselves can free our minds"
"One Love, One Heart. Let's get together and feel all right"
"Every little thing gonna be all right"
ラストシーン
これで、ラストシーンのモヤモヤは吹き飛んだ。
ボブが亡くなったというテロップの後、アーカイブ映像が流れる。過激な争いの当事者であった政敵同士が、ステージ上で握手をしている。
ボブは成し遂げたのだ。彼の使命を。
評価
⭐️⭐️⭐️⭐️
