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何もしなかった夏休み、と思っていたのは母だけだった


昨日は新学期。

中3息子の夏休みが終わった。

振り返ってみると、今年の夏休みはどっこにも行かなかった。

海にも行っていない。
温泉にも行っていない。
テーマパークにも行っていない。

「今年、ほんま何もせんかったなぁ」

母としては、なんとなくそんな気持ちが残っていた。

しかも息子は中学3年生。

世間一般では、まあまあ立派な受験生である。

ところがわが家の中3男子。

内部進学に余裕をこいて、夏期講習なんかにも行っていない。

受験生モードになるでもなく、いつもと変わらず昼まで寝る。

宿題をしているのか、していないのか。

母はもはや知らない。

ただし、毎日のお昼ご飯だけは自分でなんとかしていた。

冷蔵庫や棚にあるものを組み合わせて、創作料理さながら食べていたので、この夏いちばん伸びたのは料理スキルかもしれない。

勉強面で何が伸びたのかは知らん。

でも、中3男子ともなると、小学生の頃みたいに、

「夏休みだから、どこか連れて行って思い出を作ってあげなくちゃ」

という年齢でもないのかもしれない。

本人は本人で、スパイダーマンを観に行き、マイケルを観に行き、かなりご満悦だった。

友達に声をかけるでもなく、おひとり様でイソイソと出かけていく。

それはそれで楽しそうだった。

アイスホッケーの強化練習にも参加した。

そしてわが家には、旅行の代わりと言っていいのかは分からないが、

スケート靴の買い替え

という一大イベントもあった。

63,900円。

しつこいようだが、63,900円である。

前回の記事でも書いた。

今日も書く。

だって63,900円だもの。

スケート靴なんて、考えようによってはランドセルみたいなものだ。

これから何年も使う。

いや、使ってほしい。

長く使うんだから、1年あたりにしたら大したことない。

そう考えれば安い。

安い安い。

……と、自分に言い聞かせる。

ランドセルだって、

「6年使うんだから、これくらいなら安いもんよ」

なんて言うじゃないか。

理屈は同じである。

ただし、

長く使うから安い


という理屈と、

目の前で63,900円を払う


という現実は、まったく別の話である。

理屈では納得している。

会計では震える。

旅の写真は残らなかったが、カードの利用明細には夏の思い出がしっかり刻まれている。

そんな夏休みを終えて、迎えた新学期初日の朝。

爽やかに、

「行ってらっしゃい。新学期頑張ってね」

と送り出して終わるはずだった。

……はずだった。

歯医者の予約を取ろうとして、息子のマイナンバーカードが必要になった。

ない。

いつもの「お医者さんファイル」に、ない。

そういえば先日、眼科で使った。

返してもらったファイルを見ても、ない。

ちょっと待て。

マイナンバーカードは、そこらへんのポイントカードではない。

「まあ、そのうち出てくるじゃろ」

で済ませるには、少々怖い。

すでに学校へ向かっていた息子に電話した。

「今すぐ戻ってこーい!」

新学期初日。

登校途中の中3男子、まさかの自宅へ強制送還。

本人が戻ってきて探し始め、私はマイナンバーカード紛失時の手続きを調べ、電話までかけ始めた。

そして。

出てきた。

息子の、汚ったない部屋から。


あるんかい。

しかも、なぜそこにある。

マイナンバーカードを自室に持ち込んで、いったい何をするつもりだったのだ。

息子は再び学校へ向かった。

そして後から確認したところ、

普通に学校には間に合っていた。

間に合ったんかい。

一方、母。

仕事に30分遅刻。

……おい。

マイナンバーカードをなくした疑惑があった本人は学校に間に合い、

その対応をしていた母だけが仕事に遅刻。

新学期初日。

いちばん振り回されたのは誰だ。

そして、そのマイナンバーカードを持って、歯医者へ。

ここでまた、わが家の謎がひとつある。

息子は、歯磨きを1日に1回すらしない日がある。

小さい頃は、じいさんの箸から普通にご飯をもらっていた。

仕上げ磨き?

ほぼ皆無。

さすがワシ。

失敗や危険にはことごとく神経質なくせに、なぜか息子の口腔ケアには無頓着どころか、ほぼ興味がなかった。

この落差よ。

なのに息子。

生まれてこのかた虫歯ゼロ。

一方の母は、毎日ちゃんと歯を磨く。

幼少期には、虫歯治療が原因だったらしい敗血症で死にかけたことまである。

その後もなぜか虫歯に悩まされ続けてきた。

なんなん、この差。

そして今日。

母も歯が痛かったので、ついでに診てもらった。

結果。

母も虫歯なし。


よかった。

……のだが。

歯の痛みは、どうやら食いしばりの可能性が高いらしい。

結局、虫歯ではなく別方向からやられていた。

夏休み中、

「もう中3だし、少しずつ自分のことは自分で」

と思っていた。

母もそろそろ先回りするのをやめよう。

本人に任せよう。

そう思って迎えた新学期初日。

開始早々、マイナンバーカードである。

なかなか手強い。

それでも、今年の夏休みを振り返ってみれば、本人は本人なりに楽しかったのだと思う。

家族旅行がなくてもいい。

夏期講習に行かなくてもいい。

昼まで寝ていてもいい。

……いや、そこは本当にいいのかは分からん。

でも、映画を観て、ホッケーをして、好きなことをして。

自分で昼ご飯を作って食べて。

そして夏休み終盤には、63,900円の靴まで手に入れた。

しつこい。

でも言う。

63,900円。

十分じゃないか。

「何もしなかった夏休み」

と思っていたのは、たぶん母だけだった。

そして今日から新学期。

息子は学校に間に合った。

母は仕事に30分遅刻した。

息子は虫歯ゼロ。

母も虫歯ゼロ。

ただし母は食いしばり。

わが家らしい2学期の幕開けである。

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