FIFAワールドカップ2026 準決勝の見どころ【日本時間・7月16日】イングランドvsアルゼンチン
ワールドカップ2026、準決勝の第2試合は、日本時間7月16日のイングランド×アルゼンチンです。
イングランドが勝てば、優勝した1966年以来、60年ぶりの決勝進出。アルゼンチンがこの大会も制すれば、1958年・1962年のブラジル以来、64年ぶりの連覇となります。
そして、このカードには、長い時間を経てようやく実現する物語があります。
39歳で6度目のワールドカップを戦うメッシにとって、これは代表21年目にして初めてのイングランド戦です。1966年のラティン、1986年のマラドーナ、1998年と2002年のベッカム。何世代もの選手が刻んできた因縁のなかへ、メッシとベリンガムが新たに足を踏み入れます。
ただし、ここまでの両国は、相手を圧倒し続けて準決勝へ来たわけではありません。何度も先に傷を負い、崩れかけ、それでも最後には答えを見つけて生き残ってきました。
歴史とスターだけでは語り切れない一戦を、じっくり見ていきます。
※選手名の前に付く「#10」などは、すべて背番号です。
この日の試合
準決勝の第2試合は、イングランド×アルゼンチンです。
イングランドは、ケインとベリンガムが6得点ずつを挙げ、2人だけでチーム13得点中12得点を生み出してきました。この数字は、2人の決定力の高さを示す一方で、どちらかを抑えられたときに、別の選手が得点を担えるかという課題も映しています。
対するアルゼンチンは、攻撃の中心こそメッシですが、苦しい場面ではマック・アリスター、エンソ・フェルナンデス、フリアン・アルバレス、ラウタロ・マルティネスと、異なる選手が試合を動かしてきました。
得点を2人へ集中させながら勝ち上がったイングランドと、追い込まれるたびに別の解決者が現れたアルゼンチン。攻撃の形が異なる両国が、決勝への一枚を争います。
勝者は日本時間7月20日の決勝へ進み、準決勝でフランスを2-0で退けたスペインと対戦します。スペインは今大会7試合で失点わずか1。決勝への切符の先には、大会屈指の堅守が待っています。
(カッコ内はFIFA公式ランキング・2026年6月11日版です)
イングランド(4位)vs アルゼンチン(1位)
日本 7/16 4:00 / 現地 7/15 15:00・メルセデス・ベンツ(アトランタ)

この試合を「イングランドがメッシを止められるか」だけで説明するのは、少し足りません。
アルゼンチンの攻撃はメッシを中心に設計されています。しかし、相手がメッシへ人数を集めた瞬間に、フリアン・アルバレスやマック・アリスターが空いた場所へ入り、試合を決められることが前回王者の強さです。
イングランドが狙うべきなのは、メッシを90分間消し去ることではありません。メッシへボールが渡る回数を減らし、受けたとしても前を向ける角度を限定することです。
準々決勝のスイスは、中央を狭く保ち、メッシがライン間で自由になる時間を減らしました。イングランドもライス、エリオット・アンダーソン、ベリンガムが中央の距離を縮められれば、同じように供給を細らせられます。
ただし、中央へ人数を集めるほど、外側には空間が生まれます。メッシを囲むことと、アルゼンチンの別の選手を自由にしないこと。その両立が、この試合の最初の難題です。
30秒でわかる構図
イングランド:トゥヘル監督のもと、主将ケイン(#9)が前線の基準点となり、ベリンガム(#10)が中盤からゴール前へ飛び込みます。ライス(#4)とエリオット・アンダーソン(#8)の走力、セットプレーの高さも武器です。
アルゼンチン:スカローニ監督のもと、主将メッシ(#10)が創造の中心。フリアン・アルバレス(#9)が背後を狙い、マック・アリスター(#20)とエンソ・フェルナンデスが中盤から攻撃へ加わります。流れが悪くても、一人のひらめきで試合を変えられるチームです。
懸かるもの:イングランドは60年ぶりの決勝進出を、アルゼンチンは64年ぶりの連覇へ向けた最後の一歩を目指します。その先には、フランスを2-0で退けたスペインが待ちます。
注目選手
【イングランド】
