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燃え尽きない働き方──ハイパフォーマー流ウェルビーイング戦略ー日経ビジネス記事

 日経ビジネス2025/04/25の記事『成果出せる「ハイパフォーマー」、職場の人を大切にし好循環生む』を拝読しました。

 現代の職場では、バーンアウト(燃え尽き)や、会社を辞めずに必要最小限の仕事しかしない「静かな退職」といった、働く意欲を失わせるような状況が見られます。多くの人が仕事に疲弊感を感じる中で、一部の「ハイパフォーマー」と呼ばれる人々は、なぜか楽しそうに働き、継続的に高い成果を上げています。彼ら、彼女たちには、どのような共通した働き方があるのでしょうか。この記事では、その秘訣を探ります。タイトルを見る限り、「理想の形」を想像させます。

自由裁量・強み発揮・成果認識が生む好循環

 職場で幸福感を感じながら働けるか、それとも苦痛を感じながら働くかを分ける最も大きな違いは「自律性」にあります。つまり、自分の意思で主体的に仕事に取り組んでいるか、それとも誰かに指示されて「やらされ感」で仕事をしているかの違いです。ハイパフォーマーには、この自律的に働く人が多く見られます。彼らは高いパフォーマンスを上げ続けることで周囲からの信頼を獲得し、その結果、より多くの仕事を任されるようになります。

 このようにして得られた「自由裁量」の大きさは、彼らが自身の「強み」を存分に発揮できる環境を生み出します。そして、その強みを活かして出した成果は、自分自身だけでなく、上司や同僚といった「他者からも認識」されます。この「自由裁量」「強みの発揮」「成果の認識」という3つの要素が揃うことで、さらに意欲が高まり、より高い成果を目指すという好循環が生まれるのです。会社勤めという形態であっても、高い成果を通じてこれらの要件を満たすことで、仕事への主体性や満足感を取り戻し、「幸せな労働」を実現することが可能になります。

失敗を恐れず、学びと成長の機会に

 ハイパフォーマーに共通して見られるもう一つの重要な特徴は、「失敗から学ぶ」という姿勢です。彼らは、目の前の成功に固執するのではなく、自身の「成長」に焦点を当てています。そのため、失敗を過度に恐れることなく、新しいことや困難な課題にも積極的にチャレンジできます。「失敗からしか学べない」「成功よりも失敗の方が貴重な経験だ」といった言葉を、ハイパフォーマーはよく口にします。

 一方で、多くの会社員は、失敗が評価やキャリアに悪影響を及ぼすことを恐れ、なるべく失敗しないように、前例のある仕事や確実に達成可能な目標を選びがちです。ある調査によれば、日本の若者は諸外国と比較して、リスクを伴う挑戦を避けたいと考える割合が際立って低いという結果も出ています。
 しかし、ハイパフォーマーは失敗を他人事とせず、自分自身の課題として真摯に受け止め、原因を分析し、次に活かすための学びを得ます。二度と同じ過ちを繰り返さないように行動を改善していくことで、着実に実力を高め、自信を深めていきます。また、責任逃れをしない誠実な態度は、周囲からの信頼を集め、さらに重要な仕事を任されるチャンスにも繋がっていくのです。

身近な人への支援が築く、ポジティブな職場環境

 ハイパフォーマーの多くが実践している、さらにもう一つの特徴は「身近な人を支援する」ことです。私たちは一日の、そして人生の多くの時間を職場で過ごします。家族を除けば、職場の同僚ほど長い時間を共にする相手はいないでしょう。だからこそ、職場の人間関係の質は、私たちの幸福感(ウェルビーイング)に非常に大きな影響を与えます。同僚と良好でポジティブな関係を築けていれば、それは日々のストレスを軽減し、精神的な安定をもたらす助けとなります。

 短期的な業績や自分の利益だけを追求する人は、顧客や上司には良い顔をしつつも、身近な同僚やサポートしてくれるスタッフを軽視してしまうことがあります。しかし、ハイパフォーマーは、立場に関わらず、例えば営業事務を担当する派遣社員に対しても感謝の気持ちを持って丁寧に接するなど、身近な人を大切にします。それは、身近な人を助け、良好な関係を築くことが、結果的に職場全体の雰囲気を良くし、自分自身のモチベーション維持や向上にも繋がり、最終的には高い生産性を生み出すという好循環を理解しているからです。毎日顔を合わせる人々との関係が、仕事の満足度や幸福度を大きく左右します。互いに信頼し、気持ちよく協力し合える環境を自ら作る意識が、ハイパフォーマーには備わっているのです。

