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なぜ私は、仕事を語るのに心理学を使うのか― 人を理解するためだけではなく、自分自身を俯瞰するために

なぜ私は、仕事を語るのに心理学を使うのか

― 人を理解するためだけではなく、自分自身を俯瞰するために

このシリーズでは、

教育。

営業。

管理職。

離職。

報連相。

評価。

人間関係。

いろいろな仕事の話を書いてきました。

そして、その中で何度も心理学の言葉を使っています。

心理的安全性。

心理的リアクタンス。

自己決定理論。

学習性無力感。

ハロー効果。

確証バイアス。

公平理論。

いろいろな言葉が出てきました。

では、なぜ私は仕事の話をする時に、ここまで心理学を使うのか。

今回は、その理由について書いてみたいと思います。



心理学は「人を操るためのもの」ではない

心理学という言葉を聞くと、

「相手の心を読む」

「人を思い通りに動かす」

「営業で相手を誘導する」

そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。

確かに、人の心理を理解することは営業にも使えます。

教育にも使える。

交渉にも使える。

でも、私は心理学を、

人を操るための技術

として学んでいるわけではありません。

むしろ逆です。

私は、

人がなぜそう考え、なぜそう動いたのかを、感覚ではなく言葉にするため

に心理学を使っています。



現場では「なんとなく分かる」が多い

管理職として仕事をしていると、

人を見て、

「たぶんこうだろうな」

と思うことがあります。

この社員は、

怒っているというより不安なんだろうな。

この人は、

やる気がないのではなく、もう諦めているんだろうな。

この営業は、

商品が悪いのではなく、自信をなくしているんだろうな。

この部下は、

報告したくないのではなく、怒られるのが嫌なんだろうな。

現場にいると、

感覚的に分かることがあります。

でも、

「なんとなく分かる」

だけでは弱い。

なぜなら、

人に説明できないからです。



管理職は「感覚」を言葉にできなければならない

例えば、

部下が報告しなくなった。

管理職が、

「最近こいつ、報連相しなくなったな」

と思う。

それだけなら、

ただの感想です。

でも、

「報告するたびに強く否定されていた」

「悪い情報を持っていくと怒られていた」

「だから報告行動そのものを避けるようになっている可能性がある」

と考えられれば、

対応が変わります。

単純に、

「ちゃんと報告しろ」

と言うだけではなく、

なぜ報告しなくなったのか

を見るようになる。

心理学の知識があると、

現場で起きていることに名前を付けられます。

名前を付けられると、

整理できる。

整理できると、

人に説明できる。

そして、

改善方法を考えられる。



教育と心理学はかなり近い

人を教育するということは、

知識を渡すだけではありません。

相手が、

どう受け取るか。

どこでつまずくか。

どこまで理解しているか。

何に不安を感じているか。

どうすれば自分で考えられるようになるか。

そこまで見る必要があります。

だから私は、

教育と心理学はかなり近いと思っています。



同じ言葉でも、受け取り方は違う

例えば、

「もっと頑張れ」

という言葉。

ある人には、

励ましになります。

ある人には、

「まだ足りないと言われた」

と感じます。

ある人には、

「何も見てくれていない」

と感じるかもしれない。

言った側は同じ意味でも、

受け取る側では違う。

だから、

何を言ったかだけではなく、どう受け取られたか

を見る必要があります。



営業も、人を見る仕事

営業も同じです。

商品知識は必要です。

価格も重要です。

市場も知らなければならない。

でも、

最終的に相手は人です。

「高い」

と言われた。

本当に価格だけが問題なのか。

予算がないのか。

上司を説得できないのか。

失敗するのが怖いのか。

今の取引先を変えることに不安があるのか。

断るために価格を理由にしているだけなのか。

同じ「高い」でも、

中身は違います。

だから営業は、

商品を説明するだけではなく、

相手が何を考えているのかを理解する仕事

でもあります。



