写真詩「ハマナスとバルバレスコ」(31) ー 風景のような香り
風をまとい
風にほどけて
想い出す日の
風景に

最近、この香水をつけるようになりました。
ジョー マローンの
「ウッド セージ & シー ソルト」です。
実は、この香水との出会いは、
ベトナムのハノイでした。
泊まっていたホテルのレストランで食事をした際、ウェイターの青年が彼女(ワイフ)の香りに気づいて、
「何を使っているのですか?」
と尋ねてきました。
そこから香水の話で少し盛り上がり、
彼が、
「自然な香りがお好きなら、これがおすすめです」
と教えてくれたのが、
ジョー マローンでした。
早速、ハノイからボストンへ戻る途中、
成田空港で買ってみました。
旅先で交わした何気ない会話が、
こうして暮らしの中に残ることがあります。
不思議なものです。
ボクは長い間、
シャネルの香水を使ってきました。
華やかで洗練された香りです。
香りにも少し存在感を求めていた気がします。
もっとも、
普段から香水をたくさん使うわけではありません。
彼女はボクの匂いを好きだと言ってくれますし、
ボクも彼女の匂いが好きです。
人と人との間には、
言葉では説明しにくい相性のようなものがあります。
香水は、
その上にそっと添える小さな演出なのかもしれません。
だから一本あれば、
一年は使えてしまいます。
けれど最近は、
主張する香りよりも、
暮らしに溶け込む香りの方が心地よく感じられるようになりました。
ジョー マローンは、
イギリスのブランドです。
この「ウッド セージ & シー ソルト」は、
イギリスの海岸をイメージして作られた香りだそうです。
潮風。
海塩。
崖の上に生える草木。
そんな景色を思わせる、
どこか自然な空気感があります。
薔薇のような華やかさでもなく、
柑橘のような鮮やかさでもない。
風景の中にある香りです。
だからでしょうか。
つけていても、
香りをまとっているというより、
風をまとっているような気持ちになります。
庭に出ると、
薔薇が咲き、
ラベンダーが香り、
セージの葉に触れると、
指先に香りが移ります。
この香水には、
そんな庭の空気とどこか通じるものがあります。
自然で、
控えめで、
けれど確かに心地よい。
ボクもまた、
そんな存在であれたらいいのかもしれません。
強く印象を残すのではなく、
一緒にいると、
なぜか心が安らぐ。
あとになって思い出したときに、
「あの人と過ごした時間は良かったな」
と思える。
そんな感じの人です。
ハノイで出会った一人の青年の言葉から始まったこの香水との縁は、
香りだけでなく、
そんなことまで思わせてくれています。
春衣
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「言葉になる前の気持ち」を、写真にして、短い詩をつけました。
写真詩「ハマナスとバルバレスコ」は、
そんな瞬間たちを、そっと掬いあげた小さな記録です。
うまく説明できないけれど、なぜか心に残る景色がある。
このマガジンが、
あなたの中の静かな何かに触れられたら嬉しいです。
春衣
