ショートショート 迎え火オペラ
舳先につけた篝火が弾けて音を立てる。どん、と浜から和太鼓がなった。
うおおお。
ハルキが遠吠えをあげると海面が揺れた。彼岸の先祖たちを此岸に招く歌だ。「迎え火オペラ」とハルキは言っていた。
船底の包みをほどき、投げた。底の抜けた柄杓。魔除けだと宮司の息子から言われた。
海面で何かが跳ねた。魚かと俺は思った。徐々に数が増え、篝火がひとつを照らした。ヒトの手だった。
「ハルキ、あれ」
声をかけたがハルキは気づかない。俺は櫓を掴み死ぬ気で漕いだ。何かが体にかかる。柄杓を持った手が迫ってくる。底があった。包みを渡されたときの宮司の息子の暗い笑みが頭をよぎった。
雄叫びをあげた。千切れんばかりに櫓を漕いだ。衝撃で船が岸についたのだと知った。安堵で崩れ落ちる。
「上出来」ハルキが俺を見下ろして笑った。海水に浸った船底から何かを掴んだ。「みんな、おれたちの推しらしい」投げ銭代わりの砂金がきらきらとハルキの指からこぼれ落ちた。
ショートショートNo.804
田原にかさんの毎週ショートショートnoteです。今週のお題は「迎え火オペラ」です。
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