【短編小説】生まれくる前に記憶がある、生前記憶の物語

 私の母が私を見もごってから、それは、お腹の中にいた頃から、記憶というものがあった。生前記憶の時間帯は、半年に上った。

母がお腹をさすってニコニコしていたこと、煙草の匂いを避けようと自制していたこと、カレーを食べさせてあげたいと意気込んでいたこと、成人する前に一人前にすることを誓っていたこと、男の子なら勇士という名前を付けようとしていたこと、女の子なら清美という名前を付けようとしていたこと、お父さんに生まれたあと、子どもを見せてほんわかしたかったこと、お寿司を食べたのを共鳴して欲しかったこと、山登りができるくらい体力があって欲しかったこと、……など様々な記憶を、生まれてくる前から体験していたのである。

0歳の日にお母さんに話しかけたことがある。お母さん、私を産んでくれてありがとう。お母さんの思いは全然伝わっていたよ。お母さんが子どもによい影響を与えても、わるい影響は与えたくなかったこと。お母さんが私の未来を真剣に考えてくれたこと。お母さんが歓びを親戚と分かち合いたかったこと。お母さん、生きてて私は幸せだよ。いつか恩返ししたいから、そのときはよろしくね。

追記

お母さん、いつまでも元気でいてください。

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