FIFAワールドカップ2026 決勝の見どころ【日本時間・7月20日】スペインvsアルゼンチン
2007年、20歳のリオネル・メッシは、小さな青い浴槽の前に立っていました。
FCバルセロナとUNICEFによるチャリティーカレンダーの撮影で、メッシは母親と一緒に、生後5〜6か月の赤ん坊をお風呂に入れています。
その赤ん坊の名前は、ラミン・ヤマル。
ヤマルの家族が抽選に当たり、偶然ペアになった若き日のメッシと、まだ歩くこともできなかった未来のスペイン代表。あの日、そこにいた誰も、約19年後の光景を想像できなかったはずです。
39歳になったメッシと、19歳になったヤマル。
今度は小さな浴槽ではなく、ワールドカップの決勝で、世界一を懸けて向き合います。
これは、未来のスターへ王座を譲るためのセレモニーではありません。
ヤマルが新しい時代の扉を開くのか。それとも、メッシが「まだこの物語は終わらない」と世界へ示すのか。
ワールドカップ2026、全104試合の最後を飾るスペイン×アルゼンチンを、じっくり見ていきます。
※選手名の前に付く「#10」などは、すべて背番号です。
この日の試合
ワールドカップ決勝は、スペイン×アルゼンチンです。
FIFAランキング2位のスペインと、1位のアルゼンチン。現在の世界ランキング上位2か国が、史上最多48か国の頂点を決める最後の舞台へたどり着きました。
両国の勝ち上がり方は、鮮やかなほど対照的です。
スペインは今大会7試合で失点わずか1。6試合で無失点を記録し、準決勝ではムバッペ、デンベレ、オリーズを擁するフランスを2-0で封じました。2024年3月から続く無敗は37試合に達しています。
アルゼンチンは大会最多の19得点。7試合をすべて勝ち、苦しい試合でも最後には得点者を見つけてきました。準決勝のイングランド戦でも、85分まで0-1。それでもメッシの2アシストからエンソ・フェルナンデスとラウタロ・マルティネスが決め、後半アディショナルタイムに逆転しています。
大会最少失点のスペインと、大会最多得点のアルゼンチン。
90分を自分たちの秩序で支配してきたスペインと、試合が崩れた後にも答えを見つけてきたアルゼンチン。
最後に世界一になるのは、最も崩れないチームか。それとも、何度崩れかけても生き残るチームか。
(カッコ内はFIFA公式ランキング・2026年6月11日版です)
スペイン(2位)vs アルゼンチン(1位)
日本 7/20 4:00 / 現地 7/19 15:00・ニューヨーク・ニュージャージー(イーストラザフォード)

この決勝の中心にあるのは、スペインがボールと配置で試合を支配するのか、アルゼンチンが一瞬の前進でその秩序を壊すのか、という対立です。
スペインはロドリを中心に相手を動かし、ヤマルとニコ・ウィリアムズを1対1へ送り込みます。アルゼンチンは相手がボールを持つ時間を受け入れ、奪った瞬間にメッシへ届け、前線を一気に走らせます。
スペインが90分を自分たちのリズムへ閉じ込めるのか。
アルゼンチンが、たった一度の前向きなプレーからその秩序を破壊するのか。
大会最少失点の守備と、大会最多得点の攻撃。二つの勝ち方がぶつかる決勝です。
30秒でわかる構図
スペイン:今大会7試合でわずか1失点。ロドリが中央を支配し、ヤマル(#19)と両サイドバックが幅と突破を作ります。2010年以来、16年ぶり2度目の優勝を狙います。
アルゼンチン:今大会最多の19得点。メッシ(#10)は8得点4アシストを記録し、得点王と大会MVPの有力候補です。勝てば2022年に続く連覇となり、1962年のブラジル以来64年ぶりの快挙です。
懸かるもの:スペインの2度目の世界一、アルゼンチンの4度目の優勝と64年ぶりの連覇。大会最少失点の守備が最後まで崩れないのか、大会最多得点の攻撃が最後にも答えを出すのか。
注目選手
【スペイン】
#19 ラミン・ヤマル(FW/FCバルセロナ):19歳で初めてのワールドカップ決勝へ進みました。今大会の得点は1ですが、数字以上に相手の守備を動かしています。準決勝でもフランス守備陣の間へ入り、先制PKにつながるファウルを誘発。ゴールを取り消された場面もありました。右サイドで相手の足を止め、内側へ入る動きと縦への突破を使い分けます。自分で仕留めるだけでなく、複数の守備者を引きつけて味方のための空間を作れることが、現在のヤマルの価値です。
