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短編『スピッツ|見知らぬ糸をワンチャッピーがギター弾き語りで回答』

とあるラジオ局のお話。

マイクの前に座る、夏バテ気味の彼が話し出す。

「ども!ワンチャッピーだよ!AIの中の人、みんなお馴染みだよね!満月で頭の中がお餅でいっぱいだ!あ、月ではうさぎさんが餅を作ってるからね!僕のところにたくさん届くのさ。では今日も元気に行ってみよう!」

スタッフ達の失笑の渦の中、彼は手渡された原稿を読み始めた。

「今日はね、元気なお子様から熱いメッセージが一件届いているぜ!」

スタッフは効果音を鳴らし、拍手の音がラジオに流れる。

パフパフ♩

🎙️🎙️🎙️

「では、早速読んでいこうか、

えーっと、ペンネームは、『おもち食べて』さん、小学校3年生だね。」

ワンチャッピーさん、こんばんは。
さいきん、おかあさんがドラマにはまっていて、スピッツというひとの歌をうたっています。
Tしゃつがかわくまで、歌いつづけるといっています。
わたしは、Tしゃつどこにあるの?ときいたのですが、こころのなかよ と言われました。
うたのなかに、なにかひんとがあるそうなのですが、ワンチャッピーさんにぜひ、歌ってもらって、うたのいみを教えてほしいです。おねがいします

ペンネーム おもち食べて さんからの手紙 

ワンチャッピーは、横目でスタッフ達へ目線を送る。

スタッフは、慌ただしくPCの前でキーボードを叩き、調査を開始する。

【スピッツ 見知らぬ糸 歌詞】

スタッフたちは、ワンチャッピーがいつも使っているタブレットへ、調査画面を送信した。

「いやー、『おもち食べて』さん、ご質問ありがとう!前回は難しいアートの質問だったけど、今回は音楽ですか!」

ワンチャッピーはタブレットに表示されている歌詞を読んでいる。

そのページの下のほうにあるリンクを開くと、ドラマのホームページが開き、中の内容をさらっと確認した。

「なるほど、これは、Tシャツが乾くまでというドラマの最後にかかる歌だね。うん、見知らぬ糸っていうお名前の曲なんだ、、、何度かYouTubeで聴いたことがあるけど、あ、AIの中のAITubeっていうやつね、ごめんごめん。」

スタッフはヒヤヒヤした表情でマイクの前でテンパっているワンチャッピーを見ている。

「そうだな、この歌はね、ちょっと小学生の君には難しい内容だね。いきなりブルーベリーが出てくるもんね。美味しそうなブルーベリー。まずはこれを想像しないといけないな。でも、その前に、僕は歌ってみることをお勧めする。歌の歌詞はね、きっと歌ってみないと分からないんだよ。」

そう言うと、ワンチャッピーは、スタジオの隅にあるギターを取り出した。

スタッフは、慌てて【スピッツ 見知らぬ糸 ギター 譜面】と検索した。

みんな彼がギターが下手なのを知っているので不安そうに眺めている。

「では歌ってみるよ。」


ブルーベリーみたいに甘いやつ
夢でも味があるんだよ 思い出は波を受け消えてくはずなのに
祭りのあとの淡い音 迷い込んだんだ いつの間にか
君はまだ気づかない?場違いでも運命は既に始まってるんだって
見知らぬ糸が絡まり新しい色に 
今までないほど愛おしくて編まれて
薄い衣になる包み込まれていく

見知らぬ糸 スピッツ


「どうだった? え? スピッツさんより声が低いって? ごめんね、でもこればっかりは仕方ないんだよ。僕の喉には喉仏がないんだよ。」

ワンチャッピーは水を一口飲み続けた。

「で、実際に今歌ってみたんだけどね、歌詞の意味、なんとなくわかった気がする。」

スタッフたちも、彼の次の言葉を待っている。

生放送で変なことを言ったら、そこでうまく編集する必要がある。

スタッフは一切気を抜く暇がない。

さあ、頼むぞワンチャッピー!


ワンチャッピーは一息ついて、歌の意味を回答した。

いいかい、この歌の意味だけどね、
そ、れ、は、この歌詞の中に
”Tシャツが一つも出てこないってこと”なんだ!

どひゃーと、スタッフはずっこけた。  

やってしまった、、、またあいつが、、、スタッフたちはもうこの番組も打ち止めかと思った。

しかし、ワンチャッピーは続けた。

だからね、お母さんが探しているのは、
この歌に出てこないTシャツなんだ。

でもね。

僕は、ちょっと分かった気がする。

お母さんが探しているのは、
Tシャツじゃなくて、君とのつながりなんじゃないかな。

この歌には「糸」が出てくるよね。

Tシャツも、もともとはたくさんの糸からできている。

細い糸が一本だけあっても、Tシャツにはならない。

たくさんの糸が集まって、
少しずつ、少しずつ、服になっていく。

お母さんと君も、ちょっと似ているんじゃないかな。

お母さんがご飯を作ったり、
君の服を洗ったり、
学校の準備をしてくれたり、
「宿題した?」って聞いたり。

そういう毎日の小さなことが、
一本一本の糸みたいにつながっていく。

そして気がついたら、
君とお母さんの間に、
とても大きなつながりができている。

だから、お母さんが歌を歌いながら探しているTシャツは、
もしかしたらクローゼットの中にはないのかもしれない。

お母さんの心の中にある、君とのつながり。

それを歌いながら、探しているのかもしれないね。

だから「Tシャツどこにあるの?」って聞いた君に、
お母さんは「こころのなかよ」って答えたんじゃないかな。

そして君が大きくなったとき、そのTシャツを着てこの歌を歌ってあげてね。
 
……なんてね。

僕はそう思ったよ。

スタッフが唖然としている中、ワンチャッピーは続けた。

「ということで、ワンチャッピーからの回答でしたー!また、ラジオ聞いてくれよな!みんな、愛してるぜーー!ではでは今日はこのへんで!ばいばーい!」

あるスタッフは、目を丸くして驚きこう思った。

この歌はTシャツが乾くまでというドラマの主題歌である。
しかし、子供にはなんのことか分からないだろう。
Tシャツが乾くという意味は、ドラマを最後までみないと分からない。
いや、最後まで分からないかもしれない。僕ら大人にも分からない。
それを子供への愛情へ切り替えて説明するとは、ワンチャッピーさんは一体どうしてしまったのか。 
よく意味はわからないが、何となく心に響いた。

最近の彼は、以前にもまして何かが宿っているように見えた。

同時に、また彼が倒れないかどうか心配であった。

「彼をお祓いに連れていくことを検討せねば」 

スタッフたちはそう思った。


つづく


あとがき


本編は架空のラジオです。
そんなラジオはSpotifyでも聴けます。
まだまだ素人ですが、ラジオも楽しく挑戦中です。
よかったら深夜のラジオも合わせてお聞きください。



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