見出し画像

顧客価値とは?

マーケティングトラックで学ぶ座学|顧客価値とは?

はじめに

マーケティングを勉強すると、何度も登場する言葉があります。

それが、

「顧客価値(Customer Value)」

です。

マーケティングというと、

「どうやって商品を売るのか」

「どうやって広告するのか」

「どうすれば売上を増やせるのか」

という学問だと思われがちです。

しかし、本質はもう少し手前にあります。

「顧客にとって価値のあるものをつくり、その価値を届ける」

これがマーケティングの中心的な考え方です。

どれだけ高性能な商品を作っても、顧客がそこに価値を感じなければ売れません。

逆に、技術的にはそれほど複雑ではなくても、顧客が大きな価値を感じれば、大きなビジネスになることがあります。

今回はマーケティングの中心概念である「顧客価値」について学びます。

第1単元 そもそも「価値」とは何か

マーケティングにおける価値は、単純に商品の価格を意味するわけではありません。

例えば、

100円の水

500円の水

1000円の水

があったとします。

中身だけを見れば、大きな違いがない場合もあります。

しかし、

・砂漠で喉が渇いている
・高級レストランで飲む
・有名ブランドの商品である
・健康によい成分が含まれている
・持ち運びやすい容器になっている

などによって、その水に感じる価値は変わります。

つまり、

価値は商品そのものだけで決まるわけではありません。

「誰が、いつ、どこで、何のために使うのか」

によって変化します。

第2単元 顧客価値の基本構造

顧客価値を非常に単純化すると、

顧客価値 = 顧客が得る便益 − 顧客が負担するコスト

と考えることができます。

例えば500円のお弁当を買ったとします。

顧客が得るものは、

・空腹が満たされる
・おいしい
・栄養が取れる
・料理する必要がない
・時間を節約できる

などです。

一方、顧客が負担するものには、

・500円という金銭
・店まで行く時間
・商品を探す手間
・レジに並ぶ時間

などがあります。

つまり顧客は、

「500円の商品を買う」

という判断だけをしているわけではありません。

無意識のうちに、

「得られるものと負担するものを比較している」

のです。

第3単元 顧客価値を構成する4つの価値

顧客が商品から感じる価値はいくつかに分類できます。

① 機能的価値

商品そのものの性能です。

例えばスマートフォンなら、

・処理速度
・カメラ性能
・バッテリー性能
・画面の見やすさ
・耐久性

などです。

これは最も分かりやすい価値です。

② 経済的価値

価格に対してどれだけ得をするかという価値です。

例えば、

「同じ性能なら安い」

「長く使えるので結果的に安い」

「電気代が少ない」

などです。

単純な販売価格だけではなく、

使用期間全体で必要になる費用

まで考えることがあります。

③ 心理的価値

商品を持つことで感じる、

・安心
・満足
・楽しさ
・誇らしさ
・愛着

などです。

ブランド戦略では非常に重要になります。

④ 社会的価値

商品を使うことによって、

「他人からどう見られるか」

という価値です。

高級車、時計、ファッション、ブランド品などでは特に重要です。

また近年では、

「環境に配慮した商品を使う」

という行動そのものが社会的価値になる場合もあります。

第4単元 顧客価値と価格

ここで重要なのは、

価格が安ければ顧客価値が高いわけではない

ということです。

例えば、

A商品 1000円
B商品 3000円

だったとしても、

B商品の方が、

・性能が高い
・長持ちする
・使いやすい
・保証が充実している

なら、顧客はB商品の方を「得だ」と判断する可能性があります。

つまり企業が考えるべきなのは、

「どうやって一番安くするか」

ではなく、

「この価格を払ってでも欲しいと思える価値をどう作るか」

なのです。

第5単元 知覚価値

ここでマーケティングでは非常に重要な問題が出てきます。

企業が考えている価値と、

顧客が感じている価値は、

必ずしも一致しません。

例えば企業が、

「この製品には最新技術を10個搭載しました」

と言っても、

顧客が、

「その機能、使わないんだけど」

と思えば価値になりません。

重要なのは、

企業が作った価値ではなく、顧客が認識した価値

です。

これを「知覚価値」と考えることができます。

第6単元 価値提案(Value Proposition)

企業は、

「私たちは顧客にどんな価値を提供するのか」

を明確にする必要があります。

これが、

価値提案(Value Proposition)