#9 ハリー・ケイン(FW・主将/バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)):今大会6得点を挙げる大黒柱です。ゴール前で仕留めるだけでなく、中盤まで下がってボールを収め、ベリンガムや両サイドが走り込む時間を作ります。ロメロが先発すれば、かつてトッテナムで同じチームだった2人が、準決勝では敵として向き合います。
#10 ジュード・ベリンガム(MF/レアル・マドリード(スペイン)):今大会6得点、この大会屈指の勝負師です。準々決勝ノルウェー戦では、前半終了間際に同点ゴールを決め、延長開始直後にも決勝点。2得点でイングランドを準決勝へ導きました。長い距離を走った先で、最も危険な場所へ入れることが彼の強さです。
#1 ジョーダン・ピックフォード(GK/エバートン(イングランド)):イングランドの守護神です。2002年大会のイングランド×アルゼンチンを、8歳のときに学校のテレビで見ていました。それから24年後、自らがイングランドのゴールを守り、初めてメッシと対峙します。歴史を見ていた少年が、今度はその歴史の一部になります。
【アルゼンチン】
#10 リオネル・メッシ(FW・主将/インテル・マイアミ(アメリカ)):39歳で迎えた6度目のワールドカップ。今大会8得点で得点王争いの首位に並び、準々決勝スイス戦でもCKから先制点をアシストしました。そして、代表21年目で初めてイングランドと対戦します。アルゼンチンサッカー協会が「運命がメッシに残していた試合」と表現したカードが、決勝の一歩手前で実現します。
#9 フリアン・アルバレス(FW/アトレティコ・マドリード(スペイン)):苦しい試合ほど得点するストライカーです。ワールドカップ通算5得点のうち4得点をノックアウトステージで記録。スイス戦では延長112分、均衡を破る強烈な一撃を突き刺しました。メッシへ相手の視線が集まるほど、その脇や背後へ入る彼の価値が高まります。
#22 ラウタロ・マルティネス(FW/インテル(イタリア)):先発でも途中出場でも、ゴールへ向かう強さを失わないストライカーです。スイス戦では延長終了間際に3点目を決め、試合を終わらせました。拮抗したまま終盤へ入った場合、ベンチから投入できるラウタロの存在は、アルゼンチンにとって大きな保険になります。
戦術と強み・急所
イングランドの強み:ケインが攻撃の基準を作り、ベリンガムがゴール前へ入り込む、役割の異なる2枚看板です。ライスやエリオット・アンダーソンを中心とした走力とフィジカル、セットプレーの高さでもアルゼンチンへ圧力をかけられます。
イングランドの急所:チーム13得点のうち12得点をケインとベリンガムが占めています。2人を抑えられたとき、サカやゴードン、ラッシュフォードらが別の得点経路を作れるかが問われます。また、クアンサーが出場停止となり、守備陣の選択肢は一つ減った状態です。
アルゼンチンの強み:メッシの創造性だけでなく、試合ごとに異なる解決者が現れることです。メッシが囲まれても、アルバレス、ラウタロ、マック・アリスター、エンソが得点へ関われます。苦しい時間を受け入れたまま、自分たちの好機が来るまで待てることも前回王者の強さです。
アルゼンチンの急所:ノックアウトステージ3試合すべてで失点し、スイス戦では球際と走力で押し込まれる時間がありました。中盤を外された後の戻りと、右サイドバックの背後、セットプレーでの高さは、イングランドに狙われる可能性があります。
各国のいま
イングランドは、準々決勝でノルウェーを延長の末に2-1で下しました。
36分に先制を許しましたが、ベリンガムが前半終了間際に同点。延長開始直後にもベリンガムが決め、逆転しました。ラウンド16のメキシコ戦では10人になりながら3-2で逃げ切り、ノルウェー戦では先制されてから勝ち切っています。
イングランドは、すべてが計画どおりに進んだから勝ち残ったわけではありません。計画が崩れた後に、ピックフォードが止め、ベリンガムが走り、誰かが空いた役割を埋めてきました。
直前情報では、クアンサーが2試合の出場停止により準決勝も欠場します。一方、ライスはノルウェー戦前に体調を崩し、同試合では前半のみで交代しましたが、状態は改善し、アルゼンチン戦では先発できる見込みです。アキレス腱の状態を管理してきたサカも、現在は準備ができていると話しており、トゥヘル監督が先発へ戻すかが注目されます。
