黒澤明の名作『天国と地獄』がNY舞台にデンゼル・ワシントン主演でリメイク!
音楽業界の“王”で資本主義の権化
本日Apple TVにてA24製作、スパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン主演の話題作『天国と地獄』がリリースされた。黒澤明監督の往年の名作をリメイクしたものだ。

身代金誘拐事件をテーマとする作品であり、事件の舞台は横浜からNYに、主人公は靴メーカー重役から音楽業界の大物プロデューサーへと大胆にアレンジしている。時代を反映するとはいえ、まったく別の作品のような印象だ。
デンゼル演じる音楽プロデューサーのキング氏は「カネが重要」で資本主義の権化のような人物として描かれる。かつては音楽業界の“王”と周囲から評価されていたが、最近はヒット作が減り、カネまわりに四苦八苦していた。
そんな中、誘拐犯から一本の電話がかかってくる。
「お前の息子を誘拐した、1750万ドルを払え!」
3つのジレンマに悩む
ところがキングは全財産をはたいてレコード会社の経営権を握るために奔走している最中であり、身代金を払う余裕などない。
しかも誘拐されたのは息子ではなかった。同じ屋根の下でともに暮らし、家族同様の関係を築いている運転手の息子だったのだ。
アカの他人に多額の身代金は払えない
しかし家族の一員のような友人の息子
ビジネスで大金が必要で金銭的余裕はない

いわゆるトロッコ問題だ。
倫理的には誘拐された友人の息子のために身代金を肩代わりしてあげたいが、経済的にはその思いに応える余裕がない。
モラルとリアリズムの中で人はどのように考えを変えるのか。
音楽業界への厳しい批判も
黒澤作品のように、身代金受け渡し時や犯人を絞り込む過程でサスペンスシーンを盛り込んでいる。ここは見どころのひとつだが、その場で使われる音楽が妙にアップテンポでスリルを打ち消しているように感じた。
一方、スパイク・リー監督は最近の音楽業界に対して「モノ申したい」ことがたくさんあるのだろう。全編を通じて、業界への批判が感じられる。
あるいは古き良き時代を懐かしんでいるのか。
たとえば、売れればどんな曲でも良い、売れっ子アーチストの使い捨て、音楽プロデューサーの目利きというか“耳利き”能力が劣化していると言いたいのではないかな。
どうしたよ、ジェフリーライトは?
キングの運転手役をジェフリー・ライトが演じているのだが、あまり存在感を感じられなかった。イスラム教徒の設定であり、あのお祈りのシーンは必要か。演技派で好みの役者だが、犯人追跡シーンでもあまり活躍の場を得られず、心もとない男の役だった。
脚本のせいとはいえ、キングとは違う種類の“熱血キャラ”のほうが緊張感は高まったと思うのだが。やや裏社会に通じている風を装っているが、それも中途半端で不発気味だ。

後半、容疑者のアパートを訪れた際、ルームナンバーに「A24」と記されていた。しつこくカメラが追いかけるので誰もが気づくはず。
ちょっとあざとい仕掛けだが、売名ににも取れるエゲつなさに笑ってしまった。
評点:★★★★☆(3.7/5.0)
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