経営も、最後は人が動かす

会社は数字で動いているように見えます。

売上。

利益。

原価。

人件費。

生産性。

離職率。

全部大切です。

でも、

その数字を作っているのは人です。

営業する人。

製造する人。

管理する人。

買う人。

売る人。

決める人。

だから、

数字だけ見ていても分からないことがあります。

数字が下がる前に、

人の気持ちが離れている。

数字が悪くなる前に、

報告が止まっている。

離職者が出る前に、

社員が諦めている。

前にも書きましたが、

数字は結果です。

その前に、人の行動があります。



でも、心理学を学ぶ一番大きな意味は「自分」にある

ここまで書くと、

心理学は、

部下を理解するため。

顧客を理解するため。

社員を理解するため。

そう見えるかもしれません。

もちろん、それもあります。

でも私は、

心理学を学ぶ意味の中で、

かなり大きいのが、

自分自身を理解できるようになること

だと思っています。



人は、自分のことを意外と分かっていない

自分は冷静だと思っている。

自分は公平だと思っている。

自分は部下をちゃんと見ていると思っている。

自分は感情で判断していないと思っている。

でも、

本当にそうでしょうか。

人には、

自分でも気づいていない偏りがあります。

好き嫌い。

過去の経験。

思い込み。

その日の気分。

期待。

疲労。

立場。

いろいろなものが、

判断に影響します。



なぜ自分は怒ったのか

例えば、

部下がミスをした。

瞬間的に、

「なんでこんなこともできないんだ」

と思う。

ここで、

そのまま怒鳴ることもできます。

でも、

一度自分を見る。

なぜ自分はこんなに腹が立ったのか。

本当に、

今回のミスだけが原因なのか。

自分が忙しくて、

余裕がなかっただけではないか。

同じ説明を何度もしたから、

期待を裏切られたように感じているのか。

自分なら簡単にできることだから、

相手もできて当然だと思っていないか。

そもそも、

自分の教え方が悪かった可能性はないか。

ここまで考えると、

同じ出来事でも見え方が変わります。



感情と事実を分ける

心理学を学んでから、

私が特に意識するようになったのは、

感情と事実を分けること

です。

「腹が立つ」

これは感情。

「この社員は仕事ができない」

これは評価。

でも、

本当に事実でしょうか。

今回一回ミスしただけかもしれない。

自分が嫌いだから、

悪く見えているだけかもしれない。

期待していたから、

失望が大きいだけかもしれない。

そこで一度、

自分の感情を横に置いて見る。

それだけでも、

判断は変わります。



メタ認知――自分を一歩引いて見る

こうした、

自分の考えや感情を一歩引いて見る力に関係する考え方として、

メタ認知

があります。

簡単に言えば、

自分が今何を考え、どう判断しているのかを、自分自身で認識すること

です。

怒っている自分を、

もう一人の自分が見る。

焦っている自分を見る。

決めつけている自分を見る。

「今、自分は感情で判断しそうだな」

と気づける。

これができるだけでも、

人への接し方はかなり変わります。



管理職ほど、自分を俯瞰する必要がある

管理職になると、

自分の言葉の影響が大きくなります。

一般社員同士なら、

少し機嫌が悪くても、

周囲への影響は限定的かもしれない。

でも管理職が不機嫌だと、

部署全体が気を使う。

管理職が怒鳴ると、

報告が止まる。

管理職が誰かを嫌えば、

その人への評価にも影響する可能性がある。

つまり、

立場が上がるほど、

自分の感情をそのまま出すリスクも大きくなる。

だからこそ、

自分を俯瞰する力が必要になります。



「自分は正しい」が一番危ない

私は、

「自分は絶対に正しい」

と思い始めた時が、

一番危ないと思っています。

人間なので、

当然間違えます。

私も間違えます。

判断を誤ることもある。

感情的になることもある。

人を誤解することもある。

だから、

「自分も間違っているかもしれない」

という前提を持つ。

心理学を学んでいると、

人間がどれだけ簡単に思い込み、

偏り、

都合よく解釈するかが分かります。

そして、

それは他人だけではありません。

自分も同じです。



確証バイアスは、自分にもある

