【出石 永楽館歌舞伎】映画「国宝」のロケ地で歌舞伎を観てきた
第十五回 永楽館歌舞伎 期間:2025年9月30日(火)~10月5日(日)
「ここでしか見ることのできない歌舞伎」を10月3日(金)午前の部(午前11時30分~午後2時30分)で鑑賞した。
映画「国宝」のクランクインの地
兵庫県豊岡市にある「出石 永楽館」 [1] は、兵庫県指定重要有形文化財に指定されている近畿最古の芝居小屋である。
そして、映画「国宝」のクランクイン(最初の撮影)の場所でもある。
映画の主人公である喜久雄と俊介が、若き日に舞台に立った。特に印象的なシーンである「二人藤娘」 [2] が、披露される場面などが撮影された。
「出石 永楽館」に到着
兵庫県豊岡市の「出石 永楽館」に着いたのが9時50分くらいだった。
早く着きすぎたが、もうすでに多くの人が訪れていた。

全体を大きな切妻屋根が覆い、正面入口上には「まねき看板」が揚げられている。木造で2階の芝居小屋だが、想像したよりも小さい建物だなあという印象だ。
「まねき看板」に舞台俳優の名前を丸く太い「勘亭流」という字体で板いっぱいに書き込むのは、”隙間なくお客さんが入るように”との願いを込められている。
特設テントが設営されており、そこで歌舞伎弁当と記念グッズなどを販売していたので、思わず「勘亭流」の字体で書かれた(実際は焼印)ストラップを記念に購入した。

それと、当日販売の歌舞伎弁当(ちらし寿司わっぱ弁当)も注文した。
実は、前日に出石永楽館観劇弁当「二代目 葵」を注文しようと問い合わせると、「1週間前までに注文をお願いします」と断られたので、弁当が売り切れないうちに買っておくことにした。
開場11:00 開演11:30ということなので、時間に余裕があり、映画「国宝」の特別展示場へ行くことにした。
映画「国宝」の特別展示「出石 家老屋敷」
映画に合わせて「出石 永楽館」では、撮影に使われた小道具(楽屋セットの再現、鏡台、屏風絵など)の特別展示が行われていたと聞いていたが、
いったん9月21日(日)で終了していた。
その後、展示の一部を「出石 家老屋敷」に移して公開しているということで歌舞伎を観たあとで行く予定だったが、開場まで時間があるので、特別展示を先に行くことにした。
(「出石 永楽館」での展示再開が10月7日(火)の予定ということは、第十五回 永楽館歌舞伎が開演しているために、展示場を「出石 家老屋敷」に移動して、そこで一部展示しているということなんだなあ…)

出石藩 家老屋敷の門

「出石 家老屋敷」の入館料は、通常 大人200円だが、永楽館歌舞伎のチケットを提示すれば無料だ。



第十五回 永楽館歌舞伎 [3]
10時45分頃に「出石 永楽館」に戻り、入場のために並ぶことにした。
もうすでに、多くの人が並んでいた。
そこで、歌舞伎をわかりやすく解説してくれる「イヤホンガイド」もレンタル購入することにした。
並んでいた前の特設テントで「おいでやす永楽館座布団どら焼き」が販売していたので、思わず手に取って買ってしまった。

いよいよ、11時に開場された。

左に見えるのが、特設テント
チケットの予約席は、平桟敷で前から2列目で、花道のすぐそばだ。

館内は、土足厳禁(脱いだ靴は支給されたビニールに入れる)
入ったすぐのところに、切り絵が展示されていた。


館内に入ってみると、レトロな雰囲気が漂っている。
客席(368席)は、伝統的な枡席や桟敷席で設けられていた。




(青い点が、指定座席)
う~ん、明治時代にタイムスリップした気分になった。
いざ指定席に着くと、平桟敷なので座布団+座布(小さなクッション)が席に置かれているといっても、3時間もあるので足が痛くならないか心配だ。
上演演目
さあ、11時30分に開演だ。
上演演目は、
一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
二、お目見得 口上(こうじょう)
三、神の鳥(こうのとり)
舞台と客席の距離が非常に近く、臨場感がある。
「イヤホンガイド」を耳にすると、あまり歌舞伎に詳しくない私でも、演目の内容がよくわかり、より楽しめた。
「イヤホンガイド」をレンタル購入したのは、正解だ。
一、寿曽我対面
鎌倉時代、曽我兄弟が工藤祐経を討った仇討ち事件。江戸歌舞伎では、毎年正月にこの曽我狂言を上演することが習わしとなり、兄弟が仇の工藤と対面する場面を描いた作品だ。
曽我兄弟が花道に現れて、私の目の前(1mも離れていない)で、舞踊を行い、最後に見得を切る。汗💦がほとばしり、思わず、パンフレットで扇いでやりたい気分になった。思わず拍手喝采だ!👏

