どうか縛らないでください

柵に座る​僕の耳に届くのは、ただオロオロと動揺する大人たちの声だった。

「ど、どうしちゃったの?ひろゆきちゃん。いつも頼もしくて優しい子だったのに」

「そ、そうだぞひろゆき。学校でも、近所でも、お前は常に優等生だったじゃないか!こんな事をして、パパは恥ずかしいぞ!」

僕は、そんな両親を一瞥した後、屋上の柵の向こう側へと降りた。

「お願いだからひろゆきちゃん、こっちに戻ってきて。ね、ママと家に帰って…そうだ、今日はひろゆきちゃんの好物のグラタンにしましょう。ね、そうしましょう。だからそんな冷たい目を引っ込めて、いつもの優しいひろゆきちゃんに…」

「お願いだから」

僕は、母親の声を遮るように大声を張り上げる。

「お願いだから、あなた達の理想で、僕を縛り付けないで!僕は、優等生なんかじゃないし、優しくも頼もしくもないんだ。あなた達が毎日、浴びせる様に投げつける言葉で、どうか僕を縛らないでください」

僕はそう叫ぶと、自由を求めて屋上の向こう側へと一歩踏み出した。


こちらも #アマノ文筆クラブ
『どうか縛らないでください』
参加作品です。

前回はホラー、今回は…ジャンルとしてはヒューマンドラマってところでしょうか🤔
きっと、出題者である甘野さんは、もっとコミカルな作品をイメージしていらっしゃったかもですが、私のフィルターを通ると、どうにも暗くなってしまう🤣🤣

でも、前作書き終えた後に思い浮かんだのが、言霊による縛りなんですよね😅
私自身、妹が生まれた瞬間から、私ではなく、“お姉ちゃん”という言霊に縛られて、今でも実家に帰ると、お姉ちゃんに戻るんです。良くも悪くも。
でもきっと、そうやって周りの人が作り上げる自分へのジャッジによって、自分自身が縛り付けられてしまうことって、往々にしてあるんじゃないかなって思うんですよね。良くも悪くもね。

って、なんだか説教くさくなっちゃったので、ここらでいつもの宣伝を(笑)
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