ジャンボとマンボウ
寝不足のまま、二日目の山行がスタートしました。
前回の話はこちらの記事になります。
ねむい夜明け、ねむい朝
トントントン、「Good morning」
現地時間の午前6時、ポーターの誰かは分からないが、ドアを軽くノックし、モーニングコールで起こしに来てくれた。「Hi!Good morning!」と同室のツアーの人が気持ちのいい返事をしてくれた。
実は、モーニングコールの30分前には全員起きており、各自で身支度をしていたところだ。
寝起きは、頭が重たかった。理由は言うまでもなく、昨晩一睡もできなかったからだ。今日も歩かなければならない。一睡もできなかった疲れを吹き飛ばしたくて、持参していたアミノ酸バイタルクエン酸チャージ500ml用(パウダー)を一気に3本も飲んだ。3本飲んだところで何も変わらないし、口の中は爽快にレモンの味が広がっていっただけだった。しかし、アミノ酸とクエン酸というネームバリューもあって、元気になったような気がした。
(⚠️このような飲み方をしないでください。)
もちろん、みんなも寝起きの第一声が「眠れなかった。」である。おそらく、この小屋に宿泊したメンバーは全員思うように熟睡ができなかったかと考えられる。そして、第二声が「思いの外、ドアの音が響いたね。」と言っていた。改めて、キリマンジャロ版レオパレスの凄さを思い知った。
現地時間は午前6時を過ぎたばかりであった。確か、タンザニアの季節は夏だと言っていた。夏の午前6時、日本ではお日様はすでに昇っており、ギンギラギンなキツい日差しを朝からサンサンと地上に向けて照りつかせている。
しかし、ここはタンザニア。夏のタンザニアの午前6時はまだ薄暗く、タンザニアのお日様はまだ夢の中にいるようだった。そして、相変わらず部屋の電気は点かなかった。そのせいか、日本で言う夏の午前6時を疑ってしまうような真逆の暗さだった。

実はモーニングコールとともに、各部屋の前に部屋の人数分の洗面器が用意され、洗面器には温かいお湯を入れてくれていた。すなわち、朝の洗顔である。「洗う」を「ウォシュウォシュ」と呼んでいた。
洗顔のために外へ出てみたが、現地の夏の午前6時は思った以上に外は暗く、マンダラ・ハットを丸ごと覆うように、あたり一面はガスに包まれていた。