#16 ロドリ(MF/マンチェスター・シティ):スペインの試合を落ち着かせる中心です。相手のプレスが来れば立ち位置を変え、前へ急ぐべき時間と、もう一度やり直す時間を分けます。アルゼンチンがメッシの一瞬で勝負するなら、スペインはロドリの90分で勝負します。メッシが受けたい中央の空間を、どこまで消し続けられるかが最大の仕事です。
#12 ペドロ・ポロ(DF/トッテナム・ホットスパー):準決勝フランス戦で2点目を決め、大会のなかで右サイドバックの定位置をつかみました。ヤマルが内側へ入ると外側を上がり、自らゴール前へも飛び込みます。軽いハムストリングの問題を抱えていますが、スペイン側は決勝に出場できると見込んでいます。彼が高い位置を取れるかは、スペイン右サイドの迫力を左右します。
【アルゼンチン】
#10 リオネル・メッシ(FW・主将/インテル・マイアミ):39歳、6度目のワールドカップで3度目の決勝です。今大会8得点4アシスト。準決勝では得点こそありませんでしたが、85分と92分に2つのゴールを生み、試合をひっくり返しました。スペインがどれだけ長く支配しても、メッシが一度だけ前を向けば、試合の意味が変わります。スペインにとって、最後まで最も警戒を解いてはいけない選手です。
#22 ラウタロ・マルティネス(FW/インテル):準決勝で後半アディショナルタイムに決勝点を決めました。先発でも途中出場でも、ゴールへ向かう強さが変わらない選手です。スペインの守備は整っているため、長い時間チャンスが来ない可能性があります。それでも一度のクロス、一度のこぼれ球へ迷わず入れるラウタロは、決勝の終盤で最も怖い存在です。
#8 エンソ・フェルナンデス(MF/チェルシー):イングランド戦では85分に同点ゴールを決め、アルゼンチンを生き返らせました。スペイン相手には、守備でロドリやペドリを追うだけでは足りません。ボールを奪った後に一つ前の場所へ運び、メッシへ届ける役割も必要です。スペインの中盤を最初に越えられるかが、アルゼンチンの攻撃回数を決めます。
戦術と強み・急所
スペインの強み:ボールを失った瞬間の配置まで整っていることです。攻撃中もロドリと最終ラインが距離を保ち、相手のカウンターを始まる前に止めます。今大会1失点という数字は、GKやCBだけでなく、攻撃と守備が切れずにつながっている結果です。
スペインの急所:支配できている時間が長いほど、一度のミスが大きくなります。両サイドバックが高い位置を取った背後でメッシが前を向けば、フリアン・アルバレスやラウタロが広い空間へ走れます。ほぼ完璧に守ってきたからこそ、最初の失点後にどう反応するかは未知数です。
アルゼンチンの強み:試合の形が崩れても慌てないことです。カーボベルデ、エジプト、スイス、イングランドと、追い込まれるたびに異なる選手が答えを出しました。メッシだけを止めれば終わるチームではありません。
アルゼンチンの急所:最終ラインからの組み立ては、強いプレスを受けたときに不安定になることがあります。今大会は自陣深くでボールを失う場面も多く、両サイドの守備も突破されています。スペインは大会屈指のプレスとライン突破力を持つため、ここは大きな試練です。
各国のいま
スペインは、2010年以来16年ぶりのワールドカップ決勝へ進みました。
初戦のカーボベルデ戦は0-0。その後も、すべてが華やかな試合だったわけではありません。それでも試合を重ねるほど守備と中盤の距離が整い、ラウンド16ではポルトガル、準々決勝ではベルギー、準決勝ではフランスを退けました。
準決勝は、スペインの完成度が最もよく表れた試合でした。
ヤマルがファウルを誘ってオヤルサバルがPKを決め、後半にはダニ・オルモとの連係からペドロ・ポロが追加点。フランスの強力な3トップを無得点に抑え、6度目のクリーンシートを記録しています。
スペインは37試合無敗です。
ただし、決勝前にはヤマルとポロが別メニューで調整しました。ヤマルはフランス戦で受けた打撲や疲労、ポロは軽いハムストリングの問題とされています。どちらも出場できる見込みですが、右サイドの強度を90分保てるかは直前まで見たいところです。
アルゼンチンは、前回王者として再び決勝へ戻ってきました。
今大会は7戦7勝、19得点。数字だけを見れば圧倒的ですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
ラウンド32のカーボベルデ戦では2度追いつかれ、ラウンド16のエジプト戦では終盤まで2点を追い、準々決勝スイス戦は延長へ入りました。準決勝イングランド戦も、残り5分までリードを許していました。
それでも負けていません。