です。

例えば、

「安く提供する」

だけでも価値提案になります。

しかし他にも、

・圧倒的に便利
・高品質
・時間を節約できる
・安心できる
・楽しい
・自分らしさを表現できる

などがあります。

企業はすべての価値を同時に最大化する必要はありません。

むしろ、

「誰に、どんな価値を提供するのか」

を明確にすることが重要です。

第7単元 STPと顧客価値

ここで顧客価値はSTPとつながります。

STPとは、

Segmentation
市場を分ける

Targeting
狙う顧客を決める

Positioning
顧客の中での自社の位置を決める

という考え方です。

なぜ市場を分けるのでしょうか。

理由は簡単です。

人によって価値が違うからです。

例えば自動車でも、

ある人は、

「安さ」

を求めます。

別の人は、

「燃費」

を求めます。

別の人は、

「速さ」

を求めます。

さらに別の人は、

「高級感」

を求めます。

全員に同じ価値を提供するのは難しい。

だから企業は、

「どの顧客の、どの価値を満たすのか」

を決めるのです。

第8単元 製品と顧客価値

マーケティングでは、

「顧客は商品そのものを買っているのではない」

という考え方があります。

例えばドリルを買う人が本当に欲しいのは、

ドリルそのものではなく、

「穴を開けること」

です。

さらに考えると、

穴そのものが欲しいとも限りません。

棚を取り付けたいのかもしれません。

つまり、

ドリル

棚を取り付ける

部屋を整理する

というように、顧客が本当に求めている価値を掘り下げる必要があります。

企業が売っている「商品」と、

顧客が買っている「価値」は、

同じとは限らないのです。

第9単元 サービスと顧客価値

サービス業ではさらに分かりやすくなります。

例えば美容院。

顧客は、

「髪を切る行為」

だけを買っているのでしょうか。

実際には、

・きれいになりたい
・若く見られたい
・気分転換したい
・自信を持ちたい

といった価値を求めている可能性があります。

ホテルも同じです。

顧客は単純に、

「部屋」

を買っているのではありません。

安心して眠れること、非日常を楽しむこと、家族との思い出なども含めて購入しています。

第10単元 顧客満足

顧客価値と非常に関係が深いのが、

顧客満足(Customer Satisfaction)

です。

簡単に考えると、

期待より良かった

満足

期待通りだった

普通

期待より悪かった

不満

となります。

そのため企業は単に品質を上げればよいわけではありません。

広告などで過剰な期待を持たせると、

実際の商品が悪くなくても、

「期待したほどではなかった」

という不満が発生する可能性があります。

第11単元 顧客経験(Customer Experience)

現在のマーケティングでは、

商品だけではなく、

購入前から購入後までの体験全体

を見るようになっています。

これを、

Customer Experience(CX)

と呼びます。

例えばネット通販なら、

商品検索

商品ページを見る

注文する

決済する

配送を待つ

商品を受け取る

使用する

問い合わせる

という一連の流れがあります。

商品の品質が良くても、

注文画面が使いにくかったり、

配送が遅かったり、

問い合わせ対応が悪ければ、

顧客価値は低下します。

第12単元 顧客生涯価値(CLV・LTV)

企業にとって顧客は、

「1回商品を買ってくれる人」

だけではありません。

長期間購入してくれる可能性があります。

そこで使われる考え方が、

Customer Lifetime Value(顧客生涯価値)

