10月義務化に向けた就活ハラスメント対策:学生と社員を守る環境づくりのポイントー日経新聞記事より
日本経済新聞社『「就活セクハラ」、学生の3割が被害 10月から企業に防止義務』(2026年7月28日電子版)を拝読しました。
就活セクハラの実態と防止義務化の背景
就職活動やインターンシップの場において、社員から性的な言動や不適切な接触を受ける「就活セクハラ」が深刻な問題となっています。厚生労働省の調査によると、就活中にセクハラを経験した学生は3割に達しており、特にリクルーターとの面談や内々定後の段階で発生しやすい傾向が示されています。過失や意図的な行為によって学生が心身に大きな負担を負い、就活への意欲を失うケースも少なくありません。
こうした事態を受け、2026年10月からは男女雇用機会均等法の改正に伴い、企業に対して就活生やインターン生に対してもセクハラ防止措置を講じることが正式に義務づけられることとなりました。
企業の取り組みと対策の広がり
法改正を前に、多くの企業や外部機関が具体的な対策を進めています。一部の企業では、リクルーターによる個人の連絡先取得を禁止し、面談を完全にオンライン化することで密室化を防ぐ取り組みが行われています。また、独自の対策室や第三者の相談窓口を設置し、学生が安心して相談できる環境を整える動きも広がっています。民間団体からは判定基準を明確にしたガイドラインが提供されるなど、ルールの可視化が進んでいます。学生を守る環境づくりは、企業の信頼性を高める上でも不可欠な要素となりつつあるといえるでしょう。
【考察】
安心・安全な採用環境の再構築
10月からの法義務化を踏まえ、まずは自社の採用活動全体における接触プロセスを見直すことが第一歩と考えられます。これまでのOB・OG訪問やリクルーター面談など、社員と学生が直接やり取りを行う場面において、どのようなリスクが潜んでいるかを丁寧に洗い出す作業が求められます。
個人のSNSや私的な連絡手段を用いたやり取りを制限し、会社が把握できる公式なコミュニケーションツールに一本化する仕組みを整えることは非常に有効な手段です。また、面談の実施場所を社内のオープンなスペースやオンライン上に限定するなど、物理的・環境的な配慮を行うことで、学生が不要な不安を感じずに済む環境を整えたいところです。
明確なガイドラインの策定と周知
何がハラスメントに該当するのかという境界線は、個人の感覚に依存しやすい側面があります。そのため、厚生労働省の指針や各種ガイドラインを参考にしながら、自社における「NG行為」を具体的に言語化したルールを作成することが望まれます。
食事への誘いや不必要なプライベートへの踏み込み、容姿や服装に関する言動など、具体的な事例を挙げたマニュアルを準備することが考えられます。作成したルールは採用担当者だけでなく、リクルーターやOB・OGとして学生と接する可能性のあるすべての社員に対して事前に周知徹底しておくことが大切です。
社員に対する意識啓発と研修の実施
制度やルールを整えるだけでなく、実際に学生と接する現場社員の意識をアップデートしていく取り組みも欠かせません。悪気なく行った発言や親密さの演出が、学生にとっては圧迫感やセクハラと受け取られる可能性があることを、研修などを通してしっかりと伝える機会を設けたいところです。
特に、採用側と応募者という立場上の力関係が存在することを正しく認識してもらうことが重要です。「指導のつもりだった」「場を和ませるためだった」といった認識のズレを防ぎ、組織として一貫した高い倫理観を持って採用活動に臨む姿勢を養うことが期待されます。
相談窓口の設置と迅速な対応体制の確立
万が一、不適切な事案が発生した場合や、学生から不安の声が寄せられた場合に備えて、気兼ねなく連絡できる相談窓口の存在を明示しておくことが重要です。学生に対して「何か困ったことや違和感があればすぐに相談してほしい」という姿勢を初期の段階から示しておくことで、被害の拡大や泣き寝入りを防ぐことにつながるでしょう。
また、社内窓口だけでなく、第三者機関や外部の専門窓口を活用する選択肢も考慮に入れたいところです。相談を受けた際には、事実関係を速やかに確認し、被害を受けた学生のケアと再発防止策の徹底を講じる体制をあらかじめ整えておくことが、組織としての誠実な対応を担保する鍵になるといえるでしょう。
採用ブランディングと組織風土の向上
就活ハラスメントへの厳格な対策は、単なるリスク回避にとどまらず、企業の姿勢そのものを学生に示す機会でもあります。安心できる採用環境を提供することは、学生からの信頼を獲得し、優秀な人材に選ばれる企業となるための重要な基盤となります。
さらに、こうした取り組みを通じて自社のコンプライアンス意識やハラスメントに対する姿勢を全社的に見直すことは、既存社員にとっても働きやすい健全な組織風土を醸成することにつながります。学生と社員の双方にとって誠実で透明性の高いコミュニケーションを追求していくことが、結果として企業の長期的・持続的な価値向上に寄与するのではないでしょうか。