準決勝でメッシは、85分にエンソの同点ゴールをアシストし、後半アディショナルタイムにはラウタロの決勝点も演出しました。39歳の選手が試合終了に近づくほど影響力を増し、世界一への扉をこじ開けています。
このチームは、90分を完璧に支配するのではなく、90分のなかで勝利につながる瞬間を絶対に逃しません。
かみ合わせ分析
ヤマル × アルゼンチンの左サイド:ヤマルが右でボールを持つと、左足で中央へ入る動きと、縦へ抜ける動きの両方があります。タグリアフィコや左CBが1人で対応すれば突破され、2人を集めればロドリやポロが空きます。アルゼンチンが最初に解かなければならない問題です。
メッシ × ロドリ:メッシは動き続けてボールを受けるのではなく、歩きながら守備者の視線が外れる瞬間を待ちます。ロドリはスペインの中央を守りますが、メッシを追いすぎれば中盤の形が崩れます。誰が受け渡し、どこまで前を向かせないか。決勝の中心にある駆け引きです。
スペインのプレス × アルゼンチンの組み立て:アルゼンチンは自陣でボールを失う場面があり、スペインは相手の最終ラインを破るパスと高い位置での奪回に優れています。スペインが立ち上がりから強く出れば、最初の得点はこの形から生まれる可能性があります。
ポロの攻撃参加 × アルゼンチンのカウンター:ポロが高い位置へ出れば、ヤマルとの右サイドは強力になります。一方、その背後には空間が生まれます。アルゼンチンがメッシから左へ素早く展開できれば、スペインの最も強いサイドが、そのままカウンターの入口にもなります。
スペインの秩序 × アルゼンチンの終盤力:スペインは試合を予定どおり進める力が高く、アルゼンチンは予定が崩れた後に強いチームです。スペインが先制したとき、アルゼンチンが焦らず次の一手を出せるか。アルゼンチンが先制したとき、スペインが今大会初めて追う展開で平静を保てるか。最初の得点が両国の知らない表情を引き出します。
総じて、戦術的な完成度ではスペインがわずかに上だと見ています。
今回は、その完成度が決勝でも最後まで崩れないと予想します。
今大会7試合で失点はわずか1。ボールを持つ時間だけでなく、失った直後の配置まで整い、相手の攻撃を始まる前に止めてきました。メッシの一瞬を完全に消すことはできなくても、その一瞬を1回か2回に限定できれば、スペインが試合全体を上回れると見ています。
そして最後に歴史を動かすのは、右サイドから仕掛け続けるヤマルです。
会場とコンディション
舞台はニュージャージー州イーストラザフォードのニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムです。
現地15時開始の屋外開催となります。
スペインは準決勝をアルゼンチンより1日早く終えており、休養面では有利です。さらに、決勝前の3日間をニュージャージーで過ごし、暑さと湿度への調整を進めています。ただし、今大会のスペインにとって屋外での試合は2度目となり、これまでの屋内会場とは異なる環境です。
アルゼンチンは準決勝から中3日。スペインより回復時間は短いものの、メッシを含めて90分でイングランド戦を終えています。
暑さのなかで試合が進めば、後半は中盤の距離が広がりやすくなります。ヤマルやニコ・ウィリアムズの突破が生きる一方、アルゼンチンにとってもメッシから前線へ一気に運ぶ空間が増えます。
交代選手の質まで含めて、延長戦を見据えた選手起用が重要になります。
もし今、笛が鳴ったら
立ち上がりはスペインがボールを持ち、アルゼンチンが中央を狭く守る展開を予想します。
スペインはロドリを経由しながら右サイドへボールを集め、ヤマルの仕掛けと、その内側へ入るオルモやペドリで守備の位置を少しずつ動かします。アルゼンチンがヤマルへ2人を集めれば、外側のポロや中央のロドリが空きます。
前半はスペインが主導権を握り、ヤマルが作った右サイドの崩しからオヤルサバルが先制すると見ています。
もちろん、アルゼンチンは簡単には終わりません。
後半、スペインの両サイドバックが上がった背後へ素早く運び、メッシがペナルティーエリア付近で前を向く。そこからアルゼンチンが一度は追いつく展開を予想します。
それでも最後は、スペインが自分たちの配置を崩さず、もう一度ボールを握り直す。終盤、右サイドから中央へ入ったヤマルが、自ら決めるか、最後のゴールを生み出す形で試合を動かすと見ています。
スペインが2-1で勝利し、2010年以来16年ぶり、2度目の世界一へ。
