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琵琶湖歩き旅④ JR近江今津駅 → 海津大崎 → 塩津 → 賤ヶ岳 → JR木ノ本駅

著 dewa_heron

4回目 (JR近江今津駅 → 海津大崎 → 塩津 → 賤ヶ岳 → JR木ノ本駅)

前半

琵琶湖を徒歩で制覇する旅。前回は近江舞子駅を出発して、3回にわたってお世話になった大津市をついに出た。続く高島市では、いざという時に鉄道に頼れない「魔の区間」(風車街道)に突入するが、意地と気合で突破。近江今津まで進み、湖西路の制覇が目前に迫る。しかし、筆者の前には、奥琵琶湖の難所が立ちはだかっていた…。


第1回目はこちらから→


0.奥琵琶湖に挑む

2025年6月1日(日)。4回目。
この日の天気は曇り。ときどき小雨。まるで自分の不安な心情を映し出すような天気である。
何事かと思われるかもしれないが、後できちんと説明するので、まずは私の鉄道趣味に付き合ってほしい。

朝8時半頃。京都駅の0番のりば。いつもの湖西線方面ののりばと異なるが、それは特急「サンダーバード」に乗るためである。

駅に着くのが少々早かったようで、先に高山行きの特急「ひだ」が到着した。
数年前に新型のHC85系が導入されて以降、何度かHC85系で走る「ひだ」を見かけたが、至近距離で見たのは初めて。いつか乗ってみたい車両の1つである。
それにしても、この大阪発の「ひだ」は2両しかない。途中、名古屋発の列車と連結すると分かっていても、大都市圏に2両の列車は違和感を覚える。

「ひだ」が発車してしばらく、「サンダーバード」敦賀行きが到着。

北陸新幹線の敦賀延伸により、運行区間が大阪~敦賀間と大幅に短縮したが、それでも利用客は多い印象。大半の方は敦賀乗り換えで福井・金沢方面に向かうのだろうか。福井・金沢といえば、新幹線の延伸で首都圏からは1本で移動できるようになった。
一方で、関西圏や中京圏からは直行する列車が無くなり、乗り換えが必須になった。新幹線延伸というと、ポジティブな印象を受けることが多かったが、今回ばかりは「便利になったのは関東だけでは?」という疑問を捨てきれない。
延伸区間はJR西日本なので、西にも利益が回ってくるのは理解しているのだが…。


「サンダーバード」だと京都から近江今津までは35分程度。これまで3回に分けて湖西路を歩いてきたことがむなしくなるほどの高速運転。あっという間に駅に着き、列車を降り、お手洗いを済ませて、駅前のロータリーに出た。相変わらずどんよりした雰囲気。空は薄暗いし、人はほとんどいない。よく考えたら、自分だけお手洗いに行って、遅れて出てきたのだから当たり前か。

ここで今回の行程を確認する。目的地は長浜市木之本町の木ノ本駅(町名と駅名で表記が異なる)。奥琵琶湖を1日で突破する計画だ。
まず近江今津駅から風車街道を経由してマキノ駅前まで進む。後で触れるが、マキノには過去何度か行ったことがあるため、このあたりは問題ない。



問題はその次。マキノ駅から長浜市西浅井町の永原駅まで移動する。この2駅は隣どうしだが距離が長い。そのうえ、間には山々が立ちふさがっている。今回の1つ目の難所である。

永原駅まで行くルートは2つしかない。1つ目は県道557号線を通るルート。海津大崎を湖岸沿いに周る。ビワイチのコースではあるが、歩道は整備されていない。
2つ目は国道161号線を北上し、途中から進路を東に変えて奥琵琶トンネル(国道303号線)を通るルート。歩道は整備されているが、ビワイチでは推奨されていない。さらにいえば山間部を通るため、野生動物と遭遇するリスクも考えなければならない(あくまで比較しての話であり、海津大崎側のリスクが無いわけではない)。

永原駅にたどり着いたら、次は塩津という地域まで進む。この区間に関しては、国道303号線一択。一応今回2つ目の難所と見ていたが、トンネルが整備されているので、そこまで難易度は高くない。