好循環を生み出すハイパフォーマーの働き方

 ここまで見てきたように、ハイパフォーマーと呼ばれる人々は、決して特別な才能だけで成果を上げているわけではありません。彼らは、「幸せな労働」を実現するための具体的な行動と考え方を実践しています。それは、失敗を恐れずに挑戦し、そこから学びを得て成長する姿勢と、立場に関係なく身近な人々を尊重し、良好な人間関係を築こうとする姿勢です。

 これらの要素が組み合わさることで、自律的に働き、強みを活かし、成果を認められ、さらに意欲を高めるというポジティブなサイクルが生まれます。意欲を失いがちな現代の職場環境においても、このような働き方を意識することで、誰もがより幸福感を持って、主体的に仕事に取り組むことができるようになるのではないでしょうか。

企業人事の視点から:ハイパフォーマーの知見を組織の持続的成長エンジンに変える戦略的アプローチ

 現代の企業経営において、人材は最も重要な資本の一つとして認識されています。しかし、労働市場の変化、価値観の多様化、そして働きがいに対する従業員の意識の高まりは、従来の人材マネジメントに大きな変革を迫っています。多くの企業が、従業員のエンゲージメント低下、高い離職率、生産性の伸び悩みといった課題に直面しており、特に「バーンアウト(燃え尽き症候群)」や、意欲を失いながらも組織に留まる「静かな退職(Quiet Quitting)」といった現象は深刻な問題となっています。

 このような状況下で、継続的に高い成果を上げ、かつ意欲的に働き続ける「ハイパフォーマー」の存在は、組織が目指すべき理想像の一つであり、彼らの働き方や思考様式を分析することは、これらの課題を乗り越え、組織全体の活力を引き出すための極めて重要な示唆を与えてくれます。企業人事の立場から、ハイパフォーマー研究から得られる知見を、具体的な人事戦略・施策へと昇華させ、組織全体の持続的な成長エンジンへと変えていくための戦略的アプローチを、より深く掘り下げて考察します。これは単なる対症療法ではなく、組織の根幹に関わる文化変革への取り組みとなります。

第1部:従業員の自律性と成長を最大化する基盤整備

 ハイパフォーマーが体現している「幸せな労働」の構成要素、すなわち「自由裁量」「強みの発揮」「成果の認識」は、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)における「熱意」「没頭」「活力」といったエンゲージメントの要素とも深く関連しています。これらを組織的に支援し、全従業員がその恩恵を受けられるようにすることが、エンゲージメントと生産性向上の鍵となります。

1. 自由裁量の戦略的拡大:自己決定理論に基づく主体性の涵養
 
従業員の主体性を引き出す上で、「自由裁量」の付与は極めて効果的です。これは、Deci & Ryanの自己決定理論が示すように、人間が持つ「自律性への欲求」を満たすことに直結します。

  • 柔軟な働き方の高度化
     
    単なるフレックスタイムやリモートワークの導入に留まらず、コアタイムのないスーパーフレックス制度、個々の業務特性に応じた裁量労働制の適切な運用(ただし、長時間労働を招かない厳格な管理が必要)、さらには副業・兼業の原則許可など、従業員が自身のライフスタイルや価値観に合わせて働き方をデザインできる選択肢を大胆に拡充します。これにより、従業員は仕事と私生活のバランスを取りやすくなり、自己効力感を高めることができます。導入にあたっては、公平性の担保やコミュニケーションの維持、情報セキュリティ対策など、運用上の課題を事前に検討し、対策を講じることが不可欠です。

  • 権限委譲の推進と意思決定への参画
     
    経営層や管理職が持つ権限を、可能な限り現場の従業員へ委譲するプロセスを見直します。これにより、変化への対応スピードが向上するだけでなく、従業員は自身の業務に対するオーナーシップを感じ、責任感を持って取り組むようになります。また、目標設定プロセス(MBOやOKRなど)においては、トップダウンの指示だけでなく、従業員自身の意向やキャリアプランを十分に反映させるための対話を重視し、ボトムアップでの目標設定や提案を奨励する仕組みを取り入れます。これにより、目標達成への内発的動機付けが強化されます。

2. 強み発揮の最大化:ポジティブ心理学とタレントマネジメントの融合
 
従業員が自身の「強み」を認識し、それを業務で活かせている実感は、仕事への没頭感と満足度を飛躍的に高めます。ポジティブ心理学の知見も、強みを活かすことの重要性を強調しています。