二、お目見得 口上
出演する主な俳優、愛之助さんはじめ5名の俳優が、それぞれ個性的な挨拶を口上する。歌舞伎を身近に感じてほしいという意気込みが感じられた。
「出石 永楽館」ならではのご当地の話題と笑いを交えたユーモアな口上が、親しみを感じた。
三、神の鳥
兵庫県の県鳥で、国の特別天然記念物にも指定されている「こうのとり」。
「こうのとり」は漢字で書くと「鸛」で、題目の「神の鳥」はオリジナルの当て字だ。
天下掌握を目論む赤松満祐が出石神社の社頭で幼い「こうのとり」の子供を生贄にして、大願成就を祈願する祝宴を開いていた。そこへ右近と左近の狂言師の夫婦が現れ、舞うことを許される。実はこの夫婦は、「こうのとり」の化身で、生贄にされようとする我が子を助けようとするが、救出に失敗する。そこへ、剛力無双の山中鹿之介が現れ、「こうのとり」を救うという筋立ての物語になっている。
狂言夫婦が「こうのとり」に、さらに「こうのとり」の雄鳥が山中鹿之介に早替りで登場する演出は大きな見どころだ。
どちらも、愛之助さんだ!👏
すぐ目の前で、花道の狂言夫婦の舞い、ラストシーンでの山中鹿之介の舞踊は、目に焼き付くぐらいに素晴らしく、目をつむると最後の見得を切るシーンが、今でも思い浮かんでくる。

上演演目との間の休憩時間に歌舞伎弁当(ちらし寿司わっぱ弁当)を食べた。館内で食べる弁当もおつなもんだ。

歌舞伎弁当 ちらし寿司わっぱ弁当
役者が歩いた花道、台詞が響き渡る舞台、役者の息づかいを感じることができた。特に花道での舞踊では、役者に手が届く程の近さだったので、迫満点であった。
歌舞伎俳優の息づかい、汗が滴る様子、役に入り込んで目が充血してる姿が(泣いているように見えた)、ほんの少しの振る舞いの一挙手一足の所作が素晴らしい。一瞬一瞬を見逃すことができなかった。
私は、特に舞台と花道に近かったが、ぐるりと館内を見渡しても「どの席からでも役者をすぐ近くに見ることができる」のが芝居小屋だと感じた。
「ここでしか見ることのできない歌舞伎」がそこにあった。
永楽館歌舞伎は、第十五回を積み上げたが、どこまでも、いつまでも継続してほしい。
そして、舞台と客席とキャッチボールができる永楽館での歌舞伎の発信を続けられることを期待する。
芝居小屋で歌舞伎を観る楽しさを味わうことができ、楽しんだ一日だった。
さらに歌舞伎のとりこになったなぁ…。
追記:出石皿そば
14時30分ごろに終演し、出石の名物「出石皿そば」を食べに行くことにした。やっぱり、出石に行ったら皿そばを食べないとね。
周辺には、30件程の店が並んでいる。

みなさんもご当地グルメ「出石 皿そば」の好みの名店を選んで食べてみてはどうでしょうか。
[1] 出石を彩る近畿最古の芝居小屋である「出石 永楽館」は、明治34年に開館し、歌舞伎をはじめ新派劇や寄席などが上演され、但馬の大衆文化の中心として大変栄えた。しかし、時代と共に娯楽の多様化などにより昭和39年に閉館した。その後、往時の「出石 永楽館」を懐かしむ声があがるようになり、平成20年に大改修され、44年の時を経て蘇った。
[2] 「二人藤娘(ににんふじむすめ)」は、歌舞伎舞踊の人気演目である。
「藤娘」を二人で踊るように新たな演出を加えた作品で、2014年(平成26年)1月に大阪松竹座で初演されて話題になった。
大江国の大津近郊で、藤の花が絡む松の木の下に2人の娘が表れる。娘の正体は藤の精だった。移り気な男心と切ない女心を語り、近江八景の歌に合わせて男への恨みと恋心のもどかしさを踊りで表現する。さらに、藤の花に酒を注ぐと、娘たちは藤の花が松に絡むさまや、恋人と共に酒に酔った様子を踊ってみせる。
美しい藤の精を艶やかに演じ、舞台いっぱいの藤の花と、二度三度と衣裳が変わる藤の精の華やかさが堪能できる。
[3] 平成20年8月、新装開場の柿落公演として行われたのが、第一回の永楽館歌舞伎であった。座頭に上方歌舞伎の旗手、片岡愛之助さん。以降、愛之助さんの言う「ここでしか見ることのできない歌舞伎」をモットーに、年に一回、歌舞伎公演が行われるようになった。

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