塩津から先は国道8号線を長浜方面に進む。この日のゴールは木ノ本駅としているが、塩津と木ノ本駅の間には賤ヶ岳という山がある。歴史好きならご存じだろう、羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)と柴田勝家が激突したあの古戦場である。この賤ヶ岳が今回3つ目の難所。

国道8号線には賤ヶ岳トンネルが通っているが、塩津から入ろうとすると手前で歩道が途切れてしまうのである。さすがに1桁国道の端を歩くのは危険なので、もう1つの道である県道514号線を進むしかない。この県道を進むと、途中までくねくねした山道を登り、標高が上がったところでトンネルを通り、麓までくねくね道を下りることになる。当然歩道はついていない(一応ビワイチのコースではある)。

ここまで3か所難所を挙げているが、このような区間は奥琵琶湖にしかない。
場合によってはリタイアも選択肢の1つになりうる

裏を返せば、奥琵琶湖を無事に通過できれば、「琵琶湖を徒歩で制覇」できる可能性はぐっと上がる。この歩き旅の中でも、今回が運命の回になると言っても良いだろう。それだけに、朝から不安を抱えた状態で琵琶湖に向かっていたのである。


1.近江今津駅→マキノ駅 ~カタカナと思い出の街へ~

とはいえ、歩かないことには何も始まらないので、とりあえず風車街道を北上する。

出発は9時30分頃。近江今津駅前を出てすぐのところに、「琵琶湖周航の歌資料館」があった(歌については前回言及)。少し歩くと左側に「今津ヴォーリズ資料館」もある。こちらは、1923(大正12)年にアメリカ人建築家のヴォーリズの設計で建てられた。完成当時は銀行の支店として使用されていたという。

このあたりは合併前の旧今津町の市街地であり、住宅や店舗も多い。風車街道が主要な道路になっているのか、平和堂、ホテル、その他地元の飲食店…と施設が並んでいた。

石田川というそこそこ幅の広い川を渡ってしばらくすると、今津の市街地が途切れる。

その後琵琶湖が見えてきたと思いきや、風車街道とサイクリングコースが分かれて、風車街道は少し山側にずれた。私は歩道のついている風車街道を選んだため、結局琵琶湖はほとんど見えない状態でマキノまで進むことになった。相変わらず「琵琶湖歩き旅」とは…?ちなみに、サイクリングコースは琵琶湖沿いに続いているので、自転車で行けば景色は最高だろう。

結局このあたりの時間帯で覚えているのは、途中ソーラーパネルと政治家のポスターが並ぶ場所で、遠くに見える湖西線(心の友)を見ながら休憩したことくらいである。それにしても、田園地帯に高架線が通っている風景はいつ見ても飽きない(新幹線を考えると珍しくはないか)。
マキノまで移動している間に特急「サンダーバード」を2~3回ほど見送っている。一方、近江今津以北は普通列車の本数が減るため、それらしい列車はあまり見なかった。

さて、高島市の区間もそろそろ終点が近づいている。

旧今津町を抜けて、旧マキノ町に入る。桜の名所と知られる海津大崎、紅葉スポットとして知られるメタセコイア並木、スキー場や温泉、民宿村のあるマキノ高原などがある自然豊かな町である。合併で消滅するまでは、全国でも珍しいカタカナ名の自治体だった。

実はマキノには過去に何度か訪れたことがある。

高校を卒業したときに、先輩や同級生たちと卒業旅行に行ったのがマキノ高原だった。3月下旬にも関わらず、泊まった旅館の裏側に雪が残っていたのが印象的である。旅館の雰囲気といい、周囲の景色といい、なんとなく母の実家のある島根県津和野に似ている気がした。

夜にBBQを行い、翌日昼にドッジボールを楽しみ、なぜか一緒にいた一部の友人がドッジボールしている横で休みだすという奇妙な光景が生まれたことを覚えている。
さらにいえば、先輩たちがメタセコイア並木を散策するために外出して、自分もその輪に入ろうとしたが、急に手洗いに行きたくなり色々手間取っているうちに合流できなくなり、とはいえ旅館で休んでいる人の輪に入ってじっとするのも性に合わず、旅館の周りをひたすら散歩して、近くのお地蔵様に手を合わせたという意味不明なことをしていた記憶もある。