例えば、

一度、

「この社員はやる気がない」

と思う。

すると、

やる気がないように見える行動ばかり目につく。

遅刻した。

「やっぱりやる気がない」

質問しなかった。

「ほら、やる気がない」

でも、

残業していた。

改善案を出していた。

後輩を助けていた。

そういう部分は見えなくなる。

これが確証バイアスの怖さです。

だから、

人を評価する前に、

「自分は最初に決めつけていないか」

を見る。



基本的帰属の誤り

人を見る時に関係する心理学として、

基本的帰属の誤り

というものもあります。

人は、

他人の行動を、

その人の性格や能力のせいだと考えやすく、

状況の影響を軽く見てしまう傾向があります。

例えば、

社員が仕事でミスをした。

「注意力がない」

と思う。

でも実際には、

仕事量が異常だった。

人が足りなかった。

睡眠不足だった。

指示が曖昧だった。

情報共有されていなかった。

可能性はいろいろあります。

本人の責任がゼロという話ではありません。

でも、

性格だけで判断してはいけない。



自分の場合は状況のせい、他人の場合は能力のせい

面白いのは、

自分がミスした時は、

「今日は忙しかった」

「説明が悪かった」

「時間がなかった」

と状況を見る。

でも、

他人がミスすると、

「注意力がない」

「仕事ができない」

となりやすい。

これも、

自分を俯瞰することが必要な理由です。



投影

もう一つ、

投影

という考え方があります。

自分が持っている感情や考えを、

相手も持っていると思ってしまうことがあります。

例えば、

自分は残業を苦にしない。

だから、

「みんなも別に嫌じゃないだろう」

と思う。

自分は飲み会が好き。

だから、

「部下も楽しんでいる」

と思う。

自分は厳しく育てられて良かった。

だから、

「部下も厳しくした方が伸びる」

と思う。

でも、

相手は自分ではありません。

ここを忘れると、

距離感を間違えます。



心理学を学ぶほど、人を決めつけなくなった

これは少し意外かもしれません。

心理学を学ぶと、

人を簡単に分析できるようになる。

そう思われることがあります。

でも私の場合は逆です。

学ぶほど、

簡単に決めつけなくなりました。

なぜなら、

人の行動には、

いろいろな理由があると分かるからです。

この人は、

なぜこう言ったのか。

この人は、

なぜ動かなかったのか。

この人は、

なぜ怒ったのか。

一つの行動だけで、

「こういう人」

とは決められない。



心理学用語を、人を決めつけるラベルにしない

ここも大切です。

「あの人は承認欲求が強い」

「あの人は自己肯定感が低い」

「あの人は○○バイアスだ」

心理学用語を知ると、

人にラベルを貼りたくなることがあります。

でも、

それでは意味がありません。

心理学用語は、

人を分類するための言葉ではなく、

考えるためのヒント

として使うべきだと思っています。



人を救うためでも、正解を押し付けるためでもない

私は教育でも、

「正解を与えればいい」

とは思っていません。

以前から書いているように、

選択肢を増やす。

考える材料を渡す。

そして、

最後に決めるのは本人。

心理学も同じです。

「あなたはこういう人だから、こうしなさい」

ではなく、

「こういう可能性もある」

「こう考える方法もある」

と、

選択肢を増やすために使う。



営業でも同じ

営業で心理学を使う時も、

私は相手を騙すために使うものではないと思っています。

例えば、

「今買わないと損ですよ」

と不安を煽る。

心理テクニックを使って契約させる。

短期的には売れるかもしれない。

でも、

それでは長く続きません。

本当に見るべきなのは、

相手が何を求めているか。

何が不安なのか。

何に困っているか。

何を選べば相手にとって良いのか。

そこです。



心理学を知ると、営業で「聞く」が増える

心理学を学ぶ前は、

営業というと、

「上手に話す」

イメージを持つ人も多いと思います。

でも私は、

営業ほど聞く力が重要だと思っています。

相手の話を聞く。

言葉だけではなく、

なぜその言葉が出たのかを考える。

そして、

勝手に決めつけない。

「高い」と言われたら、

すぐ値引きするのではなく、

