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「土筆の上は」【毎週ショートショートnote:お題「つくし上位互換」】
たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
春になると大地を覆いはじめる草。誰も目に留めぬそれを摘む酔狂な者がいた。彼の者は、集めた草を丁寧に水洗いし、天日に干して細かく切り刻んだ。焙烙を取り出すと、その草を香ばしい香りがするまで炒っていく。炒り上がった葉を急須に入れると、沸騰した湯をそこに注ぐ。やがて湯飲みに黄金色の茶が抽出された。
おしながき:
・イワナの塩焼き
・青菜の出汁煮
・土筆の卵とじ
・苺のシャーベット
山あいの宿、そこは和食膳が評判だった。今夜も膳に添えられたお品書きが筆で綴られた奉書を開き、宿泊客が笑顔を浮かべている。その舞台袖で不満そうな顔がひとつあった。
「こんなに丁寧に煎じて淹れた茶なのに。何故おもてなしにお出ししてはいけないんだ」
厨房の調理長、板長であり、宿の支配人がそうぼやく。その横で女将が溜息を付きつつ言葉を返した。
「あなた、何ておっしゃいましたっけ?あのとき」
「いや……ひとつ上のものを出してみせる、と言ったんだ」
「……お味でひとつ上を行ってくださいな。ツクシを成長させてどうするんです」
スギナは体に良いと言われている。ツクシは、そのスギナのいわば芽だ。
「よい薬草茶なんだぞ。見ろ、この黄金色」
「そんな薬くさいお茶、旅行先で飲みたいお客様がいるものですか……全く、あなたという人は」
今回は未然に防いだが、次もまたやらかすだろう。女将の悩みは、桜が散った後も尽きそうもない。
(了)
(591字)
よろしくお願い申し上げます。
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