アルゼンチンは、準々決勝でスイスを延長の末に3-1で破りました。
10分にメッシのCKからマック・アリスターが先制。追いつかれた後、数的優位になってもなかなか勝ち越せませんでしたが、延長112分にフリアン・アルバレス、終了間際にラウタロが決めました。
その前も、ラウンド32のカーボベルデ戦では2度追いつかれて延長へ入り、ラウンド16のエジプト戦では残り約10分まで0-2と追い込まれています。それでも、最後には毎回異なる選手が答えを出してきました。
スカローニ監督は、このチームについて「苦しむことは自分たちのDNAの一部」と語っています。盤石だから慌てないのではなく、苦しい状況を何度も経験し、その中で判断を失わないことがアルゼンチンの強さです。
かみ合わせ分析
メッシの静止と、ベリンガムの疾走:メッシは歩きながら相手の配置を読み、守備者の視線が外れた瞬間に空いた場所へ入ります。ベリンガムは長い距離を走り、中盤からゴール前へ飛び込みます。直接マークし合うわけではありませんが、対照的な方法で試合を動かす2人です。
得点の集中と分散:イングランドは13得点中12得点をケインとベリンガムが挙げています。アルゼンチンはノックアウトステージで複数の選手が重要な得点へ関わってきました。2人の決定力を押し通すイングランドか、次の解決者を出せるアルゼンチンか。攻撃の構造そのものが対照的です。
イングランドの走力 × アルゼンチンの中盤:アルゼンチンの中盤はボールを持てば試合を落ち着かせられますが、ボールを失った後の広い範囲を走る展開では後手に回ることがあります。ライスの状態が戻り、エリオット・アンダーソンとベリンガムが前後に走れれば、イングランドが中盤の強度で上回る可能性があります。
アルゼンチンの右サイド × イングランドの左:スイス戦では、アルゼンチンの右サイドが縦への突破に苦しみました。ゴードンやラッシュフォードがアルゼンチンの右サイドバックの背後へ走れば、中央の守備を外側へ引き出せます。その空いた場所へベリンガムが入る形は、イングランドの明確な狙いになります。
ケイン × アルゼンチン最終ライン:ロメロが先発すれば、元トッテナムのチームメートだったケインとの対戦になります。ケインが中盤へ下がったとき、ロメロがついて出れば背後が空き、残ればケインが前を向けます。旧知の2人だからこそ、最初の動きだけで終わらない読み合いがあります。
セットプレーの一撃:アルゼンチンはスイス戦で球際と高さに苦しみました。イングランドにはケイン、ベリンガム、ストーンズらがおり、CKやFKでは優位を作れる可能性があります。一方、アルゼンチンのスイス戦先制点もメッシのCKからでした。流れのなかで均衡した場合、止まったボールが試合を動かすかもしれません。
総じて、イングランドが中央の距離を保ち、メッシへ前向きのパスを入れさせず、中盤の走力と左サイドの突破を生かせれば、試合を優位に進められると見ています。
ただし、アルゼンチンは攻撃が停滞しているように見える時間にも、一人の判断で突然得点を生み出します。イングランドが優位に見える時間ほど、メッシやアルバレスの一瞬へ注意が必要です。
会場とコンディション
メルセデス・ベンツ・スタジアム(アトランタ)は開閉式屋根を備えています。屋根が閉じられれば、直射日光や暑さの影響は小さく抑えられます。
両チームとも準々決勝から中3日です。ただし、ノックアウトステージでアルゼンチンは2度、合計60分の延長戦を経験しています。イングランドの延長戦はノルウェー戦の1度、30分です。
単純な延長時間の差は30分ですが、アルゼンチンは2試合で120分を戦い、そのたびに短い日程で回復を求められてきました。出場時間だけで疲労を断定することはできないものの、終盤の戻りや球際、交代選手の強度に差が表れる可能性はあります。
さらに、決勝進出を決めたスペインは、この試合より1日前に準決勝を終え、フランスを2-0で90分以内に退けています。イングランドとアルゼンチンの勝者は、1日長く休むスペインと決勝で向き合います。もちろん準決勝で先を考える余裕はありません。それでも延長へ入れば、アルゼンチンが経験を生かすのか、イングランドの若さと走力が最後に残るのかだけでなく、その先の回復差まで広がる可能性があります。
