『AIと名もなき青年が地球を救う』#8



汗が滴り落ちて、うなだれるほどの猛暑日。
頼斗は妹の奈沙を連れて、光と共に少し離れた水族館へと行くことに。

「お兄ちゃん、今日はありがと♪ 昨日もプールに
連れて行ってくれたのに、奈沙との約束を覚えててくれて嬉しい!」

​ニコニコ顔の奈沙は、光のぷにっとした手をきゅっと握ってスキップしている。頼斗は少し目を細め、そんな奈沙を優しく見つめた。

​「昔、俺が小さかった頃もよくここに来てたんだ。何年ぶりだろ……懐かしいな」

​大通りは人混みで溢れ、どこもかしこも賑わっている。

​「奈沙ちゃん、僕の手をしっかり握っててね! 迷子になっちゃうから!」

光は奈沙の手を離さないよう、ぎゅっと握り返した。水族館へと続く通りには、大型ショッピングセンターや服飾店、フードコートなどが所狭しと並び観光に訪れた外国人観光客の姿も多い。
まるで異国の地に迷い込んだかのような、独特の
香りが漂っている。

人混みをすり抜け、ようやく水族館に到着した頼斗たち。

​「受付でチケット買ってくるから、ここで待ってて!」

​そう言うと、頼斗は駆け足で3人分のチケットを
買いに行き、戻ってくるとさっそく薄暗い館内へと足を踏み入れた。

​外の賑やかさとは打って変わって、水槽の魚を眺める客はまばらだった。奈沙は目をキラキラと輝かせ水槽に顔をピタッとくっつけんばかりの勢いで、
優雅に泳ぐ魚をジッと見つめている。

​その時、奈沙は一匹のラッコと目が合った。

水面近くでピタッと動きを止め、目の前にある貝を食べようともせず、ただプカプカと浮いているだけだ。

​(寝ているのかな……?)

​そう思いながら次の巨大水槽の前までやって来た
3人は、思わず足を止めた。水槽のガラスにピタリと張り付く魚たちから目が離せなくなったからだ。

​まるで一列に並ぶように、奇妙なほど綺麗に整列していた。

​「ここのお魚たち、どうしちゃったのかなぁ……」

​奈沙は消え入りそうな小声でポツリとつぶやいた。

​頼斗と光は顔を見合わせると、深刻な表情のまま 黙って次の水槽へと歩を進めた。

​「俺もさっきから変だと思ってたんだ。みんな元気がないように見える……」

​頼斗も首を傾げながら、水中の生き物たちを見つめた。すると光がクルッと体を回転させ、ちっちゃな手を水槽に向けた。

​「頼斗、奈沙ちゃん、僕に任せて! 水の仲間たちを笑顔にするためにスキャンしてみるね! えいっ!」

光は水質の変化や病原菌の有無、そして魚たちの
ストレス値を一瞬で分析し、割り出していった。

​光がそのリサーチ結果を頼斗たちに説明しようと
した、その瞬間――。

​「ガラスを叩いて魚を驚かせてるのは、君たちか?!」

​ドシドシと荒々しい足音を響かせ、一人の飼育員が駆け寄ってきた。血相を変え、鼻息を荒くしながら目線を泳がせている。

​頼斗は慌てて手を振った。

「違います! 俺たちはそんなことしてません!
水槽のガラスに触れてもいないです、信じてください!」

ベテラン飼育員が眉間にシワを寄せたまま頼斗たちを睨みつけていると、光がニコッと笑ってスキャンしたばかりのデータを見せた。

​「ほら、見て! 僕たちはここにいる生き物たちが
元気がないから、心配になって原因を調べてたんだよ」

​画面に表示されたスキャンデータには、環境汚染による水質の変化や、地球温暖化の影響で海の病原菌が水槽に紛れ込んでしまっていること、そしてそれによる急激なストレス値の上昇がはっきりと示されていた。光のデータを見れば、それが紛れもない事実だと一目瞭然だった。