タンザニアの朝ごはん事情
日本でもタンザニアでも、ここマンダラ・ハットでも、朝の時間はあっという間に過ぎてしまった。
ポーターに不要な荷物を預け、朝食を摂るために食堂へ集合をした。濃霧で太陽の日差しは降り注いでいないものの、昨晩と比べると外はうっすらと明るく、ヘッドライトを点けるほどではなかった。(相変わらず、食堂の電気も点いていなかった。)
朝食は、ツアー会社の計らいでお粥を準備してくれていた。お粥にプラスをして味噌汁まで準備をしてくれていた。しかしながら、私はアレルギーの関係上、味噌汁は抜いてもらった。
お粥でお腹が満たされたが、ここで食事が終わらないのがタンザニアであった。さらに、フレンチトースト、パンケーキ、卵焼き、ソーセージ、フルーツの盛り合わせまで用意してくれた。
パンケーキは日本のカフェに出てくるような分厚いふっくらとした生地ではなく、厚さ数mmの薄っぺらいパンケーキであった。これまた日本のパンケーキと違い、味が全くないため、蜂蜜またはケチャップをかけて食べるようになっていた。
ツアーメンバーの一人がさっそくパンケーキに蜂蜜をかけて食べてみたところ、「すごい美味しい!日本で売られているレ○ゲ蜂蜜とは違う!」と称賛をした。このコメントを聞いて、私を含むツアーメンバーはパンケーキに蜂蜜をかけて食べてみた。蜂蜜をかけて食べてみた感想は、「たしかに、レ◯ゲ蜂蜜とは違う!これは美味しい!」蜂蜜を口にしたメンバーはクライマーではなく、美食家の集まりみたいなコメントが飛び交った。
日本の蜂蜜みたいにドロッとしておらず、程よいサラサラ(表現が難しい!)で、蜂蜜にしては甘味はあまりなかった。しかし、蜂蜜のパッケージを見たところ純度100%の蜂蜜であった。私はこの蜂蜜が気に入ったため、後日、地元のスーパーマーケットにて同じ蜂蜜を実家のお土産として購入をした。
フルーツは毎食準備をしてくれた。りんご、バナナ、パイナップル、スイカ、日によってはパパイヤが用意されていた。生まれて初めてパパイヤを食べてみた。気になる味は、味がないメロンだった。食感はメロンだけど味がない不思議なフルーツだった。
天国と地獄
朝食を摂っているときの話題は、ぶっちぎりで昨晩の睡眠不足についてだった。話を聞く限り、我々日本人ツアー客は小屋を2棟使っていた。1棟に2部屋だったため、計4部屋に分かれて夜の休息を取った。
言うまでもなく、そのうちの1棟は悲惨な目に遭ってしまった。
まずは、キリマンジャロ版レオパレスの造りが甘いことに文句を言っていた。文句を言い続けていると、ついにはタガが外れてしまったのだろうか、いびきが響いた等、容赦なく文句があちらこちらに飛び交った。さすがにいびきの犯人探しまではしなかったけど。
そんな中、添乗員が
「みなさん、大変な思いをされて昨晩を過ごしたんですねぇ~。
僕と一緒だった人は、みんなぐっすり眠れましたねぇ~!」
耳を疑った。どういうことだろうか。
小屋に当たり外れでもあるのだろうか。私は自分が宿泊した小屋にしかいなかったため、他の小屋がどうだったかは全く分からない。小屋に格差でもあったのだろうか。そんなはずはない。おそらく、どの小屋も似たり寄ったりでキリマンジャロ版レオパレスに違いない。
それなのに、どうして熟睡ができるのだろうか。
続けざまに添乗員は話し続けた。
「実はですね、昨日、僕と同じだった部屋の人みんなに、
なんと!耳栓をお配りしました!
それで、皆さん熟睡ができたかと思います!
皆さん、ちゃんと眠れましたか?」
と、添乗員が同室だった人に問いかけてみたところ、
「耳栓のおかげで眠れました!ありがとー!」
と、喜んでいた。
耳栓⋯!その手があったかぁー!と、一同、目を見開いて大きく頷いた。頷いたのは良かったものの、耳栓なんぞ全くもって頭に無かったし、言うまでもなく用意すらしていなかった。ところが、
「それでですね、実はですね、皆さんの分の耳栓も用意してきました!
ダイソーの耳栓ですけど、すごい優れものなんですよぉー!
今晩、寝る前に皆さんにお配りをしますからね!」
一同、歓喜に包まれる!
こんなに出来る添乗員はいるのだろうかと思った。昨晩は悲惨な夜を送ってしまったけれども、今晩からは安眠ができると思うと、さっきまで寝起きで重たかった頭が一気に軽くなったような気がした。
しかし、この耳栓が仇になってさらに眠れなくなるとは、このとき全く予想をしていなかった。
救世主という名の添乗員のおかげで、みんなの昨晩の怒りは一気に鎮火した。そして、タイミングよく朝食が終わり、ついに二日目の山行が始まろうとした。
ジャンボとマンボウ
二日目のマンダラ・ハットは、雨は降っていないものの、すっぽりとガスに覆われていた。空模様もどんよりとしており、今にも雨が降ってきそうな様子だった。
そのため、いつ雨が降ってきてもいいように、全員レインウェアを着用してからのスタートとなった。
昨日と同様に私は写真撮影に勤しみながら登っていたため、案の定、みんなに置いて行かれていた。そして、ポーターは昨日に引き続きグッチャンと一緒に超ハイパーポレポレで登った。
グッチャンに「昨晩は眠れた?」と聞かれたが、「まったく眠れなかったよ。」と答えたら、「それは大変だ!」と朝から笑いながら二日目の山行が始まった。

今日の山行は昨日と打って変わって登山者が多かった。我々と同様に山頂を目指す団体がいれば、下山をしている団体がいた。
登る者がいれば下山をする者がいる。
下山者とすれ違いざまに、グッチャンが「ジャンボ!」と言うと、相手はノリノリで「ジャンボ!」と返答していた。
「ジャンボ」と聞くと、ジャンボ尾崎さんが真っ先に思い浮かんでしまった私の頭はどうしてしまったのだろうか。これはきっと寝不足のせいである。それはさておき、グッチャンに「ジャンボ!とは、どういう意味なの?これはスワヒリ語なの?」と聞いてみた。すると、グッチャンはこう答えてくれた。
「ジャンボは「こんにちは」という意味だよ。
英語では「Hello」って言うよね。
スワヒリ語では「ジャンボ」って言うんだよ。」
と、教えてくれた。なるほど、さすがにジャンボ尾崎さんではなかった。この会話をしていると、さっそく前方に下山者がやってきた。私は「ジャンボ!」と挨拶をしてみたところ、「ジャンボー!」と勢いよくノリノリで挨拶を返してくれた。