です。

日本ではLTVという言葉もよく使われます。

例えば、

1回5000円の商品を、

年間4回、

10年間購入してくれた場合、

単純計算なら、

5000円 × 4回 × 10年

=20万円

となります。

そのため企業は、

「今日1回売ること」

だけではなく、

長期間選ばれる関係

を作ることを重視します。

第13単元 顧客価値とブランド

ブランドも顧客価値を作ります。

例えば、

同じような性能の商品でも、

ブランドA 5000円
無名商品 3000円

だったとします。

それでもブランドAを選ぶ人がいます。

なぜでしょうか。

ブランドによって、

・品質への信頼
・安心
・デザイン
・ステータス
・過去の使用経験

などの価値が加わるからです。

ブランドとは単なる名前やロゴではありません。

顧客の頭の中に蓄積された価値

と考えることもできます。

第14単元 顧客価値とイノベーション

新しい商品を作るときにも、

顧客価値は重要です。

企業が陥りやすい失敗は、

「技術的にすごいものを作れば売れる」

と考えてしまうことです。

しかし、

技術的に優れている

顧客価値が高い

とは限りません。

重要なのは、

その技術によって顧客の生活がどう良くなるのか

です。

技術は手段であり、

顧客価値が目的です。

第15単元 顧客自身が価値を作る

近年のマーケティングでは、

企業が一方的に価値を作り、

顧客が受け取るだけとは考えません。

例えばスマートフォン。

企業はスマートフォンを提供します。

しかし、

写真を撮る
動画を見る
仕事をする
勉強する
ゲームをする
SNSを使う

など、

どんな価値を生み出すかは利用者によって違います。

つまり、

価値は使用する過程でも生まれる

のです。

この考え方は、サービス・ドミナント・ロジックなど現代マーケティングの議論にもつながっていきます。

第16単元 顧客価値を測定する

企業は顧客価値を感覚だけで判断するわけにはいきません。

そこで、

・アンケート
・顧客満足度
・再購入率
・解約率
・口コミ
・レビュー
・購買データ
・NPS
・LTV

などを利用します。

さらに現在では、

POSデータ、

ECサイトの行動履歴、

アプリ利用履歴、

SNSデータなども分析できます。

マーケティングとデータサイエンスが強く結びついている理由の一つです。

第17単元 企業は「商品」ではなく「価値」を競争している

ここまで理解すると、企業競争の見方が変わります。

例えばコンビニの競争は、

「弁当対弁当」

だけではありません。

コンビニが提供している価値には、

・近い
・すぐ買える
・24時間利用できる
・品揃えがある
・ATMがある
・公共料金を払える

などがあります。

つまり競争とは、

商品対商品ではなく、

顧客が求める価値を誰が最も上手に提供できるか

という競争でもあるのです。

第18単元 顧客価値からマーケティング全体を見る

ここまでの内容を整理すると、

市場を調査する

顧客を理解する

顧客を分類する

ターゲットを決める

顧客が求める価値を考える

価値提案を決める

商品・サービスを設計する

価格を決める

販売方法を決める

広告・コミュニケーションを行う

顧客が購入する

顧客体験が生まれる

顧客満足につながる

再購入につながる

LTVが高まる

という流れになります。

つまり、

「顧客価値」はマーケティング全体をつなぐ中心軸

なのです。

顧客価値を一言で理解する

顧客価値とは、

「その商品やサービスを選ぶことで、顧客の生活がどれだけ良くなるか」

と考えると分かりやすいでしょう。

企業側が、

「これは素晴らしい商品です」

と言うだけでは価値は成立しません。

顧客が、

「便利になった」

「時間が浮いた」

「楽しくなった」

「安心できた」

「得をした」

「自分らしくなれた」

と感じて初めて価値になります。

マーケティングで最も重要な視点

企業側から考えると、

「何を売るか」

になりがちです。

しかしマーケティングでは、

「顧客は何を得るのか」

から考えます。

商品を見るのではなく、

その商品を使っている人を見る。

これが顧客価値を理解する第一歩です。

学習のポイント

この単元では、次の内容を理解することが重要です。

・顧客価値とは何か
・便益とコストの関係
・機能的価値
・経済的価値
・心理的価値
・社会的価値
・知覚価値
・価値提案
・STPと顧客価値
・顧客満足
・顧客経験(CX)
・顧客生涯価値(CLV・LTV)
・ブランド価値
・価値共創
・顧客価値の測定

ここまで理解すると、

STP、

4P、

ブランド、

製品戦略、

価格戦略、

サービスマーケティング、

CRM、

マーケティング・サイエンス

といった後の科目が一本につながってきます。

参考図書

早稲田大学商学部のマーケティング教育や、早稲田大学商学同攻会『商学入門』で示されている文献を踏まえると、次の書籍が参考になります。

恩藏直人
『マーケティング』日本経済新聞出版社

和田充夫・恩藏直人・三浦俊彦
『マーケティング戦略』有斐閣

フィリップ・コトラー/ゲイリー・アームストロング/恩藏直人
『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』丸善出版

Philip Kotler / Kevin Lane Keller
『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』

Roger A. Kerin / Steven W. Hartley / William Rudelius
『Marketing』McGraw-Hill

次につながる学習

顧客価値を理解したら、次は、

「顧客満足と顧客ロイヤルティ」

を学ぶと理解しやすくなります。

顧客価値

顧客満足

顧客ロイヤルティ

リピート購入

LTV

という流れが見えてくるからです。

マーケティングとは、単に「商品を売る技術」ではありません。

顧客に価値を生み出し、その価値によって企業も利益を得る仕組みを設計する学問

と考えると、マーケティング全体がかなり分かりやすくなります。

いいなと思ったら応援しよう!