🌹女風土記🌹 神奈川県横浜市 赤軍派のファッションリーダー 遠山 美枝子 女史 / Fashion Leader of Red Army Faction, Ms. Mieko Toyama

「お母さん、美枝子頑張るから見ていてね・・・総括に耐えて立派な闘志になってみせるから・・・お母さん、幸せにしてあげるわ・・・」
"Mom, please watch me... I'll survive this persecution and become a true fighter... Mom, I will make you happy."
遠山 美枝子 女史
Ms. Mieko Toyama
1946 - 1972
神奈川県横浜市中区千代崎町 生誕
Born in Yokohama-city, Kanagawa-ken
遠山 美枝子 女史は、同志らにリンチ殺害された赤軍派初期メンバー。夫は赤軍派最高幹部の高原浩之。赤軍派のファッションリーダー、第2の重信房子として活躍。
Ms. Mieko Toyama an early member of the Red Army Faction who was tortured and killed by her fellow members. Her husband is Hiroyuki Takahara, a top leader of the Red Army Faction. She is known as a fashion leader of the Red Army Faction and "second Fusako Shigenobu."
「母子の楽しい夕食」
昭和46年11月24日、「お母さん、しばらく帰れなくなると思うのよ。」美枝子は、原色のアノラック(フード付きアウターウェア)、セーター、スラックス、下着、ストッキング、ブラシ、化粧道具、母親から取り上げた黒革のバッグ・・・、ボストンバッグに衣類を詰め込み終わると、「お母さん、晩ご飯は私がこしらえてあげる。お母さんは遊んでてもいいわよ。」母親・幸子は心配になってたずねます。「どこか遠くへ行くの?どこへ行くの?」美枝子はちょっと笑うだけで答えません。家で革命思想を説くようになった美枝子は、心配する母親・幸子と度々口論になって家を飛び出してはしばらく帰ってこないことが続いていました。母子差し向かいの楽しい夕食が終わると泣き出す母親に、「行くのをやめようかなあ。」「やっぱり行くわ。」美枝子は玄関の横で少し躊躇してから、何となく暗い顔でボストンバックを下げて出て行きます。
「赤軍派の3女神」
美枝子は閑静な住宅街で、3人姉妹の真ん中の娘として大切に育てられます。幼いころに父親を亡くしてからは母・幸子に女手一つで育てられ、キリンビール東京本社に勤務しながら明治大学夜間法学部に通います。まもなく学費値上げに反対する学生運動に参加、キッコーマン日本橋支社に勤める一つ上の重信房子にオルグされ、成田空港反対運動、王子の野戦病院反対集会、全学連総決起集会デモ、東大安田講堂占拠事件、沖縄返還闘争、そしてブント(共産主義者同盟)関西グループが結成した過激派組織・赤軍派の中に組み込まれていきます。「世の中を変えるには、暴力しかない!暴力革命だけがこの現実を変革できるのだ!」赤軍派初代議長・塩見孝也の妻である塩見一子、赤軍派幹部・堂山道生の秘書兼恋人である重信房子に続いて、赤軍派幹部・高原浩之(重信房子の元恋人)の秘書兼恋人となった美枝子は、「赤軍派の3女神」(赤軍派指導部に最も近い女たち)として、愛する男の生活を支えながら後方支援に従事。「革命戦線」という支援活動家組織を結成、巧妙な連絡体制を組織し、喫茶店で待機している兵士たちは電話で暗号のやり取りをしてメッセージを地下の仲間たちに伝えます。
「第2の重信房子」
やがて大菩薩峠軍事訓練を政治目的の殺害計画とみなす破防法39条40条の最初の適用により逮捕・接見制限された塩見孝也とともに塩見一子は一線を退きます。「魔女」「ブントのマタハリ」こと重信房子は、新宿「ユニコーン」に通ったり、お昼のワイドショーに出演したりして、気さくに相手の懐に飛び込んで映画監督・大島渚や映画評論家・松田政男、アラブ仲介者など支援者集めならびに資金集めに成功、京都大パルチザン・奥平剛士と結婚して国際拠点建設のためレバノンに旅立ちます。新リーダーの夫・高原浩之を塩見奪還のためのハイジャック容疑で逮捕された美枝子は、夫の代わりとして、第2の重信房子として赤軍派の女王の様に振舞います。毎月200万円を組織に上納していた重信房子を失って資金の目処がつかなくなると、有能でも武闘派でもないものの塩見孝也の信奉者を自称して組織責任者におさまった森恒夫は「M(Money)作戦」と名付けた資金奪取闘争つまり金融機関襲撃・強盗を開始。美枝子はベイルートにいる重信房子と情報のやりとりをするとともに、要請に応じて独断で活動資金を送ります。そして製作された赤軍派とPFLP(パレスチナ解放人民戦線)との連携を称える本やドキュメンタリー映画を携えて、赤いマイクロバスで日本各地をまわり、大学キャンパスで上映会と学生ミーティングを開催します。