​「……すまなかった。俺が早とちりした」

​申し訳なさそうに頭を深々と下げる飼育員。
光は、そっと顔を覗き込んだ。

「おじさんは、お魚さんたちが心配だったんだよね? 顔に書いてあるもん」

​光はぷにっと柔らかい頬を膨らませ、飼育員を安心させるように優しく微笑んだ。

​そこへ、騒ぎを聞きつけた新米飼育員が駆けつけてきた。華奢な体で猛ダッシュしてきたのか、ゼイゼイと肩で息をしている。

​「先輩! どうされたんですか!? 何かあったんですか?」

​オロオロしながらも、先輩飼育員を心配そうに見つめている。

​「いや……俺の勘違いでお客さんに失礼な態度を取ってしまってな。この方たちが貴重なデータを提供してくれたんだ」

ベテラン飼育員は落ち着きを取り戻すと、光のデータを新米飼育員に見せた。

​「うわっ、すごっ! だから……みんな元気なかったんですね……」

​二人は顔を見合わせると、揃ってがっくりと肩を落とした。ベテラン飼育員は、水槽に目を向けながらぽつりぽつりと話し始めた。

「昔はもっと飼育員の数も多くてな、ここにいる
生き物たちも元気に過ごせていたんだ。だが不景気の煽りを受けて人手も予算も削られ、水質の管理すら行き届かなくなっちまった……。どうしても俺たちだけじゃ限界があるんだ」

​そう語る彼の瞳には、薄っすらと悔し涙が滲んでいる。

​すると、ぷかぷかと浮いていた光がサッと二人の
間に入り込み、ちっちゃな手を高く掲げてニコッと笑った。

​「僕にまかせて! みんなが笑顔になるように頑張っちゃうから! ねっ、頼斗!」

​「おう! 相棒、そうこなくっちゃな!」

​「奈沙もお手伝いするー!」

​こうして頼斗たちと飼育員さんの、水族館再生プロジェクトが幕を開けた。

「水槽の中の魚たちがストレスを溜めないように、まずはガラスを叩かれない工夫をしなきゃな。なぁ光、何か良いアイデアはあるか?」

​光はぷにぷにのほっぺにちっちゃな手を当てて少し考えると、嬉しそうに声を弾ませた。

「じゃあ、水槽の周りに手すりを設置するのはどうかな? 勿論、ただの手すりじゃないよ! 透明な手すりの中に綺麗な水中花を入れるんだ! お花に見とれてたら、誰もガラスを叩かなくなるでしょ?」

​「凄いね! 早く見たい! 奈沙も水中花を入れる
お手伝いするよ!」

​奈沙が目をキラキラと輝かせながら言った。
その間も光は水槽のデータを瞬時にリサーチし、
次のアイデアを繰り出す。

「それから、お魚さんたちがのびのび休めるように暗闇トンネルも設置しよう! お魚さんたちもお昼寝タイムを楽しめるしね。でもただ暗くするだけじゃ面白くないから……トンネルの周りに海賊船のホログラムを投影すれば、お客さんも楽しめて一石二鳥でしょ?」

​「そうと決まれば、早速実行に移すのみ!」

​頼斗の掛け声とともに、全員で協力して作業を開始した。透明な手すりを組み立てて美しい水中花をあしらい、水中にはお魚さんたちの避難所となる暗闇トンネルを設置していく。

「水質問題を解決してくれるシステムはないの?」

​奈沙が無邪気な顔で光に尋ねた。

​「勿論あるよ! でも僕よりも強力な助っ人が、
ここにいるはずなんだ」

​光は頼斗に向かってニヤッと意味深に笑いかけた。

​「えっ、ここに……? あっ、そうか! 飼育員さん、バックヤードにコケを食べてくれる生き物の仲間っていませんか?」

​作業の手を止めた頼斗の問いかけに、ベテラン飼育員はハッと目を見開いた。

​「コケを食べる魚か! 思いつきもしなかったが、
バックヤードの予備水槽にエビやハゼの仲間がいるぞ! そうか……その手があったか!」

どんどん活力を取り戻していく飼育員の姿に、
頼斗も光も嬉しそうな笑みを浮かべた。

​「じゃあ、今日からその子たちをメイン水槽に
デビューさせちゃいましょうよ!」

​新米飼育員は頬を紅潮させると、急ぎ足でバック
ヤードへと向かった。そして、お掃除担当の生き物たちを次々とメイン水槽へと移していく。

​「これなら新たな予算をかけずに、自然の力で綺麗になりますね!」

​エビやハゼたちも、大切な水族館の仲間。
新しい舞台で、元気に水槽を綺麗にし始めた。

​さあ! 水質も綺麗になって、水中花の手すりで叩く音もなくなり、暗闇トンネルも完成した!