「どの部分が一番気になりますか?」

と聞く。

それだけでも、

見えるものが変わります。



心理学を学んだから、怒らなくなったわけではない

ここも正直に書いておきます。

心理学を学んだからといって、

感情がなくなるわけではありません。

普通に腹が立つこともあります。

イライラすることもある。

嫌だと思う人もいる。

心理学を学んだから、

常に冷静で完璧になったわけではありません。

ただ、

自分が感情的になっていることに気づきやすくなった。

これは大きいと思っています。



「今の自分、おかしくないか?」と思える

怒っている時に、

「今の自分、少し感情に引っ張られてないか」

と思える。

嫌いな相手を評価する時に、

「この評価に自分の好き嫌いが入ってないか」

と思える。

部下が動かない時に、

「本人だけの問題なのか」

と思える。

それだけでも、

判断を一度止めることができます。



心理学は、自分を止めるブレーキにもなる

私は、

心理学の大きな価値の一つは、

自分自身にブレーキをかけられること

だと思っています。

自分が正しいと思った時。

怒った時。

誰かを嫌いになった時。

決断を急いでいる時。

一度、

「自分は今、何に影響されているんだろう」

と考える。

その数秒だけでも、

人を傷つける言葉を止められることがあります。

判断ミスを防げることがあります。



人を理解する前に、自分を理解する

管理職になると、

人を見なければならない。

営業なら、

顧客を見なければならない。

経営者なら、

組織を見なければならない。

でも、

そのすべてを見ているのは、

自分です。

その自分の見方が歪んでいたら、

全部が歪みます。

だから、

人を見る前に、

自分の見方を見る。

私はそれが大切だと思っています。



なぜ私は心理学を学んでいるのか

私は、

管理職として、

営業や教育に関わっています。

現場では、

人について考える場面が本当に多い。

なぜ動かないのか。

なぜ辞めるのか。

なぜ売れないのか。

なぜ報告しないのか。

なぜ怒るのか。

なぜ同じことを言っても伝わる人と伝わらない人がいるのか。

その答えを、

「最近の若者だから」

「性格だから」

「やる気がないから」

だけで片付けたくありませんでした。

だから心理学を学んでいます。



感覚を、言葉にするために

現場経験だけでも、

分かることはあります。

心理学だけでも、

分かることはあります。

でも私は、

どちらか一方だけでは足りないと思っています。

現場で感じたことを、

心理学で整理する。

心理学で学んだことを、

現場で確かめる。

そして、

それを言葉にする。

このシリーズを書いている理由も、

そこにあります。



あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、

いつもの教育や経営の話とは少し違い、

なぜ私が心理学を学び、

仕事の話の中で心理学を使っているのかを書きました。

心理学を学ぶことで、

他人の行動を理解しやすくなりました。

でも、

それ以上に大きかったのは、

自分自身を見るようになったこと

だと思っています。

なぜ腹が立ったのか。

なぜその人を嫌だと思ったのか。

なぜ自分はその判断をしたのか。

自分の考えを、

一歩離れたところから見る。

完全にはできません。

人間なので、

感情にも流されるし、

間違えることもあります。

でも、

「もしかしたら自分が間違っているかもしれない」

と思えるだけでも、

かなり違います。

心理学は、

他人の心を読む魔法ではありません。

人を操るための道具でもありません。

私にとって心理学は、

人を理解するための言葉であり、自分自身を俯瞰するための鏡です。

そして、

管理職として人を教育するなら、

営業として人と向き合うなら、

経営者として人を動かすなら、

まず自分自身が、

どう人を見ているのかを知らなければならない。

そう思っています。

次回からはまた、

現場の具体的な話に戻ります。

ただ、

これからの記事で心理学用語が出てきた時、

「人を分析して決めつけるために使っているのではない」

ということだけ、

今回の記事を通して伝われば嬉しく思います。

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