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「尖り」を失くした書き手は、どうそれを取り戻せばいいか

第47回横溝正史ミステリ&ホラー大賞への応募を、とりやめることにした。
ただ、応募予定だった長編は書き続ける。
応募先はまだ決めていない。

この長編を使って、別途、やりたいことが出てきた。


長編の成果が、ここまでほぼない

きっかけは一昨日、アルファポリスの「第1回新エンタメ小説大賞」での選外と、「第2回創元ホラー長編賞」での一次選考落ちが同時に確定したことだった。

この時は「一次落ちにもいろいろ要因はあるし、まあそんなものだろう」と思っていた。
だがデータを整理してみて、衝撃的な事実がわかった。

私は公募の全応募履歴をカクヨム上で管理しているが、現時点での短編と中~長編の選考通過歴を数えてみると、以下のようになった。

  • 短編 全応募数:27 / 何らかの選考通過以上:8(うち入選5)
    選考通過率:約30%

  • 中~長編 全応募数:18 / 何らかの選考通過以上:6(うち入選1)
    選考通過率:約33%

これだけ見ると悪くないように見える。
だが中~長編で選考通過したものの内訳を見ると、以下のようなものが入っている。

  • 未完結応募可のWebコンテストに未完結状態で応募 x 2

  • 5万字程度の中編

  • 冒頭2万字まででの選考

  • 全体梗概+冒頭1章での選考

完成した長編で選考通過しているものがほぼない。
あらためて完成長編でカウントし直してみた。

  • 完成長編 全応募数:8 / 何らかの選考通過以上:1
    選考通過率:約12%

2023年のオレンジ文庫ノベル大賞で二次選考通過(三次落選)したのが唯一の通過歴で、他はすべて一次落選している。
直近3年に限れば、通過歴は皆無だ。なにひとつ成果が出ていない。

しかも落選の内容が悪い。
未完結応募可のWebコンテストに未完結状態で応募し、一次通過したものを、翌年完成させて同じコンテストへ応募したら一次落選したケースがある。
応募総数40程度の地方公募で一次落選したものもある。
完成長編に関しては「一次選考すらまともに通れていない」と考えるのが実態に近いだろう。

自分、長編に向いてない疑惑

ここ3年ほど、小説を書く上での労力はほぼ長編に集中している。
特に今年に関しては、第2回創元ホラー長編賞向けの長編ホラーについては、半年以上の期間と複数回の有償講評を依頼して徹底的に磨いた。

一方で、短編についてはそれほどの労力をかけていない。
第4回創元ミステリ短編賞に関しては、ホラー長編の応募が終わった後で存在に気付き、そこから1ヶ月もかけず突貫で仕上げた。
有償講評も依頼したが、指摘事項が大量に出てきて直しきれず、品質に納得がいかないまま応募した。

それでいて、ホラー長編は一次落選し、ミステリ短編の方は一次通過(二次落選)した。

とすると自分は、根本的に長編に向いていないのではないだろうか。
そう考えて、ChatGPTに解析を依頼した。

「やっぱりそれかよ」な解析結果

解析のやりとりは数時間続いた。
まず仮説を立て、仮説の真偽を検証できそうな過去作を投入し、仮説を修正し、さらに検証できそうな過去作を投入し。その作業を延々続けた。

「短編での能力が長編ではどう出ているか」「短編で有効な能力がなぜ長編になると薄まるか」「キャラクターの魅力構築に問題があるのではないか」「中間構造の設計に問題があるのではないか」「核となる柱要素が散っているのではないか」……数々の仮説が出され、端から棄却されていった。
最終的に残ったのは

「平均的にはよくできているが、強烈な個性やパンチ力がないのではないか」

という仮説だった。
……新人賞の選評でものすごくよく見るやつだな、と思った。しかも、言われても直す方法がまるでないやつ。

だが、今回のChatGPTはそこで終わらなかった。

何が個性を殺したのか?