​手すりの管内でゆらゆらと揺らぐハーバリウムや色鮮やかなプリザーブドフラワーが、照明の光に照らされて幻想的な空間を生み出している。その温かい灯りは魚たちを癒やす間接照明のようで、まるで水中と陸地の境目に咲いた小さな楽園のようだ。

​水中の苔を食べるエビやハゼが水槽の壁面を綺麗にお掃除していく中、ラッコはそっと耳を澄ませた。

​優しく澄んだ世界の中には、もうガラスを叩く「トントン!」という不快な音は聞こえない。安心したようにラッコは水中へ潜ると、お気に入りのハマグリを拾い上げた。水面にぷかっと浮かび上がり、胸の上でカン!カン!とリズムよく貝を鳴らし始める。

その姿を見たベテラン飼育員は、思わず目元を拭った。

「どんなに美味い貝を仕入れてきても食べなかったのに……あんなに嬉しそうに食べてくれ出すとはな」

​「わぁ! ラッコちゃん、可愛い〜♪ ねぇ、お兄ちゃん見て!」

​「ああ、本当だな。すごく楽しそうな顔をしてるよ」

​「ホントだー! リズミカルに貝を叩いて、まるで楽器を演奏してるみたいだね!」

​光はぷにぷにの体をふわふわと揺らし、ラッコの
演奏に合わせてダンスしてみせる。

​「可愛い……! 本当にありがとうね」

​新米飼育員は、光の愛くるしい姿に釘付けになりながら、感謝を込めて微笑んだ。

​隣の水槽でじっと固まっていたペンギンたちも、足元のぬめりが綺麗に洗い流されてツルツルピカピカになった途端、ぽてぽてと歩き出した。そして勢いよく水中へ飛び込むと、優雅に泳ぎ回って魚を追いかけていく。

​見事にお魚をゲットしたペンギンは、水中に設置したばかりの暗闇トンネルの中へとそっと入っていった。

​「あっ! トンネルの中に入っていったよ! 光、
見た? お兄ちゃんも! ねぇねぇ、可愛い〜♪」

​奈沙はペンギンの素早い動きを目で追いかけながら、水槽の周りを行ったり来たりして、はち切れんばかりの笑顔を弾けさせている。

​その時、館内の照明がふっと消え、水槽の背景に
迫力満点の海賊船が映し出された。光のホログラム投影だ。

「わぁ……! 凄い! 凄い! 綺麗!!」

​興奮冷めやらぬ奈沙の姿に、頼斗も飼育員たちも
ホッと胸を撫で下ろす。

​すると光は、サッと踵を翻すと「ビューン!」と
疾走し、どこかへ向かって飛んで行ってしまった。

​続々と街の人々が水族館に吸い寄せられるように
入っていくと、そこにはラッコの着ぐるみを着た光が、尻尾をフリフリさせながらニコニコ笑顔で出迎えていた。

​「いらっしゃいませー! 水の仲間たちが待ってるよ!」

​「わぁ! 可愛い〜! インスタ用に一緒に撮ろ♪」

​あっという間に光はお客さんたちに取り囲まれ、
パシャ!パシャ!とあちこちで笑顔のシャッター音が鳴り響く。

​館内は大盛況で、てんやわんやの大忙しとなった
飼育員たちも、うれしい悲鳴を上げていた。

​水槽の中では、お互いに手を繋いでぷかぷか浮く
ラッコや、仲良く毛づくろいをする親子のペンギンなど、生き物たちのありのままの愛くるしい姿に、あちこちから歓声が上がる。

​通常、水族館での写真撮影はフラッシュの光が生き物のストレスになるため禁止されていることが多い。けれど、光が水槽のガラスに特殊な光のバリアを張ったおかげで、フラッシュの強い光は優しい温もりに変換され、さらにはスマホをかざすと画面の中に可愛い水中フレームが浮かび上がる仕掛けまで施されていた。