「反革命的な女」
母・幸子が電話に飛びついて110番しようか考えあぐねている頃、美枝子はまっすぐに山梨県新倉山にある赤軍派の山岳アジトをめざします。共同軍事訓練のために集まったのは、資金担当の赤軍派から責任者・森恒夫はじめ、坂東国男、山田孝、青砥幹夫、行方正時、植垣康博、進藤隆三郎、山崎順、そして美枝子の9名、武器担当の革命左派からリーダーの永田洋子はじめ、大櫛節子、杉崎ミサ子、坂口弘、寺岡恒一、吉野雅邦、前沢虎義、岩田平治、金子みちよの9名。赤軍派唯一の女兵士である美枝子は、革命左派の永田洋子はじめ女性らに睨まれます。20歳のお祝いに母からもらった指輪を永田洋子にむしり取られ、黒革のバックともども処分されます。群馬県榛名山のアジトに移ると永田洋子が指揮をとる総括の対象となります。「化粧して長い髪をブラッシングして寝転んでいる」「服装や身の回りの品がブルジョア的だ」「進藤隆三郎を総括したとき殴らなかった」「女として特別扱いされるのに甘えている」「行方正時とできてる」「森恒夫が加東潤子に産ませた乳児の世話をした。森恒夫が好きで山に来たんでしょ。」「ベイルートにいる重信房子に組織の金を勝手に送金した」「塩見孝也の後継者・高原浩之と密会した朝帰りで刑事にパクらせた」
「総括」
リンチの指揮を執るのは森恒夫、美枝子は小屋の柱に太いロープで後手に縛り上げられ、それまで部下だった同志らに鉄拳・カシの棒でかわるがわる殴る蹴るの暴行を加えられます。ハサミで長い黒髪を坊主に刈り取られ、顔が変形するほど腫れあがった美枝子の前に永田洋子が鏡を差し出します。「あなたの可愛いい顔がこんなになってしまった。」「そうよ森恒夫が好きだったのよ・・・だから助けて・・・」命乞いするも森恒夫は逆上、「総括が足りない」。恥部まで蹴られ棒をこじ入れられ毛を焼かれ、寝袋に詰め込まれ小屋の外に運び出されると、元日に寝袋の中で糞尿まみれで死んだ小嶋和子と同じ杉の木に縛り付けられます。美枝子は、洋子の命令で死体を運んで、穴を掘って、全裸にして、殴って、土を被せて埋めたのを思い出します。「小嶋和子のように死ぬの嫌だもん・・・お母さん、美枝子頑張るから見ていてね・・・総括に耐えて立派な闘志になってみせるから・・・お母さん、幸せにしてあげるわ・・・お母さん、死ぬのは嫌だもん・・・お母さん、房子姉さん助けに来て・・・」食事も水も一切与えられず、美枝子は泣き叫び続けながら寒さと飢餓で3日目の1月7日に息絶えます。
「指輪と黒革のバッグ」
母・幸子は美枝子から聞いていた運動仲間の名前を思い出しながら東京都内をあちこち探し回ります。或る日、東京拘置所に拘留中の塩見孝也の妻を名乗る女から電話があります。「遠山美枝子はお正月過ぎには家へ帰るはずです。」それ以外のことは何をたずねても「分からない。」美枝子の手掛かりを求めて年末も歩き回る母・幸子は雨でびしょ濡れになり風邪をこじらせ床につきます。来る晩も来る晩も全身汗だくになりながら、美枝子の夢を続けて見ます。綺麗に化粧をしてこたつの上の食事を貪るように食べ続ける美枝子。半纏を着て山道を歩きながらふいに現れた警官に爆弾を投げる美枝子。幸子が山小屋に美枝子を引っ張り込んで暖かいものをこしらえて食べさせていると突然崩れ出す山小屋。幸子が美枝子の遺体に対面したのは3月13日、一番最後の12番目。倉淵村の林道から数十メートル入った地藏峠に近い杉林から、寺岡、行方に続いて掘り出され、高崎市営火葬場で荼毘に付されます。しばらくして指輪が幸子のもとに送り届けられるも、黒革のバッグは戻らないまま。

-「赤軍-PFLP・世界戦争宣言 / Red Army PFLP Declaration of World War 」(監督:足立正生&若松孝二 若松プロダクション1971)
-「過激派学生 : 何が彼らをそうさせたか」(中川友吉 著 / 講談社1973)
-「赤い雪 : 総括・連合赤軍事件 ドキュメント」(角間隆 著 / 読売新聞社1980.2)
-「連合赤軍 : 小説」(小堺昭三 著 / 徳間書店1973)
-「日本赤軍派 : その社会学的物語」(パトリシア・スタインホフ 著, 木村由美子 訳 / 河出書房新社1991.10)
-「連合赤軍 : この人間喪失」(読売新聞大阪本社社会部 編 / 潮出版社1972)

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