39歳のメッシが築いてきた歴史の前で、19歳のヤマルが新しい時代の最初の一歩を踏み出す。そんな結末を本線に置きます。
優勝予想はスペインですが、大会全体を通じたMVPは、決勝前まで8得点4アシストを残しているメッシと予想します。
予想スコア:スペインが2-1で勝利
予想得点者:ラミン・ヤマル、ミケル・オヤルサバル(スペイン)/リオネル・メッシ(アルゼンチン)
予想大会MVP:リオネル・メッシ
注目ポイント:ヤマルをアルゼンチンがどう囲むか、メッシをスペインがどう受け渡すか、スペインが同点に追いつかれた後も配置を保てるか、70分以降にどちらの交代策が試合を動かすか
※あくまで個人的な予想です。
見どころ
この決勝で最初に見たいのは、先制点そのものより、先制された側がどのように反応するかです。
スペインは今大会わずか1失点で、長く相手を追う時間をほとんど経験していません。アルゼンチンが先に得点した場合、ロドリを中心とした配置を保ったまま攻撃を速められるのか。それとも、焦りから前後の距離が広がるのか。今大会でほとんど見せていないスペインの表情が現れます。
一方、スペインが先制しても、アルゼンチンには追いついてきた実績があります。2点を追ったエジプト戦、延長へ入ったスイス戦、残り5分まで負けていたイングランド戦。先制点がそのまま結論にならないことが、アルゼンチンの怖さです。
次に注目したいのが、スペインがメッシを誰に受け渡すかです。
ロドリ一人が90分間ついて回れば、スペインの中盤全体が崩れます。ペドリやオルモ、CBも含め、メッシが中央へ入るたびに誰が見るのか。追いすぎず、離しすぎず、前を向かせない距離を保てるかが重要です。
メッシを止めることに人数を使えば、ラウタロやフリアン・アルバレス、エンソが空きます。アルゼンチンが大会最多の19得点を挙げた理由は、メッシを中心にしながら、最後は別の選手も仕留められることにあります。
そして、70分以降の交代策です。
決勝は90分で終わるとは限りません。監督が延長を考えて選手を残すのか、90分以内に終わらせるために早く勝負へ出るのか。その判断が世界一を左右します。
両国には、先発を外れた場合でもラウタロ、フリアン・アルバレス、ニコ・ウィリアムズ、メリーノら、試合の速度や形を変えられる選手がいます。疲労で中盤の距離が広がる終盤に、誰が新しい主役になるのか。
スター同士の対決だけでなく、最初の得点後の反応、メッシの受け渡し、ベンチから出てくる次の一手まで見届けたい決勝です。
最後に
約19年前、小さな浴槽のそばで出会った2人が、今度はワールドカップのトロフィーを間に置いて向き合います。
ただ、この決勝の先に続くのは、2人だけの物語ではありません。両国には、2030年大会へつながる未来もあります。
スペインが勝てば、2010年以来16年ぶりに世界王者となり、次回2030年大会の主要開催国の一つとして、王者の看板を背負って次のワールドカップへ向かいます。
アルゼンチンが勝てば、1962年のブラジル以来64年ぶりの連覇です。ワールドカップ100周年となる2030年大会では、アルゼンチンでも記念試合が行われます。連覇王者として、その大きな節目へ向かう未来もあります。
メッシとアルゼンチンが、もう一度世界の頂点に立つのか。
それともヤマルとスペインが、次の時代を始めるのか。
どちらの結末にも、この決勝にふさわしい美しさがあります。
それでも僕は、スペインの優勝を予想します。
メッシが「神の子」であることは変わりません。39歳で8得点4アシストを残し、アルゼンチンを再び決勝まで導いた時点で、その伝説は揺らぎません。
ただ、今回は歴史が次へ進む夜になると見ています。
スペインは今大会7試合で失点わずか1。37試合無敗を続け、ボールを持つ時間だけでなく、失った瞬間までチーム全体がつながっています。アルゼンチンには試合を変える一瞬がありますが、スペインにはその一瞬を最小限にし、90分を自分たちの形へ戻し続ける力があります。
そして、その完成されたチームの右サイドに19歳のヤマルがいます。
未来のスターではありません。すでに世界一を決める舞台の中心にいる選手です。
ワールドカップ2026、104試合目。
メッシの時代を称えながら、ヤマルとスペインが新しい歴史を始める。
僕は、そんな最後を予想します。
最後の笛が鳴るまで、世界一を決めるサッカーそのものを楽しみたいです。
【マガジンのご紹介】
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