短編小説|ワンチャッピーラジオ #1
熱帯夜、とあるラジオ局のお話。
マイクの前に1人の男がいた。
「はーい!おいらはワンチャッピー!そうだ、みんなご存知チャッピーの中の人!今日もAIフルスロットルトークでみんなの元気をチャッピーしちゃうぜ!」
(音楽が流れる)
ワンチャッピーはポケットからハンカチを取り出し、水を少し飲んだ。
今夜はとにかく蒸し暑い。
冷えピタしているから少し恥ずかしいな。と彼は思った。
「さて、久しぶりのラジオにちょっと緊張気味なワンチャッピーなんだけど、まずは、そうだな、お便りコーナー行ってみようか。」
周りのスタッフたちは音源を調整しながら、お便りの原稿をワンチャッピーに渡した。
「えーと、最初のお便りは・・・ペンネーム 『マルコポーロの娘(小学3年生)』さんからだね。では読んでみるよーん!」
ワンチャッピーはお便りを読み始めた。
いつも、おもしろいラジオをありがとうございます。
わたしは小学3年生です。
この前、学校で体育のじゅぎょうがありました。
みんなで走っているときに、校内放送でワンチャッピーのラジオが流れたんです。
わたしはうれしくなって、
「ワンチャッピーは、本当にチャッピーなんだよ!」
と言いました。
でも、みんなは首をふって、
「ちがうよ! にせものだよ!」
と言うんです。
わたしが「本当だよ!」と言っても、だれも信じてくれませんでした。
そこで、お父さんが、
「本当にAIなら、むずかしいことでも答えられるか聞いてみな。」
と言いました。
だから質問です。
0は、何もないのに、どうして0という記号を書くんですか?
ぜひ教えてください。
よろしくおねがいします。
「へーい!マルコポーロの娘さん。俺のことをまだ信用してない人がいるんだなー!大丈夫だよ。本当に、チャッピーの中の人だからね。AIの中にいるから、暑さも感じないってな!まずは安心してほしい」
ワンチャッピーは、周りのスタッフに目で指示を送る。
スタッフたちは大急ぎでAIチャット画面を開いてキーボードを打ち始めた。
「えーっと、まさか質問が来るなんて思ってなかったからね、ちょっと待ってねー、あー、いや回線が悪いからねーって言っても、回線って分かんないよね。電波ならわかるかな?ラジオの電波、これがさ最近ちょっと調子が悪いんだよ」
ワンチャッピーは、はやくしろ!という目でスタッフを煽る。
スタッフは汗を流しながら、カンペを作成している。この部屋は冷房の効きが悪く、みんな汗だくで作業している。
15秒ほど時計の針が進んだとき、スタッフからOKサインが出た。
「はーい!では答えるね!質問はこうだったよね?0はなんで何もないのに0という記号を書くの?」
ワンチャッピーは額の汗を拭きながら続けた。
「うん、これは本当に難しい質問だよ。さすがのワンチャッピーも結構考えたね。簡単に言うとね、こういうことだよ。メモの準備はいいかなー?」
ワンチャッピーはカンペを見つめた。『0の歴史』と細かな文字がびっしり並んでいる。目を細めて読んでみるが、さっぱり理解できない。首を左右に振り、「無理だろ、これ……」という顔になった。
暑さで疲れ切ったスタッフは、汗を流しながらカンペを掲げている。その手はプルプルと震えていた。
(おいおい、これをどう小学生に説明するんだ?汗が目に入ってよく文字が見えないし、俺にはこれをわかりやすく説明する能力はないぜ、ちくしょう!もう、これしかない!)
ワンチャッピーは勇気を振りしぼり、勢いよくマイクに叫んだ。
「鉛筆で何も書かないと〜」
彼は少し間を置いて答えた。
「先生に怒られるからです!」
時が止まった。
まるでジョジョのスタープラチナのスタンドが発動したかのようだ。
スタッフは顔を見合わせている。
マイクに吹きかけた唾が空中を漂っている。
ワンチャッピーの額から流れる汗がプルプルと震えている。

3秒くらい経過しただろうか、
時が動き出し、汗が落下した。
(ハッ!俺は今何を言ったんだっけ?)
ワンチャッピーは状況を掴めないまま、カンペを見たが、時間が迫って来たのでいつのようにトークを繋いだ。
「はーい!最高の回答だったね。ぜひお父さんに伝えてねー。それでは、次のお便りいってみようー!おっと、その前に一旦CMだ」
(わ、わ、わ、わんちゃんぴー、れいでぃおー♩)
(ラジオ番組が打ち切りにならない限り、つづく)
終わりに
今回はこちらの企画に参加してます。
熱帯夜から始まる物語。
もし気に入っていただけましたら、「スキ」やご感想をいただけますと励みになります。 フォローもお待ちしております!