  • 高度なタレントマネジメントの実践
     
    従業員一人ひとりのスキル、経験、知識、価値観、キャリア志向などを多角的に把握するためのアセスメント(例:ストレングスファインダー、適性検査、多面評価など)を導入・活用します。得られたデータを基に、個々の強みが最大限に発揮できる部署への配置転換、プロジェクトチームへのアサイン、リーダーシップ機会の提供などを戦略的に行います。これは、単なる「適材適所」を超え、「適所適材」の発想、すなわち、個々の強みを活かすために新たな役割やポジションを創出する視点も重要になります。

  • キャリア自律支援の強化
     
    従業員が自身のキャリアを主体的に設計し、必要なスキルや知識を習得できるよう支援する体制を強化します。社内公募制度の活性化、キャリアアドバイザーによる定期的なキャリア面談の実施、自己啓発支援制度(資格取得補助、研修費用負担など)の拡充、社内外の学習プラットフォームへのアクセス提供などが考えられます。これにより、従業員は自身の市場価値を高め、変化の激しい時代においても活躍し続けられるという安心感を得ることができます。

  • 強みを引き出すマネジメント
     
    上司(マネージャー)の役割も変革が必要です。部下の弱点を指摘・改善させる従来のマネジメントから、部下の強みを発見し、それを伸ばし、活躍の場を与える「ストレングス・ベースド・マネジメント」への転換を促します。そのためのマネージャー向け研修プログラム(コーチングスキル、フィードバックスキル、1on1ミーティング実践法など)を充実させます。

3. 成果認識の多角化と深化:公平理論と承認文化の醸成
 
従業員の貢献が正当に評価され、認められているという実感(成果認識)は、モチベーション維持の根幹です。Adamsの公平理論が示すように、従業員は自身のインプット(努力、貢献)とアウトプット(報酬、評価)のバランス、および他者との比較によって公平性を判断します。

  • 公正かつ透明性の高い評価制度の進化
     
    年に一度の評価だけでなく、より頻繁でタイムリーなフィードバックを重視する評価体系(例:リアルタイムフィードバック、ノーレイティングの検討、プロジェクト単位での評価)への移行を検討します。評価基準は明確に定義・公開され、評価プロセスにおけるバイアスを排除するための工夫(複数評価者による評価、キャリブレーション会議など)を取り入れます。成果だけでなく、目標達成に向けたプロセス、困難な状況下での努力、チームへの貢献といった定性的な要素も適切に評価に反映させます。

  • 承認文化の積極的な醸成
     
    金銭的報酬(昇給、賞与)だけでなく、非金銭的な報酬や承認の機会を多様化・充実させます。例えば、優れた成果や貢献に対する表彰制度(社長賞、部門賞など)、社内報やイントラネットでの成功事例の紹介、チャレンジングな新規プロジェクトへの抜擢、顧客からの感謝の声の共有、同僚同士で感謝や称賛を送り合うピアボーナス制度(例: Uniposなどのツール活用)の導入などが考えられます。小さな成功や日々の地道な努力に対しても、上司や同僚から具体的に「ありがとう」「助かったよ」といった言葉で承認を伝える文化を、意識的に根付かせていくことが重要です。

第2部:イノベーションを生む土壌としての「失敗から学ぶ」文化

 変化の激しい現代において、新たな価値を創造し続けるためには、従業員が失敗を恐れずに挑戦できる文化が不可欠です。ハイパフォーマーが示すように、失敗は避けるべきものではなく、貴重な学習機会と捉えるマインドセットを組織全体に浸透させる必要があります。これは、Peter Sengeが提唱する「学習する組織」の実現にも繋がります。

1. 心理的安全性の戦略的構築:発言と挑戦を可能にする風土
 
心理的安全性とは、チーム内において、対人関係のリスク(無知だと思われる、無能だと思われる、邪魔をしていると思われるなど)を恐れることなく、安心して自分の考えや感情を表現できる状態を指します。Google社のアリストテレスプロジェクトでも、成功するチームの最も重要な因子として特定されました。

  • 測定と可視化
     
    定期的な従業員サーベイ(パルスサーベイなど)を通じて、組織やチーム単位での心理的安全性のレベルを測定・可視化し、課題を特定します。

  • リーダーシップの変革
     
    心理的安全性の醸成には、特にリーダー(経営層、管理職)の行動が鍵となります。リーダー自身が弱みを見せること(自己開示)、積極的に質問し、部下の意見を最後まで傾聴すること、異なる意見や異論を歓迎する姿勢を示すこと、失敗を個人攻撃せず、学びの機会として捉える発言をすることなどを、研修や日々のコミュニケーションを通じて徹底します。

