映画「モネと時間旅行」(La venue de l'avenir, 2025, 仏, 監督 Cedric Klapisch)

2026年9月15日現在、日本では劇場公開直前ではないか。パリから羽田へ向かうJALの機内で見つけ、すぐさま観た。当たりだった。私の好みにぴったり。
まずは物語が凝っていて、おもしろい。フランス北西部ノルマンディーのル・アーブルの近くで、開発計画が持ち上がった。廃屋とあたりの広大な敷地に、ショッピングセンターと駐車場をつくろうというのだ。ありがちな開発計画かなと思ったけど、ある家族がかなり昔から住んでいたところで、関係者が40人ぐらいにぼる。この権利者すべての許可が必要。
そこで、権利者たちが意思疎通を図る。でも、みんな会ったことがないのだ。その中心は、4人。映像作家の若者、交通関係のエンジニアの女性、リタイア間近のフランス語中学校教師、そして養蜂家。この個性的な4人が、古い家屋を訪れるのである。
そこで見つけたのは、壁に掛かった古い絵、写真、そして手紙。4人がそれらを調べているうちに、アデルという女性が祖母?にあたることがわかった。
そして時間はアデルが21歳のときに遡る。アデルはパリへ母を探しに行くのだ。1歳のときに生き別れになっていて、母のオデットはどこで何をしているかわからない。
船での旅の道中、アデルが画家の卵と写真家の卵の若い男性ふたりに出会うのも楽しい。3人が一緒にパリへ行ていくのだから、仲良くならないわけがない。
そして、アデルは母親オデットを探し当てた。田舎から出てきたアデルには衝撃的な場所で。
そして、自分の父親は誰かなのかと、アデルは母にきく。母親の返答はすごい。二人のうちのどちらかだ。写真家のナダールか画家のモネか。いやはや、そんなことがあるわけない。
そんな昔の話がはさまれつつ、現代では、家屋と土地をどうするかがオンラインなどで話し合われていた。そして、なんと、家屋に飾られていた1枚の絵は、モネの絵らしい。そんなことがあるわけない。
そんな話がいくつかの恋話と絡まって展開していく。アデルと地元の男の子。アデルと画家の卵。現代では、権利者の主な4人のうちにエンジニアと養蜂家。そして映像作家とそのモデル。
こんな物語の楽しさと同等、いやそれ以上に、出てくる場面がうれしすぎる。冒頭で映像作家が撮影していたのは、オランジュリー美術館地下のモネの睡蓮の部屋で、もちろん何度も行ったことがある。モネの絵の鑑定に4人が向かったのは、私が2013年、パリ政治学院分校の講義のあと立ち寄ったル・アーブルの美術館。鑑定後、4人がはしゃいでいたのは、モネが「印象・日の出」を描いた現場で、私も拙書『国際社会学・超入門』(有斐閣) で自分の撮った写真とともに紹介したところ。アデルが訪ねたのは、ジヴェルニーのモネの庭と家。もちろん訪れた。3度も。
観ていてひたすら楽しくて、ビールを飲みながら機内でひとりではしゃいでしまった。ある意味、フランス映画らしいフランス映画。超おすすめである。監督は、映画「ニューヨークの巴里夫」を撮ったCedric Klapisch。なるほど。