要は昔から1人でいることが好きで、周りに合わせるのがどちらかといえば下手だったということである。いや、この言い方は適切なのか。人のことを考えすぎて、人のことが怖くなって、それで人に近づくことから逃げていただけではないか。…それでも友人たちは受け入れてくれた。

実はこの旅の記録、真っ先に読んでほしいのは、執筆をすすめた友人なのだが、次に読んでほしいのはこのときの友人たちだったりする。こんな長いものを押し付けられても迷惑だろうけど。

話が変な方向に行ってしまった、申し訳ない。軌道修正しよう。

11時前、マキノ駅前に到着。ちなみに駅前は少し整備されているが、旧マキノ町の(行政上の)中心地はここから2~3kmほど離れている。メタセコイア並木やマキノ高原はもっと離れているが、バスが出ているのでご安心を。昔メタセコイア並木の紅葉を歩いて見に行ったことがあるが、正直徒歩はおすすめできない。(注:2025年秋に行ったときは、車の混雑が凄まじかった。バスの本数は少ないので、事前に調べてから訪問されることをおすすめする。)

マキノ駅前にて。北を向いて山並みを撮る。これらの山を越えれば福井県か。

まずここで1つ目の決断。最初の難所である永原駅までの区間をどのように進むのか。天気予報では、昼頃から高島市も長浜市も天気が回復すると言われていたが、この時点で雲はまだ分厚かった。こういう状況で山間部に入ると何が起こるかわからない。

…ということで、海津大崎を周ることにした。歩道が整備されていないのが気がかりだったが、例の「ウルトラウォーキング」もこのルートだったので徒歩で通れないわけではない。ここは進むしかない。

ところで、もし途中で危険と判断すれば、マキノ駅まで引き返して電車で永原駅に向かうことを考えていた。そうなると「徒歩で琵琶湖制覇」の計画が破綻してしまうが安全最優先である。


2.海津大崎

こうなったらさっさと海津大崎を通過するに限る…、と思っていたが、マキノ駅周辺から海津大崎の道に沿って昔ながら街並みが続いており、これが意外と長かった。
江戸時代に琵琶湖の波対策で築かれた石積、浄土真宗の寺院、なぜか派手な見た目をしている海津迎賓館、鮒ずしのお店「魚治」、小学校に続く道に飛び出し坊や…。
じっくり散策できなかったのが心残りだが、このときの私には観光を楽しむ心の余裕が無かった。鮒ずしはお土産に買いたかったな…。

海津大崎の位置。

街並みの端まで行くと、県道557号線、西浅井マキノ線に突き当たる。
「西浅井」がこれから向かう長浜市西浅井町であり、先程触れた永原や塩津がある地域である。
左(西)に曲がると国道161号線に行けるが、もうこの敦賀に向かう国道を通ることはない。右に曲がった先が、海津大崎である。

私は写真でしか見たことが無いが、春になると湖岸に並ぶ桜が美しい景色を見せてくれる。今回は6月に来ているので遠目で見た感じでは他の湖岸と大差なかったが、車道の横に自然歩道や東屋があるあたり、ここが景勝地であることを物語っている。

駐車用とみられるスペースがあり、そこに何台か車が停まっていた。何人かが砂浜に下りていたので、自分も同じように下りて琵琶湖を眺める。

相変わらずの曇り空。一面に灰色の湖が広がる。
対岸は遠く、ぼんやりと黒い山並みが見える程度。
打ち寄せる波は不気味なほど穏やかだった。
こんなに色彩の無い琵琶湖の景色は初めてである。

自然歩道を東に進む。砂浜を下りた他の観光客は途中で引き返したらしく、気づけば1人だった。
やがて船着き場のあるところに到着。駐車場と売店らしき建物もある。ただし、船着き場と売店は閉まっていた。おそらく桜の時期に稼働するのだろう。駐車場のほうには、確か3台車が停まっていた。
駐車場から山の方に階段がのびており、そこを上がっていくと「大崎寺」というお寺にたどり着いた。