  • チーム内での対話促進
     
    チームミーティングにおいて、全員が均等に発言する機会を設ける(ファシリテーションの工夫)、ブレインストーミングなどでアイデアの発散を奨励する(批判を一時的に保留する)、といった具体的なルールやプラクティスを導入します。

2. 挑戦を称賛し、学びを最大化する仕組み
 
失敗を許容するだけでなく、そこから組織として学び、次に活かすための仕組み作りが重要です。

  • 挑戦目標の推奨と評価
     
    OKR(Objectives and Key Results)などの目標管理手法を活用し、達成確率が60-70%程度の野心的な目標(ストレッチゴール)の設定を推奨します。目標未達の場合でも、その挑戦自体やプロセスにおける努力、得られた学びを評価する仕組みを明確にします。

  • 「ポストモーテム」文化の導入
     
    プロジェクトや施策が完了した後、成功・失敗に関わらず、そのプロセスを客観的に振り返り、学びや改善点を抽出する「ポストモーテム(事後検証)」を定着させます。これは、個人を責める場ではなく、未来に活かすための知見を共有する建設的な場として設計・運用します。抽出された知見は、ナレッジマネジメントシステムなどを通じて組織全体で共有・活用します。

  • イノベーション支援制度の拡充
     
    新規事業提案制度(社内ベンチャー制度)、特定のテーマに関するアイデアソンやハッカソンの開催、研究開発のための予算確保など、従業員が新しいアイデアを試し、挑戦できる具体的な機会とリソースを提供します。これらの制度においては、初期段階での失敗はある程度許容し、学びを重視する姿勢を明確にします。

第3部:協働と信頼に基づくポジティブな組織関係性の構築

 ハイパフォーマーが身近な人を大切にするように、従業員同士の良好な関係性は、個々のウェルビーイングだけでなく、チームワークや組織全体の生産性を大きく左右します。互いに尊重し、支援し合えるポジティブな関係性を組織全体で育むための施策を展開します。

1. コミュニケーションの活性化と質の向上
 
部門間の壁を取り払い、オープンで円滑なコミュニケーションを促進することは、知識の共有、協力体制の強化、組織の一体感醸成に繋がります。

  • 多様な交流機会の創出
     
    部門横断的なプロジェクトチームの組成、社内サークル活動への支援、定期的な社内イベント(懇親会、ファミリーデーなど)の開催、フリーアドレス制の導入、気軽に雑談できるコミュニケーションスペースの設置など、オンライン・オフライン双方で従業員同士が自然に交流できる機会を増やします。

  • 効果的なコミュニケーションツールの活用
     
    ビジネスチャットツール、社内SNS、情報共有プラットフォームなどを目的に応じて適切に導入・活用し、迅速かつ効率的な情報伝達・共有を支援します。ただし、ツール依存による対面コミュニケーションの希薄化には注意が必要です。

  • メンター制度の導入
     
    新入社員や若手社員に対して、経験豊富な先輩社員が業務やキャリアに関する相談に乗るメンター制度を導入・充実させることで、縦の繋がりを強化し、知識・スキルの伝承を促進します。

2. 感謝・称賛・尊重が根付く文化の醸成
 
互いへの感謝や称賛が日常的に交わされる組織は、従業員のエンゲージメントが高く、協力的な行動が生まれやすくなります。

  • 感謝・称賛の仕組み化
     
    前述のピアボーナス制度やサンクスカードに加え、朝礼やチームミーティングで感謝を伝え合う時間を設ける、優れたチームワークを表彰する制度を設けるなど、感謝や称賛を表現しやすく、可視化される仕組みを導入します。

  • インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)の推進
     
    多様なバックグラウンドを持つ従業員一人ひとりが尊重され、その能力を最大限に発揮できる組織を目指すI&Dの取り組みは、相互尊重の文化醸成と表裏一体です。無意識バイアスに関する研修の実施、多様な働き方の支援、公平な機会の提供などを通じて、誰もが自分らしくいられる職場環境を整備します。

3. 安心・安全な職場環境の徹底
 
良好な人間関係の基盤として、全ての従業員が心身ともに健康で、安心して働ける環境を整備することが不可欠です。

  • ハラスメント対策の強化
     
    ハラスメント防止研修の定期的な実施(全従業員対象、管理職向けにはより実践的な内容)、相談窓口の設置と機能強化(匿名性の担保、迅速な対応、プライバシー保護)、ハラスメント発生時の厳正な対処と再発防止策の徹底など、断固たる姿勢でハラスメントを許さない組織であることを明確にします。

