東京中の観光案内所を巡って、観光の難しさを知った
①初めに
この数か月、業務で東京中の観光案内所を巡っています。
言うまでもなく、観光案内所は観光客に向けて、地域の観光情報を掲示したり、パンフレット類やチラシを配架して、地域における観光の拠点になる施設です。
そうした施設を巡っていて気付いたことは、観光案内所が観光客のためだけに立っている場所ではないということ。
想像すればおわかりかと思うのですが、観光案内所は地域を訪れた観光客だけでなく、地域の人々がその地域の情報を知りに行く場所でもあります。
実際に窓口に立つスタッフの方々にお話を伺ってみてわかったのは
”ただ単純に観光案内をして終わり”
というわけではない現場のリアルでした。
②そもそも論and実は多忙な案内窓口
おおよそ、観光案内所というのは、駅前など好立地にあるため、来訪者も想像以上に様々で、初めて地域を訪れた人々から既に地域のことをよく知っている人々まで、様々な知識レベルの来訪者がいます。
それをおよそ数人のスタッフで対応されているのが主です。
まったくもって頭が下がる思いです。
案内所のスタッフは、通常業務である窓口での観光案内、地域住民への対応、電話での問合せに加え、合間に記録した来場者情報をまとめたり、市区町村に提出する書類を準備したり、地域イベントに関わる情報を取りまとめてHPの更新なども行っているわけです。
物販のある施設では販売に関わる対応、在庫のチェックなども発生します。
来場者が多ければ多い地域ほど、それら通常業務の量は多くなっているはずです。
イメージされるような、受付でのほほんと来訪者を待っているような楽な仕事ではないことがわかります。
それでもなお、人手不足や予算ギリギリで運営されている施設が非常に多いなというのが率直な印象です。
その背景のひとつには「観光がもたらす利益」が計測しにくいこともあるように思います。
「観光」に掛けるべき予算は地方自治体全体の利益から割り出されたおおよその金額に留まっているのが現実です。
(参考:https://jichisoken.jp/file/monthly/2022/07/mmiyazaki2207.pdf)
そうした予算状況の中で最大限の効果を出そうとそれぞれの観光案内所は努力しています。
お話を伺った一例を挙げてみましょう。
パンフレットや地域マップなど、地域の特色ある内容で作成
「おらが町の自慢」を把握するために地域の有名店や施設の情報を収集
SNSのために綺麗な写真を用意するのに提供を求めたり、実際に足を運ぶ
地域イベントへの協賛、施設内イベントの準備や出展者の調整
情報交換の場には積極的に参加し、他のエリアの観光案内の実施状況をヒアリング
それらをギリギリの人手でやっているのですね。
「今、この地域で、あるもので、できることを最大限に努力する」
という姿勢が感じられる案内所ばかりだったなという印象が残っています。
”なんとなく楽しそう”と思われがちな「観光」というジャンルですが、その実大変なことも多いのです。
③現場を覗いたからこそ考えたいこと
ここまで書いてきたように現場単位では、どの案内所も多様な来訪者のためにしっかりと準備をし、地域に来訪者を増やすための努力をしています。
と、同時に
「色々と頑張っているが、地域への来訪者が伸びない」
「自治体から言われてやっているが、施策の効果がどれほどなのかわからない」
という現場担当者のお悩みも沢山聞いてきました。
ここで立ち返りたいポイントは、
「当の観光客にとってはどうなのか」という視点だと思うのです。
案内所の方々がパンフレットを千部配ったとしても、それ自体はパンフレットが捌けた数値でしかない。
SNSを毎日更新しても、フォロワー数や来訪行動につながっていなければ、「更新した」という業務実績にすぎない。
会議に参加して他地域の成功事例を聞いても、自分の地域の来訪者像と噛み合っていなければ、仕事をした感覚だけが残る。
そうした現場の努力に対して、来訪者が知りたいのは、
この町で何を見られるのか
何を食べられるのか
どんな時間を過ごせるのか(体験ができるのか)
それだけなのです。ぶっちゃけ。
頑張った量ではなく、その努力がどのように、誰に届いたのかをしっかりと掴みにいくことが大事なのだと思います。
④”来た人すべてに喜んでもらいたい”の裏側で
ここから先は、構造の話になるので、興味がなければバックスペースを押していただいて構いません。
日本の自治体は公的組織である以上、子どもから高齢者まで国内外の幅広い観光客を歓迎する態度を取ります。
来訪者が増え、地域における消費額が増えることを望みます。
しかしながら、多様な来訪者のニーズに備えようとすると、実際の現場では際限のない努力を強いられるわけです。
だからこそ、必要なのはあらゆる来訪者に対応することではなく、来訪者を知り、やらないことを見極めること。
さらに言えば、
私たちの地域はこうしたニーズの人々に向いています
とオフィシャルな立場から発信を行うことが大事だと思うのです。
マーケティング的にもニーズにマッチする人々への訴求を強化して、いかに潜在顧客に届かせるかが重要ですからね。
実際に来訪者たちと向き合う現場の人々に努力を強いるのではなく「地域と来訪者とのミスマッチを事前に減らす」のが理想だと思います。
観光案内所という「誰でもウェルカム」な施設の話には相応しくないのかもしれませんが、地域の限られた予算を考えると”どういう来訪者に来てほしいのか”を考えることって地域が持続していくためでもあると思うのです。
こうした意見に至った背景は、別のお仕事で国内の観光地のサステナビリティについて考える機会があったからなんですね。
そこで、他所の事例を参考に日本の観光地におけるサステナビリティを検討していたのですが、そこでの話と妙にリンクしているなと常々思っています。
地域にとって来訪者の数が伸びることはもちろん重要です。
それと同時に、観光案内所など、実際に来訪者と向き合う現場のサステナビリティも重要であると。
いわゆる「オーバーツーリズム」によって地域に生じる様々な負荷の中には、こうした”来訪者への対応疲れ”も含まれているのではないでしょうか。
今、そこで努力している現場の方々が今以上に頑張らなくても持続可能な観光を考える
綺麗事かもしれませんが、そんなことを私も一緒になって考えていきたいのです。