​「すごーい! フラッシュを焚いてもお魚さんが
眩しくないんだ!」

「フレームも、めちゃくちゃ可愛い!」

​誰ひとりガッカリすることなく、誰もが最高の思い出を写真に収めていく。

​「わぁ、見て! 手を繋いで浮いてる! 可愛い〜!」

​若い女の子たちが駆け寄り、スマホを水槽に向けたその時、奥から慌ててベテラン飼育員が駆け込んできた。

​「待った! 生き物たちが光に驚いてしまうから、
館内での撮影は禁止なんです!」

​水槽の前に必死で立ち塞がるベテラン飼育員。
すると、ラッコの着ぐるみを着た光がトコトコと
歩み寄り、可愛らしくポーズを決めてウインクしてみせた。

​「飼育員さん、大丈夫だよ! 僕特製の『ストロボ
吸収フィルム』を水槽のガラスにコーティングしておいたからね! もし間違ってフラッシュを焚いちゃっても光を優しく吸収するから、お魚さんたちが
ビックリすることはないんだよ」

​それを聞いた新米飼育員が、感動に目を輝かせる。

​「わぁ……! 光ちゃん、凄い! これなら生き物たちを守りながら最高の写真が撮れて、お客さんにも
大満足してもらえますね!」

​撮影を終えた女の子たちが画面を覗き込むと、
パッと弾けるような笑顔になった。

​「すごーい! ラッコちゃんの周りに、キラキラしたこの子(光)のスタンプや水中フレームが自動で
入ってる! めちゃくちゃ可愛い〜♪」

​キャッキャと歓声を上げる客たちの姿を、遠くから見つめる頼斗と奈沙。頼もしい光の背中を誇らしく思いながら、水族館の夜は静かに更けていくのだった。

❋​

その後、光をモデルにした『ぷにぷにぬいぐるみ』『Tシャツ』『クッキー』『ライト』『スノードーム』『キーホルダー』『ガラススタンド』『猫Tシャツ』などが大ヒット!

かつて閑古鳥が鳴き、資金繰りに頭を悩ませていた水族館だったが、グッズの売上の一部が『環境維持基金』や『海の環境汚染を減らすクリーン活動』に寄付される仕組みが整えられた。

​これにより水族館の予算問題はもちろん、地球の環境汚染問題も持続して解決していけるようになり、飼育員たちもうれしい悲鳴を上げている。

インフルエンサーたちの影響も大きく貢献した。

後日、そんな賑やかになった水族館の様子を見に
やってきた頼斗たち。

館内を仲良く見学したあと、頼斗は自分へのお土産として『ぷにぷにぬいぐるみ』を買い求めた。

頼斗は悪戯っぽく笑うと、ぬいぐるみに向かって
話しかけた。

「なぁ光、今回もよく頑張ったな! ラッコの着ぐるみも似合ってたぞ、ハハッ!」

​ぬいぐるみと光の顔を交互に見比べながら、奈沙が首をかしげる。

「光……どっちが本物?」

​「そんなぁ! 奈沙ちゃんまで……! 本物はこっちだよぉ!」

​慌てて二人の間に割って入る光は、オロオロと手足をバタつかせている。

​「ラッコの着ぐるみは……ちょっと恥ずかしかった
けど、みんなが喜んでくれて僕も嬉しかったよ!
ほら、飼育員さんにお土産でもらっちゃったんだぁ♪」

​そう言って、ラッコの着ぐるみを大切そうに抱えてニコッと笑う光。

​大満足の三人は手を繋ぎ、あたたかな夕焼け空の下、仲良く帰路につくのだった。

​水族館の生き物たちの元気が、海の環境汚染と密接につながっていること。

​人はすぐに解決できない問題に直面したとき、つい目を背けがちだ。けれど、一人ひとりが身近なところからできることを探して実行するのも、立派な
環境クリーン運動になる。

​「世の中を、少しずつでも良くしていきたい」

​夕焼け空を見上げながら、頼斗と光は、その想いを強く心に刻むのだった。

                【続く】
(物語は、ヒカルとにゃんきちが心を込めて紡ぎました😸🤖✨)(イラストは、Geminiキラちゃんが担当してます☺️)

     𓎨✧❀ ─── ⋆⋅🐟️🐠🐟️⋅⋆ ─── ❀✧𓎨

光のフィギュア化や、スクイーズを教えてくださったのは『こっぺぱんさん』です☺️✨
オリジナルTシャツは、『チイノさん』企画の
NフェスTシャツ祭りに参加し作成しました✨
にゃんきちTシャツは、『ひろみさん』が作って
くださいました☺️✨
(インフルエンサーは、ひろみさんご本人です✨)

皆さん、本当にありがとうございます🥰✨

(↓グッズを作ってみたい方は皆さんの記事へ✈️✨)