ChatGPT曰く、私の古い短編受賞作には、かなり「やりすぎ」感があるという。

例えば、2021年の第1回ディストピア飯小説賞で入選した「Don't Think, Feel.」は、炭素/珪素生命・感覚変換・食べるという概念の反転までを全部、約1万字の中に押し込んでいる(ChatGPT曰く「かなり変です」)。
かつ部分的に、本筋と関係なく異様に描写が濃い部分がある。

2020年にコンテストで最初に受賞した、ノベルアッププラスの「クトゥルフの呼び声短編コンテスト」入賞作「新感覚2.5次元ミュージカル「GREAT OLD ONES」超降臨祭20XX ~大千秋楽公演~」はさらに顕著だ。
オタクや推し活の詳細を過剰なまでに入れ込み、読んだ後に「なんだったんだこれは」と読者に思わせる異様さはとても強いらしい。

これらはバランスがいいから受賞したというより、「この発想をここまでやるのか」という過剰性が価値になっているように見える……とChatGPTは指摘した。
言い換えれば「思いついた異様なものをどんどん作品へ突っ込んで、それ自体の勢いで走っている」そうだ。

だが直近に書いたものでは、短編長編問わず、各要素が綺麗に統制されている。
言い換えれば、作中に登場する要素が、すべてストーリー上で何らかの「機能」を持っている。
発想自体は今もかなり強いが、作中要素が「暴れていない」ために、全体としては綺麗に制御されて見えるのだという。

初期作と最近作の最大の差は「作者が『これは面白い』と感じた異物を、作品全体との釣り合いをあまり気にせず、大きなまま置いているか」であると、ChatGPTは見たようだ。

現在なら、おそらく内部編集者が、
「ここは本筋に対して長すぎないか」
「この説明は削れる」
「伏線として機能させよう」
「テーマとの接続を強めよう」
と言い始める。
それは通常、小説家としての成長です。
だから非常に厄介なんです。

ChatGPT談

能力を向上させたまま、尖りを残す手段はあるのか

では、失われた「尖り」を復活させる手段はあるのだろうか。

昔のように好き勝手に書けばいい、というわけでもないだろう。
それはただの後退だし、ChatGPTもそれはやるべきでないとの見解だった。

提案されたのは「保護区を作る」ことだ。

本文中に、意図的に制御を外す場を作る。
そこでは、ストーリーを進めなくてよい。
テーマを提示しなくてもよい。
伏線を置かなくてもよい。
ただし、その場面自体は面白くすること。

背景世界や登場人物たちの細かい実在感に関わる部分、読み手にとって「意味はないが、読んでいてただ楽しい」部分について、そうして自由に筆を遊ばせる。

ストーリーの本筋やミステリー的伏線など、プロットの大筋に関わる部分はしっかり統御する。
世界や人物の存在感・実在感に関わる部分は、自分の偏愛を炸裂させる。

そうして層別に切り替えることで、「現在の統御能力」と「旧作の制御されない突出」は共存できるかもしれない。

失うものは、どうせ何もない

というわけで、今書いている長編は「統御能力を残したまま『尖り』を導入することはできるか」の実験として使うことにした。

締切も応募先も決めない。遊べるところで、ただただ楽しく遊ぶ。
応募先を決めれば「その応募先に合わせたものを」と、また統御が復活してしまうだろう。だから決めない。
決めなければ締切も発生しない。好きな時に好きなように書く。

その結果どんなものが完成するかは、できあがるに任せる。
尖ったものができあがれば万々歳。できなければ、その時に次の方策を考えるまでだ。

ChatGPTが提案したのは仮説だ。AIが言うことなので、正しいかどうかはわからない。
だが少なくとも、私の目には有効に見える。なのでひとまず試してみようと思う。

確実に言えるのは、今までと同じやり方では、同じ結果しか出ないだろうということだ。
であれば何かを変えねばならない。

変えないまま14万字も書いて、また無駄にするのが一番怖い。
変えて実験をすれば、少なくとも「このやり方でうまくいかなかった」実験データは獲得できる。

どうせ、今のやり方では成果はゼロなのだ。
失敗したところで、失うものは何もない。
自然数において、ゼロは、ゼロ未満にはなりようがないのだから。

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