大崎寺、近江西国9番の札所で「大崎観音」の呼び名で親しまれている。
本堂で旅の安全を祈願した。奥には阿弥陀堂という建物もあった。説明書きによると、このお堂には「血天井」があるという。安土城落城時に血が付いた建材が使われているのだとか。
なんかこの歩き旅には、戦国~安土桃山時代の人名や出来事が結構登場しているように思える。
ちなみに、このときの参拝客は私以外に1人だけ。明らかに車の方が多いのだが。コワイナコワイナ。

…そんなことはさておき、先に進もう。

12時頃、大崎寺を出発。
徒歩の場合、ここから海津大崎が牙を剥く。もっとも空から見ると海津大崎そのものが歯みたいだが。

自然歩道が落石で通行不可のため、通行できるのは県道のみ。歩道の区別が無いため、道路の端を注意して歩かなければならない。
自動車の交通量はそこそこだったが、それ以上に向こう側から走ってくる自転車の数が多かった(サイクリングの場合、琵琶湖を反時計回りに周ることが推奨されているため)。幸い、止まって自動車や自転車を避けるスペースはあったのでなんとかなりそうである。

移動、自転車の接近を確認、退避、移動再開。

また自転車が見えた。
退避、安全を確認、移動を再開…。

この繰り返しである。自動車どうしのすれ違いがあると少し面倒だと思ったが、そのようなシーンは無かった。意外にもところどころに車が停められそうなスペース(停めて良いかは知らない)や休憩場所があったのが救い。それ以外は、道路沿いにはたまにキャンプ場や利用されているか分からない保養施設(と思われる)が見えるだけで、基本は何も無い。

途中、工事による片側通行区間に入る。
「歩行者、自転車の皆様…」という看板のお決まりのフレーズに突っ込みを入れる。
こんなところ通る歩行者は自分ぐらいだろう。ああ早く抜け出したい。

どれだけ歩いただろうか、気がついたら高島市を出て長浜市に入っていた。

さらに進むと、琵琶湖の対岸が近くなった。おそらく葛篭尾崎だろう。
そろそろ永原かなと安心していたが、やはり奥琵琶湖は甘くない。ここからがもっと長かった。
キャンプ場は見えた。浜辺でレジャーを楽しむ家族連れも見た。遠くに集落が見えるようになった。
それでも県道が続いていることを悟る。諦めかけたころに別の施設が見えて…その繰り返し。

このループが終わったのは13時頃。突然前に家が並んでいるのが見えた。大浦という地区らしい。助かった。これで今回1つ目の難所をクリアした。

さて、この調子で次行こう。奥琵琶湖の旅はまだこれからである。
(後半につづく)

現在の進捗状況。赤線がこれまで歩いた区間。矢印で示している赤線の終点が大浦地区。


・ご注意

奥琵琶湖を歩くにあたり、一番注意が必要なのはクマやサルなどの野生動物。私も直前まで周辺のクマ目撃情報を調べて、出没がないことを確認したうえで旅に臨んでいる。もちろん、「これまで出没がない=100%安全」というわけではない。正直、奥琵琶湖を旅するなら、徒歩はおすすめできない


・参考

高島市ホームページ「今津ヴォーリズ資料館」 https://www.city.takashima.lg.jp/soshiki/shokokankobu/kankoshinkoka/6/2/642.html(2025/11/03確認)
今津ヴォーリズ資料館|滋賀・びわ湖観光情報
https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/26454/ (2025/11/03確認)
大崎寺(大崎観音)|滋賀・びわ湖観光情報
https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/676/ (2025/11/09確認)

※カバー画像について
海津大崎のあたりで撮った写真。正直、撮ったときの状況はよく覚えていない。一目見て思うのは見通しの悪さ。ここでわざわざ撮ったのだから、おそらく景色の良さそうなポイントが無かったのだろう。先の見えない不安をよく表した1枚かもしれない。

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