さっそくジャンボを覚えた私は、すれ違う登山者にひたすら「ジャンボ」と言った。ところが、突然「マンボウ!」と言われた。「マンボウ?」安直思考である私の脳内にはすぐさまキューバのラテン音楽に乗って「ウー!マンボウ」が流れ始めた。
脳内は、マラカスでシャカシャカしながら「ウー!マンボウ!」とノリノリになってはいたものの、「マンボウ」の意味が分からず、しばしフリーズをしてしまった。お察しの良いグッチャンは、
「マンボウは、元気ですか?って聞いてるんだよ。
だから、マンボウ・ポアで
「元気ですか?」「元気ですよ。」っていう意味なんだ。
「マンボウ?」って聞かれたら、
「ポア」って返してあげるんだよ。」
ラテン音楽のマンボー!ではなく、スワヒリ語で「元気ですか?」という意味だった。「マンボウ・ポア」これで会話が成立するようだ。
ここ、キリマンジャロでは挨拶として「ジャンボ・ジャンボ」「マンボウ・ポア」が主流であることが分かった。どの登山者もノリノリの元気の良い挨拶をしてくれた。中にはハイタッチをしてくれる登山者もいて、登るだけでも随分と楽しい山行となった。

声に出して読んでみたい単語
写真を撮りつつ、「ジャンボ」「マンボウ・ポア」の挨拶も忘れず、地道に登り続けていた。
そんな中、グッチャンから質問があった。
「タンザニアについて、何か知っていることはあるかい?」
突然の質問で咄嗟に答えが出てこなかった。タンザニアについて、それはもちろん、この答えである。
「キリマンジャロ!」
と元気よく笑いながら答えたら、グッチャンも笑ってくれた。あとは⋯
「世界遺産のンゴロンゴロ保全地域も知ってるよ!」と答えた。
あれはいつだっただろうか、もう何年も前にテレビで「ンゴロンゴロ」の特集をしていた。番組の端っこにテロップで「ンゴロンゴロ」と表示されたとき、「ンゴロンゴロ?」と声に出して読んだことがあって、それを思い出した。
日本語には「ン」から始まる単語がないため、「ンゴロンゴロ」と読んだとき、これで合ってるのだろうか?と謎の不信感を抱いた。でも、どこからどうやって見ても、頭文字に「ン」とついているため、「ンゴロンゴロ」であった。
そんな些細な思い出があったなと思いながら、勢いよく「ンゴロンゴロ」とグッチャンに言ってしまった。「ンゴロンゴロ」は通じるのだろうかと思ったら、「ンゴロンゴロを知ってるんだね。」と言ってくれた。どうやら、英語の読み方もそのまま同じで「ンゴロンゴロ」だった。


私はグッチャンに聞いた。
「今回のツアーでは、キリマンジャロ下山後にアルーシャ国立公園へ行くことになってるけど、ンゴロンゴロにも行ってみたいの。ンゴロンゴロはここからどれぐらいかかるの?」
「ンゴロンゴロは、モシからだと車で6時間ぐらいかかるんだ。
だから、ここからではちょっと遠いんだよ。」
「6時間?」と、あまりの遠さに驚いて大声で聞き返してしまった。車で6時間と言えば、岡山県からギリギリ岐阜県寄りの長野県ぐらいまでの距離である。そう考えると、確かに遠い。
「ンゴロンゴロにもいつか行ってみたいねぇ~。」
「ンゴロンゴロはいいところだよ。
でも、下山後に行くアルーシャ国立公園もなかなかいいところだよ。」
そんな会話をしながらも超ハイパーポレポレで歩き続けた。


ふと気が付けば、木の背丈が徐々に低くなっていき、鬱蒼としたジャングルから徐々に視界が開けていき、いつの間にか森林限界を突破していた。


おまけ:私が習ったスワヒリ語【Jambo】
今回は、記事の中でもご紹介させていただきました「Jambo(ジャンボ)」。意味は、「こんにちは」「Hello」
今までにご紹介させていただいた「こんにちは。」「ありがとう。」「どういたしまして。」この三つの言葉でこれでスワヒリ語は大丈夫!

タンザニア・キリマンジャロ登山の記事は、こちらのマガジンにてまとめております。
