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穴埋めの女①#14

#14  クリスマスを休めない女


時が流れるのは早い。

気づけば、12月になっていた。

街を歩けば、クリスマスの飾りつけ。
お店からはクリスマスソング。
イルミネーションも増えてきて、街全体が浮かれている。

恋人たちが浮かれる季節。

そんな街を歩きながら、
「あぁ、今年は彼と過ごすのかな……」
なんて考えていた。

嫌ではない。
嫌いでもない。

ただ、
プレゼントとかは、期待しないでおこう。

そう思っていた。
そんなある日、彼から連絡が来た。

「もうすぐクリスマスだね」

そうだね。
クリスマスだね。
……と思ったところで、私は真っ先に連絡を返した。

「クリスマスの日、24日、25日どっちも仕事なんだよ………ごめんね」

嘘ではない。

事実だ。

なんなら地上波の生放送。

証明できる。

私は嘘をついていない。

本当に仕事なのだ。

ところが。
その連絡をしてから、珍しく彼から返信が来なくなった。
きっと怒っているんだろうな。
分かりやすい。
そう思っていた。

夜10時ごろ。
私は早々に布団に入って、寝ようとしていた。
すると、彼から電話がかかってきた。

「クリスマス、休めないの?」

……。
これは。
テレビ業界で働く私にとって、かなり痛い言葉だった。
「ごめん。この日は大きい番組があって、みんな忙しいから私だけ休めないよ……」
「社会人でも、俺の周り休んでいる人いるけど」
「普通のOLさんとかはね? 休めるかもしれないけど、私の仕事は厳しいよ……」
「なんで?」

……。

なんで?

えぇ?


なんでって言った?

これこそまさに、社会人と学生の差なんでしょうか。
いや、私の仕事について説明しているよね?

というか、その番組、結構大々的に宣伝されているよね?
絶対知ってるよね?
……あ。
そういえば。

こいつ、家にテレビないんだったーーー。

「本当にごめんね。こういう仕事だから、クリスマスの日に会えないのは申し訳ないと思ってる。だから、当日じゃなくて違う日に会おう?」
「うん……」

電話だからこそ分かる。

100%納得していない。

「また連絡するから、クリスマスの前の日とか会おう?」
「分かった」
……。

これは絶対、100%分かっていない返事だ。

電話を切ったあと、少しだけ気まずい気持ちになった。

でも、話し合った結果、
クリスマスの日までに、空いているところはたくさん会おう
ということになった。

私たちがよく会うのは、私の家と彼の家の中間地点……ではない。

どちらかというと、彼の家寄り。
彼のバイト先がある商業施設だった。
結局。
彼の定期券内でしか会わない。

……ドケチだ。

そして、そんな場所で何度かデートをした。
ショッピングをしていると、彼がジャージを見ていた。

有名なスポーツブランド。
それなりにいい値段がする。
「これ、いいな〜」
と言いながら、値札を見る。
「たけぇ〜」
そして、その場を去る。

……欲しいんじゃないんかい。
その後は恒例。
彼のバイト先でご飯。
そして、値引きしてもらって。
バイバイ。
そんなデートが、3回。
さすがに私は思った。
これ、私が安くしろって言っているみたいじゃない?
いい加減、この店に行きにくい。
というか。
彼はバイトでもここに来ているんだよね?
……いいのか?
いろいろなことを考えた。


きっとここまで読んでくれている人は思うだろう。

「どうしてこの人、別れないの?」

今だから思う。
書いている自分でも思う。

どうして私は、この人と付き合い続けていたんだろう。

正直、顔はタイプではなかった。
かっこ悪いというわけではない。
むしろ、いい方の顔だと思う。
でも、別れるということを考えることなく、私は付き合っていた。
きっと恋愛とは、そういうものなのかもしれない。
分からない。
でも、一度好きになってしまったものは、どうしようもないのかもしれない。
今になって思う。

好きという感情は、怖いものだ。

誰に何を言われても、その時だけは誰にも逆らえないくらい、気持ちが強くなる。
私が言うのもおかしいけれど。
それが、恋愛なのかもしれない。
そう思っていた。
そんなことを考えていた頃。

街は、ますますクリスマス色に染まっていった。
そして私たちにも、
「クリスマスの日」
がやってくる。

正確には、クリスマス当日ではない。

でも、私たちにとってはクリスマスの日。

私は、その日のためにプレゼントを用意した。


そして、そのプレゼントが――
思っていた以上に、彼を喜ばせることになるのか、ならないのか…

……どうでしょうね



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