もし今、笛が鳴ったら
立ち上がりは、両チームとも歴史の重みとは反対に、慎重に入ると予想します。
アルゼンチンはメッシを中央と右で動かしながら、イングランドの誰がついてくるかを確かめる。イングランドは前から追い回すのではなく、中央のパスコースを閉じ、奪った後に左サイドへ早く運ぶ。最初の20分は、ボールよりも互いの配置を読む時間になると見ています。
均衡を破るのはセットプレーです。イングランドが左サイドの突破からCKを得て、ケインがゴール前で先制する展開を予想します。
ただし、アルゼンチンは失点しても急ぎません。メッシが右へ流れて守備者を引きつけ、その内側へフリアン・アルバレスが入り、同点に追いつくと見ています。
終盤、アルゼンチンの中盤と最終ラインの距離が少しずつ広がったところで、イングランドが再び左から前進。中央へ折り返されたボールに、長い距離を走ってきたベリンガムが最後に入り込む——イングランドが2-1で振り切る筋書きを本線に見ます。
もっとも、メッシが一度でも前を向いてペナルティーエリアの近くへ入れば、それまでの戦術的な優位は一瞬で意味を失います。イングランド優勢と見ていますが、最後までどちらへ転んでも不思議ではありません。
予想スコア:イングランドが2-1で勝利
予想得点者:ケイン、ベリンガム(イングランド)/フリアン・アルバレス(アルゼンチン)
注目ポイント:メッシへの供給を細らせられるか、ケインとベリンガム以外の得点経路が生まれるか、イングランドの左がアルゼンチンの右を突けるか、セットプレーでどちらが先に均衡を破るか
※あくまで個人的な予想です。
見どころ
この試合を特別にしているのは、イングランドとアルゼンチンが積み重ねてきた歴史です。
その始まりにあるのが、イングランドが優勝した1966年大会です。準々決勝でアルゼンチン主将アントニオ・ラティンが退場を命じられ、長時間ピッチを去ることを拒みました。言葉の違いも混乱を大きくし、この出来事は、後にイエローカードとレッドカードが導入されるきっかけの一つになりました。
そのラティン氏は、この準決勝を目前にした7月11日、89歳で亡くなりました。因縁の始まりにいた主将が世を去った直後、両国は60年ぶりの決勝進出を懸けて、再び向き合います。
1986年、マラドーナは「神の手」と「世紀のゴール」を同じ試合で刻みました。1998年には、ベッカムがシメオネへの報復行為で退場し、イングランドがPK戦で敗退。2002年には、そのベッカムがPKを決め、4年前の記憶に一つの区切りをつけました。
両国がワールドカップで対戦するのは、その2002年以来です。
マラドーナ、ラティン、ベッカム、シメオネが刻んできた物語へ、今度はメッシ、ケイン、ベリンガムが新しい一章を加えます。
ただし、現在の選手たちは、この試合を過去への復讐として扱おうとはしていません。メッシもスカローニ監督も、目の前にあるのは決勝へ進むための準決勝だと強調しています。周囲から歴史を背負わされる一戦で、選手たちがどこまで現在の90分だけに集中できるかも、このカードの難しさです。
最後に
いよいよ、決勝まであと一つです。
この準決勝は、完璧な2チームの対決ではありません。
イングランドは退場者を出しながら逃げ切り、先制されても逆転してきました。アルゼンチンは2点差を背負い、延長へ追い込まれ、それでも試合ごとに別の選手が答えを出してきました。
だからこそ、最後に問われるのは、90分を完璧に戦う力ではなく、崩れかけた後にもう一度立て直す力なのかもしれません。
どちらが先に傷を負うのか。傷を負った後も、自分たちの配置と判断を保てるのか。そして最後の一歩を止めず、次の得点者をゴール前へ送り込めるのはどちらか。
歴史とスターに彩られた90分。その均衡を崩す一瞬と、崩れかけた側がどう生き残るのかまで、じっくり見届けたい準決勝です。
【マガジンのご紹介】
ワールドカップに関する記事はこちらにまとめています。
よかったらご覧ください♪
<PR>
次のキャリアを考えたい方へ。
転職サイトGreenを応援しています。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたご支援は、今後の記事づくりに大切に活かしますね✨