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(257) 西山太吉「記者と国家―西山太吉の遺言」



こんにちは。

2月は逃げるといいますが、本当に早い逃げ足です。本来なら、うららかな要項を感じ、春近しを実感するはずですが、なんとも陰鬱な弥生3月になりました。3月には異称として桜月、雛月、夢見月などがあります。雅で心弾む名前ですね。

でも・・・、新型コロナウイルスによる肺炎の蔓延で、社会生活には極めて深刻な影響が出ています。現役の皆さんは対応でてんやわんやではありませんか。中小零細企業や非正規雇用者にとっては死活問題です。すべてが後手後手で、無責任無能な政治が悪性疾患となって、不安だけがまさに妖怪の如く社会を覆っています。

さて、今回の書評はメディアの在り方を問う警世の書です。




西山太吉「記者と国家―西山太吉の遺言」岩波書店 2019年

著者の名を聞いて、あの事件を思い出す人はそれほど多くはない。佐藤首相の沖縄返還交渉の過程で、日本側が米国言いなりに莫大な財政負担と、卑屈な密約があった。核の持ち込みを容認し、米軍の海外出撃を黙認する事項を含み、その内容と文書は隠蔽された。新聞記者だった著者はそれを暴露するが、入手先の女子職員との関係が問われ、裁かれる。メディアの沈黙と政権の巧妙かつ強権的な隠蔽は、今日の事態の前触れであった。




【元土建屋のひとり言】


工事を施工するうえで、「段取り八分」または「段取り七分」という言葉がある。工事を受注し現場に乗り込む前に、しっかりと準備を整えておくならば、安心して仕事に取り組めるという意味である。

土木工事は、地面より下が主たる対象になることが多い。地下がどのようになっているかは上からは見えないので、慎重に調査をしなければならない。地質、つまり土質がどのような層をなしているのか、堅固な土質か崩れやすいのかによって工法が異なる。

特に地下水の水位は大きな問題点だ。都市には複雑な埋設物がある、水道管、ガス管、下水道管、それに加えて情報関連の配管もあるし、大都市には地下道、地下鉄も想定される。関係する役所や事業会社に埋設物の図面の確認を求めなければならない。もし切断すればどうなるかは想像に難くないし、モノによっては会社が傾きかねない損害賠償を請求される。

まだまだある。工事の内容と規模によって適正な重機、支保工の手配をし、現場での通路と資材の仮置き場などを確保する。地元住民への説明と気配りも大事だ。

何故こんな話をするか。たかが一工事でも事前準備は周到を極める。それなのに全国の学校の休校、イベントなどの中止を突然求めるなど正気の沙汰ではない。事態が事態だけに休校・中止はありうる選択肢なのは誰もが理解する。しかし、それには事前の十分な説明と手配り・補償があって、はじめて賢明な決断となる。国民への思いと社会のありようへの深い洞察が無ければならないはずだ。後手後手の対応批判に慌てふためき、決断力を誇示しようとする安倍という人物の愚かさ、想像力の欠如を憂う。国民は暗愚の宰相をいつまで戴くつもりなのだろうか。

そんなわけで、段取りの大切さを改めて思い出した次第。




<今週の本棚>


岡崎武志「上京する文學―春樹から漱石まで」ちくま文庫 2019年

副題にあるように、古今の名だたる作家文士は東京を目指す。その心情は如何に。上京には必ず汽車、それも夜行列車が登場するのも興味深い。夜行列車、青函連絡船を乗り継ぎ、上野駅に降り立った私自身の郷愁とも通じる。


首都高速道路株式会社/阪神高速道路株式会社ほか 監修「高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法」講談社 2019年

普段何気なく利用している道路や高速道路を、こんな角度で見てみてはどうだろうか。熟達の位置取りにより映し出され、直線と曲線が織りなす構造美は人を魅了する。ダムなどの巨大構造物は利権の塊として、不要とは思いつつ、こんな建造物に魅力を感じるのは出自故だろうか。


ルース・クラウス「はなをくんくん」福音館書店 1967年

前回、福寿草への思いを語ったところ、児童書の達人よりこの本を紹介された。漂い始める春の香りには心揺さぶられる。何度も読み返し、モノクロの絵から匂い立つ春への希求が迫り、最終ページの黄色の花びらに鮮烈さが印象付けられる。暖かい本だった。




年度末、それだけでも気ぜわしい時期です。新型コロナウイルスとインフルエンザに負けず、どうぞご健勝でお過ごしください。


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