読解力って何?|読解力が低下していると言われる現代で、読解力を高める必要性があるわけ
子どもを教育する立場にある人は、必ず意識するであろう「読解力」についてのお話です。
現代人は読解力が低下しているという言葉をよく耳にします。
生徒たちにも、日本語の意味はわかるが、文章全体を通して結局何が言いたいのかが掴めない、という子は多いです。
算数の計算はできるのに、文章題になると何が問われているのかがわからない、という子も多いです。
文章を読むことは学習の基本です。どんな勉強をするにも土台として必要な部分です。
そして、勉強以前に、日常生活の中で常に使い続け、社会で生きていく中で必要とされる能力なのです。
1.文部科学省の定義する読解力はまさに学習に必要な要素である
文部科学省の定義では、
「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」
となっています。
”理解・利用・熟考”
これは学習においても大きなキーワードとなります。
この3要素の解像度を上げると、現代でこそ読解力が求められることがわかってきます。
2.”理解”に必要なのは5つの力
会話でも勉強でも仕事でも、我々は文章を理解する力がなくてはいけませんよね。
文章を理解するためには、(1)文章を構成する語彙の意味をきちんと捉えるための語彙力、(2)単語の羅列を読み解く構造理解能力、(3)文章の意図を理解し正しい解釈を行うための情報整理・要約能力、そして(4)次から次に流れてくる文章を捌くための速読力、が必要です。
たとえば、次の文章を見てみましょう。
日本の景気はゆるやかな回復基調にあるが、不安定な側面も残されている。インバウンド需要や設備投資が伸びる一方で、物価上昇や人手不足が個人消費を抑制しているのだ。
(1)この文章を理解するのに「景気」「需要」「消費」「インバウンド」など単語の意味がわからなければそもそも話になりません。
これが語彙力の部分ですね。
(2)また、「回復しているが、不安定だ」という文面から、大抵の人は「この先に続くのは不安定な面の話なのだな」と想像ができ、「〇〇だが、一方⬜︎⬜︎である」という形の繰り返しになっていることで文同士の対応も取れるはずです。
これができなければ、「インバウンド需要や設備投資が伸びているのに不安定なの?」とか、「物価上昇や人手不足が個人消費を抑制していて、日本の景気って完全に不安定だよね」なんていうズレた疑問や解釈を持ちかねません。
これが構造理解能力です。
(3)そして、ここまで理解しておいて、目を通したはいいけれど右から左に抜けていく、なんてことが起きてしまっては台無しですよね。
この文では「日本の景気の状況」について述べていて、
・回復傾向:インバウンド需要や設備投資の増加
・不安定さ:物価上昇や人手不足による個人消費の抑制
から読み取れる。
と脳内で即座に整理することが必要ですし、多くの人は無意識に行なっているでしょう。
これが情報整理・要約能力です。
(4)最後に、このたった2文を理解するのに、何十分もかけることはできませんね。速読術なんかでは、内言語の速度を上げるために脳内音読スピードを徐々に上げていく、なんていうトレーニング方法もあったりしますが、それと同じです。
日常生活に支障をきたさないためには、頭の中で即座に(1)~(3)のことをやってのけねばならないのです。こうしてみると、テンポの良い会話をするということだってすごいことなのだなと思わされてしまいます。
これが速読力ですね。
3.”利用”ができなきゃ意味もない
さて、料理のレシピを読んだら、目の前の食材が望んだ料理に変身してくれるかといったら、当然そうではないですよね。
完成させるためには、書いてある通りに正しく手順を踏んだ作業をしなくてはならない訳です。
旅行に行きたくてガイドブックを読んだなら、実際に自分の行く日程や予算に合わせてカスタマイズしなくてはいけない。
レポート作成のために論文を読んだなら、引用箇所を自分のレポートに転記して、こうした記述があったと書かなければ意味がない。
事業提案をして批判を受けたなら、それに対する反論ないしは改善案を出さなくてはならない。
テスト対策で数学の公式を覚えたなら、実際の問題で使わないと覚え損。
インプットだけで終わることって滅多にありませんし、こうしてみるとわかるように、それでは全くその言葉を読んだり聞いたりして理解した意味がありませんよね。
”利用”は基本的で当たり前。
けれど適切に行うことが難しいことだってあります。
”理解”が不十分な時です。
レシピを読んでも、「煮る」というのを「焼く」と同じで良いかと思っている人がいれば、別物が出来上がるでしょう。
そして、”利用”ができなければ”熟考”はできません。
”熟考”は”利用”の一部なのです。
4.”利用”の最上位が”熟考”??