  • ウェルビーイング施策の統合的推進
     
    従業員の心身の健康を支援する「健康経営」の視点を取り入れ、ストレスチェックの実施と結果分析に基づく職場改善、産業医やカウンセラーによる相談体制の充実、健康増進プログラムの提供(運動機会の提供、食事補助など)、長時間労働の是正といった施策を統合的に推進し、従業員のウェルビーイング向上を組織全体でサポートします。

第4部:変革の推進力となる人事部門の役割と戦略

 これらの施策を絵に描いた餅に終わらせず、組織に深く根付かせるためには、人事部門が戦略的な役割を果たす必要があります。これは、従来の管理中心の人事から、経営戦略と連動し、組織と人材の変革をリードする「戦略人事」への進化を意味します。

1. 経営層との強固な連携とコミットメントの獲得
 
組織文化の変革には、トップ(経営層)の強い意志とコミットメントが不可欠です。人事部門は、これらの施策が単なる福利厚生ではなく、企業の持続的成長、イノベーション促進、人材獲得・定着といった経営課題に直結する戦略的な投資であることを、データや事例を用いて経営層に具体的に示し、理解と全面的な協力を取り付ける必要があります。経営層自身が、変革の必要性を理解し、率先して行動(例:自ら失敗談を語る、従業員との対話を重視する)を示すことが、変革を加速させる上で極めて重要です。

2. チェンジマネジメントの実践と段階的導入
 
大規模な組織変革は、しばしば従業員の不安や抵抗を引き起こします。人事部門は、チェンジマネジメント(変革管理)の理論と手法(例:ジョン・コッターの8段階プロセスなど)を活用し、変革の必要性やビジョンを丁寧に伝え、従業員の懸念に耳を傾け、変革プロセスへの参画を促す必要があります。最初から全社一律で導入するのではなく、特定の部門やチームでパイロット運用を行い、効果検証と改善を重ねながら段階的に展開していくアプローチも有効です。

3. 効果測定と継続的な改善サイクル(PDCA)
 
導入した施策が意図した効果を発揮しているかを客観的に評価し、継続的に改善していくプロセスが不可欠です。エンゲージメントスコア、離職率、生産性指標、従業員満足度調査、パルスサーベイ、各種制度の利用率などをKPI(重要業績評価指標)として設定し、定期的に効果測定を行います。データ分析に基づき、施策の有効性を評価し、必要に応じて内容の見直しや新たな施策の追加を行います。このPDCAサイクルを回し続けることで、施策の実効性を高めていきます。

4. 人事部門自身のケイパビリティ向上
 
これらの戦略的な役割を果たすために、人事部門自身の専門性やスキルセットの向上が求められます。データ分析能力、組織開発に関する知識、ファシリテーションスキル、コーチングスキル、チェンジマネジメントスキル、経営的視点などを強化するための学習と実践が必要です。

まとめ:人的資本経営の中核としてのハイパフォーマー・インサイト活用

 ハイパフォーマーの働き方から得られる知見は、単なる個人レベルの成功法則に留まらず、組織全体の活力を引き出し、持続的な成長を実現するための重要な戦略的インサイトを提供してくれます。本稿で詳述したように、「自由裁量」「強みの発揮」「成果の認識」「失敗からの学習」「相互支援」といった要素を、人事制度、組織文化、リーダーシップ、職場環境といった多層的なアプローチを通じて組織全体に浸透させていくことは、まさに「人的資本経営」の中核をなす取り組みと言えます。

 これらの施策を粘り強く推進することで、従業員一人ひとりが自律的に、意欲的に、そして幸福感を持って働ける組織が実現します。それは、エンゲージメントの向上、離職率の低下、生産性の向上、イノベーションの促進、従業員のウェルビーイング向上といった直接的な効果に留まらず、企業の評判向上や採用競争力の強化にも繋がり、最終的には企業の持続的な成長と社会への価値提供に貢献するでしょう。ハイパフォーマーの知見を組織のDNAへと昇華させることが、これからの時代を勝ち抜くための重要な鍵となるのです。

「ハイパフォーマーが生み出す好循環」のイメージです。オフィスは明るく開放的で、個々が自律的に働く姿、チームで協力し合う姿、挑戦と学びを共有する場面などがバランスよく描かれています。中央にはアイデアをホワイトボードにまとめるグループがあり、別の場所では同僚同士が成果を祝ってハイタッチしている様子も見られます。植物や自然光が心地よい空間を演出し、ポジティブなエネルギーが職場全体に広がっている印象です。

ここでは自由裁量、強みの発揮、成果の認識、失敗からの学び、そして相互支援といった、ハイパフォーマーの働き方のエッセンスが自然な形で表現されています。見るだけで「ここで働きたい」と思えるような幸福感のある職場風景です。


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