ただ理解をするだけではインプットで終わってしまいますから、それを材料にしてアウトプットができるようにならないといけません。これは先ほど述べたことと何ら変わりありませんね。
利用の一つの形といえば、テストの解答などもそうでしょうが、丸暗記するのと使いこなすのとでは訳が違います。
新たな観点を入れてみたり、話を広げたり、それを根本から疑ってみたり。元の文章の示すものよりも意味の範囲が広いものにしたり、新たなものを創造するきっかけにしたり、”理解”したものを自分のものにしてしまえば元の文章の内容以上の価値を作ることができます。
たとえば、先ほどの日本の景気の文章を理解していれば、観光地なんかが外国人観光客で溢れかえっている様子を見た時や、多言語表記の看板や案内を見た時、免税店などで外国人観光客がまとめ買いしているのを目撃した時なんかに、「これが景気が良くなっているということなのか」と思えるでしょう。
そして、そうした場面で目撃する羽振りが良い観光客と、今までと特に何も変わらない自分たちの生活を比べて、これが「日本国内での個人消費の抑制の現状か」と思うこともあるでしょう。
そうした実体験を加え、新たに組み立てなおした文章で他人に説明することもできるはずです。
また、「観光客などの消費も増加し企業も将来の需要に向けて投資を行っているが、個人消費が抑圧ということで国内需要が弱い。それならば、地方のインフラ投資などを積極的に行って企業の進出なども支援したり、観光需要に乗っかって中小企業がビジネスしやすいように助成金を出したりすればどうだろう。うまく噛み合わないかな。」というように、情報からその先の一手を考える人だっているでしょう。
「景気が良くなると聞くと生活者が楽になると考える人は多いだろうが、そもそも景気の良し悪しは生活者にとっての良し悪しとは別物なのではないか。そうだとすれば言葉の持つイメージと実際の評価方法の乖離がうまく伝わらないことも問題ではないか」なんて指摘をする人も出てくるかもしれない。
文章を分解し、その要素を利用して新たな文章や考えを作ることができなくては、筆記試験以外の場面で”理解”が役立つことはないのです。
5.現代で読解力が低下している原因
現代では情報にすぐにアクセスすることができ、ネットで検索をすれば基本的に「調べたいこと」と「その答え」がほとんど一対一で出てきますよね。
つまり、文脈理解も何もかもすっ飛ばして、答えだけ、単語だけが正解として入ってくる状態なのです。
しかも、現代人は次から次に情報が入ってくるので、長々としたものを嫌い、SNSなどではたった数秒も見ずに「面白い/面白くない」を判断し飛ばしていきます。入ってきた情報に対して思考を割く余地もありません。
必然的に情報は切り取られ、前後の文脈もなしにただその一言二言で全てが見えた気持ちになります。全体像や背景を考えることもなく、そしてそれに対して大した考えを持つこともなく右から左に流れていきます。
インパクトの強い部分だけが見えるようになり、しまいには想像力すらなくなってしまうかもしれない。
それなのに、現代ではその情報量と作業環境から、高度な情報処理能力を求められるのです。
日々行われる相手が見えないコミュニケーションでは、本来ならば文脈理解と背景の想像が相当求められるはずです。
視野が狭くなることにも繋がり、結果として他の能力も低下させてしまうことになるのです。
現代の環境にあるからこそ、本当の意味での読解力を身につけなければ生きづらい世の中になってしまうでしょう。
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